2017.06.27

光と緑に囲まれまどろむ庭と一体化した家

光と緑に囲まれまどろむ庭と一体化した家

太陽を味方にした間取りでサンルームのように心地よく

N邸は陽だまりの家。あらゆる方向から太陽の光が差し込み、サンルームにいるような安心感がある。広い敷地を生かし、LDKに最も太陽のエネルギーを享受できる南南東向きの間取りを採用した。「日光の日射角は真南よりも約20度ほど東に傾いた南南東のほうが、効率よく太陽の光を取り込めます」とTIMBER YARD/コージーライフの並木 浩社長。「冬は朝から日が入って暖かく、夏はあまり西日が入らない角度です」と解説。心地よく目覚めることができ、夕方も快適だ。
LDKはL字型。その南南東側には芝生の庭、反対側の坪庭にはシンボルツリーが設けられ、家のどこにいても緑を楽しめるようにした。また室内にもグリーンを飾り、より自然を身近に感じる空間に。また、LDKの中心には、薄いステップと細い手すりが軽やかな印象の吹き抜けの階段。吹き抜けの庭に面する側は2階の天井まで続く大開口で、LDK全体にやわらかな光を呼び込む。この光が室内の隅々まで届くのは、空間を遮るような柱や壁を最小限にできるSE構法の賜物だろう。
そして、LDKの隣には在宅看護をしていたお母さまの部屋。庭にせり出すようなレイアウトで、三方が開口となる間取りにした。「いちばん日が当たる部屋にしたかったんです」と奥さま。室内にいながら、終日、太陽の光を浴びることができる。2階には、家族の寝室と、階段の吹き抜けを生かした開放的なファミリーホール。小学生のお嬢さまは宿題を、奥さまは趣味の手芸をして過ごすアトリエのようなスペースで、親子のよいコミュニケーションの場となっている。

メープルのやさしい質感が和やかな空間をつくり出す

「階段や造作した家具は、軽やかな色味でかつ硬度の高いメープルで統一しました」と並木さん。90年以上前に木材卸として創業したコージーライフは木材のプロフェッショナル。木を使った造作家具や建具、キッチン製作も得意だ。N邸のフローリングには無垢材のナチュラルな印象をより生かす、幅広の192㎜のオーク材を採用。一括して大量に輸入することで、この幅の材でも通常の材と変わらない料金体系で提供している。
「ダイニングには赤みのあるアメリカンチェリーのテーブルをご提案しました。家族の歴史とともに深い色とつやになります」。インテリアコーディネイトを担当したのは西山礼美さん。吹き抜けの大開口には、オーダーに合わせて1台ずつ職人が制作するナニック社の木製ブラインドを選んだ。
また、独特の風合いの白壁も印象的だ。「これは珪(けい)藻(そう)土(ど)の塗り壁なんです。サンゴの化石である石灰でつくられる漆喰に対して、藻の化石でつくられるのが珪藻土です。七輪の材料となるほど耐火性があり、無数の穴があるので、漆喰以上の調湿力があります」と並木さんは語る。手作業で仕上げた塗り壁が無垢材と調和し、和やかな空間となった。

ライフスタイルそのものをコーディネイトする強い味方

コージーライフはインテリアのプロフェッショナルでもある。千葉市郊外の工業地帯にある同社運営のショップ「ティンバーヤード」では、「フリッツ・ハンセン」や「カール・ハンセン&サン」などの北欧のデザイナーや、北海道東川町の工房「北の住まい設計社」など、モダンな木の家と調和する家具や雑貨を扱っている。併設したカフェやモデルルームでは実際にその家具や食器のある空間を体感でき、具体的なイメージがふくらむ。
ご夫妻はもともとインテリアショップの顧客で、ご主人が開業する小児科医院のカーテンなどもティンバーヤードでオーダー。「新築するならこんな空間がいいなとずっと思っていました」と奥さま。実際の家づくりでは、設計や内装はもちろん、インテリアコーディネイトの専任者がいるのが心強かったという。家づくりのパートナーは、ライフスタイルをともにコーディネイトしてくれる強い味方。陽だまりの家はチーム力で築かれた。

取材・文 間庭 典子

N邸

設計 TIMBER YARD/コージーライフ 施工 TIMBER YARD
所在地 千葉県千葉市 家族構成 夫婦+子供1人
延床面積 184.38㎡ 構造・構法 SE構法

この家を建てた工務店

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