2016.10.19

異素材の重なりで奥行きが生まれたLDK

異素材の重なりで
奥行きが生まれたLDK

鮮やかな植物が映えるクリーンですっきりとした空間

ご夫妻はフローリスト。ウェディングや店舗のフラワーアレンジメントを手がけ、神戸旧居留地で生花やグリーン、花器などを販売する総合ショップ「BON CHIC BON GOUT Fluer et Deco」を経営している。ご自宅を設計したときのコンセプトも、花と緑との共生――植物が映える空間だった。
1階にはガレージとゲストルーム、書斎、3階には寝室や子供室を配し、2階はほぼすべてをLDKにした。東西、南の三方向が大開口になったリビングダイニングはサンルームのように明るく緑に囲まれた空間だ。
「花の優しさや華やかさが際立つよう、空間自体は、品格がありながら、整然としていてシャープなデザインを心がけました」と、設計を担当したIDA HOMESの髙木 法さん。IDA HOMESはMさんの店舗の施工も手がけている。 直線のみで構成した空間が、やわらかな植物のラインを引き立てる。「天井のタモは木目が直線の柾目を選び、適度な緊張感を出しています」と髙木さんは語る。
キッチン周りやテレビ台などの造作家具はオーク、建具はすべてマガシロで統一し、計算された端正さを演出。照明も間接照明のみにして天井をすっきりとさせ、壁や柱など視界を遮る要素は極力、省いた。ご夫妻による、フラワーアレンジメントが映えるLDKだ。

昼はキッズたちの遊び場、夜はホームバーになるLDK

「男の子3人なので毎日、にぎやかです。自由に駆け回る空間がほしいという意味でも、開放感のあるLDKは必須条件でした」と奥さま。大きな開口のリビングダイニングは、昼間には格好の遊び場になる。3階の寝室と子供部屋をつなぐバルコニーも広くとり、外でも子供たちが遊べるようにした。週末はゲストを招いてアウトドアパーティを開けるほどのスペースだ。
「その分、夜は大人がくつろげるリビングにしたいと思っています」と奥さまは語る。大きな開口からは神戸の港が見渡せ、夜景を眺めながらゆったりと過ごすことができる。子育てで忙しい日中にはなかなかできない仕事の相談をしたり、映画を見ながら語らうひとときは夫婦の大切な時間となっている。この家に暮らし始めてからは、友人とも外のお店で会うより、この家で集まることが多くなったそうだ。
シンプルな間取りの中でポイントとなっているのが、大きな空間を緩やかに区切るリビングとキッチンの間にある壁。素焼きのタイルを重ねて目地の「かきおとし」という手法で横縞を見せ、窓側のテレビ台の後ろと同じ仕上げにして揃えている。「この対の壁はあえて互い違いの位置に配しています。位置を微妙にずらしていることで奥行きを生み、広いと錯覚する効果を狙いました」と髙木さん。海を望む高台からの借景も相まって、さらにのびやかさを感じるリビングになった。

花器もインテリアの一部生活の中で緑を楽しむ空間に

「視界に緑があると空間が生き生きし、一輪の野の花を飾るだけで雰囲気が変わります」とご主人。大きな花器にバランスを考えてアレンジするのは難しいかもしれないが、1輪挿したシンプルな花器をいくつか集めて構成するのは、意外と簡単。花器の配置を考えるだけで華やかなコーナーが完成する。
また、存在感のある花器をうまく利用することで、テクニックがなくても気軽に花を活けることが可能に。「花器もインテリアの一部。その空間に合った家具を選ぶように、存在感のある花器を置くようにしています」とご主人。大きなグリーンを育てなくても、「LSA」の大きなベースにドウダンツツジを数本、活けることで豊かな緑を演出できる。植物のもつ生命力を感じ、共に生活する豊かさを教えてくれる眺望の家だ。

取材・文 間庭 典子

 

 

S邸

設計 髙木 法(IDA HOMES) 施工 株式会社伊田工務店
所在地 兵庫県神戸市 家族構成 夫婦+子供3人
延床面積 179.69㎡ 構造・構法 SE構法3階

この家を建てた工務店

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