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美しさと、強さと、自分らしさ。

暮らしの中の小さなロングライフ 本間 美紀

vol.01 骨のような家具、肌のような家

取材で、ドイツやイタリアといったヨーロッパの家具見本市にたびたび出かける。その度にヨーロッパ家具の大胆なデザインと大きさ、存在感のボリュームに驚いてしまう。それが単純に人体や住まいの大きさに比例したものではない、と気づいたのは最近のことである。

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そんな取材のさなか、イタリアの家具や建材のビジネスに長く関わる女性が、こう告白したことがある。「イタリアの家具を提案する身ですが、アートのような美しさに敬服しながらも、どこか骨っぽくて日本の生活にはなじまない気がする。そう思う自分もいるんです」。私は思わず、深くうなずいた。

ヨーロッパの住まいは、天井が高く石づくりの、まさに何もないガランとした「空間」で、建物自体がとても頑丈。何百年も壊されることはなく、時を経るほど、空間は重みを含んで存在感を増す。だからこそ家具を入れて、強いデザインの力で空間とバランスをとらなければならない。欧米でインテリアデコレーションという考え方が発達したのも、それゆえなのかもしれない。

一方、日本の家というのはそれ自体が家具のようなものだとつくづく思う。「押し入れ」は住まいと一体になった完璧な収納家具であり、雨戸に窓に、障子や襖、木や紙の建具が幾重にも暮らしを包み、光や気温の調節は自在だ。縁側というテラスがあり、縁の下は通気を保って家を湿気から守った。そんな機能は肌感覚でなじみ、暮らしに密着する。日本の家はそれ自体がすぐれたデザインプロダクツであり、余計な家具はいらなかった。

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厚みのある石によるゴツリとした、欧州の骨太の空間。それに対し、木の柱や梁に繊細に編まれて、そこに滑らかな肌を持つ日本の家。実はそこに強いデザインはいらないのかもしれない。けれどもデザインブームといった流行も起こるほどの今の日本。すでに完成度の高い住文化を持っていた私たちが、そこからあえて脱しながら、行き着く先はどこなのだろうか。それでも残る―そんなものをここでは見つめていきたいと思う。

著者プロフィール

本間美紀
本間美紀
早稲田大学第一文学部卒業後、インテリアの専門誌『室内』編集部に約9年勤務。
2002年よりインテリア、デザイン、キッチン、暮らし関係のフリーエディター&ライターとして、暮らし、インテリア、デザイン、キッチンなどをテーマに雑誌の執筆やムックの企画編集を中心に活動を開始。

エキサイトコンシェルジュ
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バックナンバー
vol.01 骨のような家具、肌のような家
vol.02 麻を「手なずける」
vol.03 素材感さえあえば 〜水回りとインテリアがつながるお話【前編】
vol.04 素材感さえあえば 〜水回りとインテリアがつながるお話【後編】
 
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