


昨年の夏、仙台にある実家の台所を改修した。
住宅地の中古住宅で、昭和初期に建てられた古い,古い家である。
もちろん木造住宅で、ふすま、障子に縁側。畳に床の間。
部屋を分ける壁は少なく、建具で部屋をつなげたり、仕切ったりできる。
純和風というほど高級でもない、おそらく、昭和の初めにはごく普通に建っていた家なのだろう。
だから、幼い頃は洋風住宅に憧れた。個室に分かれた間取り。引き戸ではなく、ドア。ドアノブをがちゃりと開ける音。出窓や開き戸。
そんな実家なのだが、30年経って茶の間に続く台所がだいぶ傷んできた。流しの下の配水管がゆがみ、水がにじみでるようになった。給湯器が故障し、湿気が床や流し台を腐らせた。すると台所の床がみしみしと傾斜した。
家に手を入れたくないと言い張っていた父も折れて、台所の改修をすることにした。そこで困ったのである。
今どきのシステムキッチンはピカピカつやつやしている。鏡面塗装、新開発の樹脂素材、選べないほどの色のバリエーション。お手入れラクラク機能のせいなのか、シンクの形は複雑化している。
けれども、実家の改修に適うキッチンは一つもないのだった。
畳の茶の間。土壁。時を経て色みを増した柱(こう書くとかっこいいけれど、実際はかなり薄汚い)。そんな空間と台所はつながっている。ここにいかにも工業製品といったピカピカキッチンは、とうてい似合わない。
家本体と素材感の表情が違いすぎるのだ。日本のメーカーの考えるキッチンの素材感は、どうしてこうも「にせもの」っぽいのだろう。コスト的なものなのか。ビニールのような木目調、奥様の夢?的なパステルカラー。量販家電的な発想のデザイン。それはそもそも日本の家の素材や内装が、そんな人工的な雰囲気になってしまったからなのかもしれない。
ショールームでキッチンを見るものの、母もしっくり来ないようだった。大手業者のリフォームプランも何か違った。高級キッチンがほしいわけではなく、時を経た家としっくりとなじむ「ごく普通のキッチン」がほしいのだった。
その答えはシステムキッチンショールームではなく、意外な場所で見つかった。
長く長く使っても、傷がついても、汚れても愛着が持てるキッチン。
その鍵は「本物素材」だった。
photo=Tomoko Kudoh


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