2016.06.16

レトロモダンな味つけの鎌倉の住宅

レトロモダンな
味つけの鎌倉の住宅

キッチン&ダイニングを
中心にした家づくり

鎌倉の閑静な住宅地にあるN邸は、家族で食事を楽しむために、キッチンを中心に考えた家。飲食店を経営するご主人が「笑いの絶えない食空間」をコンセプトに、日々の食事はもちろん、ゲストを招いても楽しめるよう、パーティスペースのような大空間を構想した。
1階のLDKは68.21㎡を贅沢に使用。吹き抜けを設け、その分、2階にあるご夫妻やお母さま、お子さんたち3人が過ごすプライベートな部屋はコンパクトにまとめた。利便性を考え、小さなエレベーターを設置。お母さまがこれからも快適に暮らせるよう、バリアフリーにしている。
LDKの主役はアイランドキッチン。庭を望める大きな窓を背後に配し、自然光の中で調理できるステージのようなスペースを意識した。「キッチンの床をほかより少しだけ低くして、立って料理をしながら、食卓に座っている家族と同じ視線の高さで会話できるようにしました」と、設計施工を手掛けたキリガヤで窓口を担当した川添さんは語る。また、「ご主人の理想の食空間を実現するために、最後まで決まらなかったのは照明でした」と、内装・インテリア担当の中谷さん。「シンプルなデザインだと物足りなく、シャンデリアのようなものでは存在感がありすぎる。ほどよく華やかで、昼も自然光を受けてきらめくこのペンダントを見つけたときには、『これだ!』と思いました。まさに空間を完成させる画竜点睛となりました」。

骨董をところどころに取り入れ
懐かしさのある和モダンが完成

N邸のもうひとつの特徴はレトロな和テイスト。「引き戸や扉は、土蔵や昭和初期の邸宅で実際に使われていたものです。玄関正面に置いたキャビネット、テレビ台なども骨董家具を使いました。どれも骨董好きのご主人がご自身で探されたものです」と川添さん。こうして、モダンだけれどどこか懐かしい独特の空間に仕上がった。
玄関の広い土間も日本的だ。しかしこれにはデザイン以外の役割もある。門を抜けてアプローチを歩き、さらにこの土間を歩くことで、外の喧騒を忘れ、プライベートな場所に戻ってきたという感覚を得られるのだ。ガーデン・外構担当の田丸さんは「気持ちを切り替えられる空間をつくりたかった」と言う。土間の右側にはこの空間に調和する木製の自転車スタンドを置き、スポーツバイクを並べる駐輪スペースにした。
土間に置かれた、和モダンな空間によく似合う宮崎椅子も目を引く。「軽量なので、土間や玄関脇、2階の廊下などあらゆる場所に気軽に移動できます。日当たりのいい場所に即席読書スペースをつくったり、広い家のさまざまな場所をくつろぎスペースにすることが可能です」と中谷さん。ご夫妻は椅子に座って、庭を眺める時間を楽しんでいる。

湘南の気候とライフスタイルを
知りつくしているからこその提案

このように家づくりだけでなく、暮らし方の提案までサポートできるのが逗子の工務店、キリガヤの特徴だ。設計や営業担当以外に、外構・庭園、内装・インテリアコーディネイト、造作家具などそれぞれのスペシャリストが、アドバイザーとして並走する。「明治15年に創業した桐ケ谷材木店が前身です。長い歴史の中で無垢の木材のすばらしさを湘南の皆さまにお伝えしてきました」と川添さん。造園やリフォーム、家具製作などの事業も展開している。「無垢材のオーダー家具のほか、宮崎椅子製作所、アトリエm4、カンディハウスなどパートナー企業の椅子を扱っています。30脚以上の椅子を揃えているので、お客さまには実際に座って、選んでいただいています」。
入居後のサポートも万全だそう。「エントランスの木製自転車スタンドやサーフボード置き場など、住んでから必要だと気がついた収納も、すぐにつくってもらえました」と奥さま。心地いい木の家はトータルコーディネイトで完成する。竣工からまだ半年。N邸の家づくりは現在進行形だ。

取材・文 間庭 典子

 

N邸

設計 富田秀雄(キリガヤ) 施工 キリガヤ
所在地 神奈川県鎌倉市 家族構成 夫婦+母親+子供3人
敷地面積 383.64㎡ 延床面積 289.32㎡
構造・構法 SE構法

この家を建てた工務店

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