2016.10.27

中庭の水盤を囲んで光を取り込む大空間

中庭の水盤を囲んで
光を取り込む大空間

“感動”と“快適”をもたらす水盤がドラマティックな庭

玄関の扉を開くと真っ先に目に入るのが、光を反射し、きらきらと光る水盤。25㎡以上ある開放的な中庭の先にはリビングでくつろぐ家族の姿が見える。左手に水盤を眺めながら進むと上部が吹き抜けになったリビングダイニング。「水盤のある中庭を敷地の南側に配し、これをコの字に囲んだレイアウトです。階段も開口部のすぐ横に設け、上ったり下りたりするときなど、あらゆる角度から水盤の眺めを楽しめるようにしました」と設計を担当した深澤彰司さん。SE構法の特性を生かした大開口は、柱や壁に遮断されない素晴らしい眺めをもたらすとともに、光や風を内部に取り込む機能をもつ。「夏には南風を水盤が冷やします。吹き抜けがあるので、室内で風の対流を促します」と深澤さん。冬は太陽の熱を効率よく取り込み、エネルギー消費を抑えられるという。

朝の光もマジックアワーも24時間楽しめる中庭の眺め

「中庭を囲む家」、「水盤がある家」は、ご夫妻が家を構想するときに最初に浮かんだイメージだった。「シリコンバレーに住んでいたときの3~4世帯連なったタウンハウスに、パティオがあったんです。週末になると30人くらい招いてバーベキューパーティを開いたり、そこでの時間は格別でした」とご主人。医師として多忙を極めるご夫妻は心からくつろげるリゾートホテルのような空間を望んだ。「揺らめく水面を見ると癒やされます」と水盤を眺めながら話すご主人。水がとうとうと流れる循環式の水盤は、水面のきらめきが室内に反射し、モダンアートのように美しい。「夏は足をつけて涼んでいます。動物の通り道になっているようで小鳥や猫などの小さなゲストが訪れます」とご主人が語るように、動物たちにとっても憩いの場となった。夕刻には水盤の壁面に仕込んだライトが光を放ち、幻想的な風景に。これを眺めながら「エコスマートファイヤー」のバイオエタノール暖炉を囲んで友人と語らう。そんな夕暮れはほかでは得られない贅沢な時間だ。
しかし、この空間が実現するまでには紆余曲折があった。ご夫妻のイメージは最初から固まっていたが、どのハウスメーカーの提案するプランも飾りのような水盤を中央に配したもの。「見る」ための中庭でそこで「過ごす」中庭という発想はなかった。そこでもっとデザイン的に理想に近づける設計・施工会社はないか、と改めてリサーチしたところ、テラジマアーキテクツのサイトにたどり着いた。「施工エリア外だったのですが、説得し相談に乗ってもらうことにしました」とご主人は当時を振り返る。

SE構法の特性を学び開放的なプランに納得

「驚いたのは最初の打ち合わせでデザインの話題は一切出ず、代わりにSE構法の構造やその機能性に関して徹底的なレクチャーがあったことです」とご主人は語る。デザイン優先でテラジマアーキテクツへの依頼を考えていたが、その講義のような内容に驚くと同時に信頼感が高まったという。「SE構法は従来の木造在来構法に比べると設計の自由度が高く、デザインで興味をもつ方が多いのですが、機能面こそ優れています。構造の特質やエネルギー効率のいいパッシブデザインについて、理解し納得いただけるように、このような時間を最初に、十分にとっています」とテラジマアーキテクツの広報担当、本橋いづみさん。
その後、完成までは順調に進んだ。「自分たちで考えていた以上に開放的なプランを提示してくれました。主要な開口部はテラスに向かっているため、外からの視線も気にならず、カーテンのない生活をしています」とご主人。窓の位置も工夫されており、風と近隣の緑の眺めを取り込む。外に開き、空につながる中庭は光を運ぶとともに、心も気持ちよく解放してくれる。

取材・文 間庭 典子

 

K邸

設計 深澤彰司(テラジマアーキテクツ) 施工 テラジマアーキテクツ
所在地 神奈川県横浜市 家族構成 夫婦+子供1人
延床面積 166.39㎡ 構造・構法 SE構法2階

この家を建てた工務店

MLWELCOMEの新着記事

MLWELCOME

MLWELCOMEは『モダンリビング』誌と「重量木骨の家」とのコラボレーションで特別編集されたムック本として2015年10月に発行されました。厳選された木造住宅の実例をウェブサイトでもご覧ください。