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美しさと、強さと、自分らしさ。

暮らしの中の小さなロングライフ 本間 美紀

vol.03 素材感さえあえば〜水回りとインテリアがつながるお話【前編】

昨年の夏、仙台にある実家の台所を改修した。
住宅地の中古住宅で、昭和初期に建てられた古い,古い家である。
もちろん木造住宅で、ふすま、障子に縁側。畳に床の間。
部屋を分ける壁は少なく、建具で部屋をつなげたり、仕切ったりできる。
純和風というほど高級でもない、おそらく、昭和の初めにはごく普通に建っていた家なのだろう。
だから、幼い頃は洋風住宅に憧れた。個室に分かれた間取り。引き戸ではなく、ドア。ドアノブをがちゃりと開ける音。出窓や開き戸。

そんな実家なのだが、30年経って茶の間に続く台所がだいぶ傷んできた。流しの下の配水管がゆがみ、水がにじみでるようになった。給湯器が故障し、湿気が床や流し台を腐らせた。すると台所の床がみしみしと傾斜した。

素材感さえあえば イメージ1

家に手を入れたくないと言い張っていた父も折れて、台所の改修をすることにした。そこで困ったのである。
今どきのシステムキッチンはピカピカつやつやしている。鏡面塗装、新開発の樹脂素材、選べないほどの色のバリエーション。お手入れラクラク機能のせいなのか、シンクの形は複雑化している。
けれども、実家の改修に適うキッチンは一つもないのだった。
畳の茶の間。土壁。時を経て色みを増した柱(こう書くとかっこいいけれど、実際はかなり薄汚い)。そんな空間と台所はつながっている。ここにいかにも工業製品といったピカピカキッチンは、とうてい似合わない。

家本体と素材感の表情が違いすぎるのだ。日本のメーカーの考えるキッチンの素材感は、どうしてこうも「にせもの」っぽいのだろう。コスト的なものなのか。ビニールのような木目調、奥様の夢?的なパステルカラー。量販家電的な発想のデザイン。それはそもそも日本の家の素材や内装が、そんな人工的な雰囲気になってしまったからなのかもしれない。

素材感さえあえば イメージ2

ショールームでキッチンを見るものの、母もしっくり来ないようだった。大手業者のリフォームプランも何か違った。高級キッチンがほしいわけではなく、時を経た家としっくりとなじむ「ごく普通のキッチン」がほしいのだった。

その答えはシステムキッチンショールームではなく、意外な場所で見つかった。 長く長く使っても、傷がついても、汚れても愛着が持てるキッチン。 その鍵は「本物素材」だった。

photo=Tomoko Kudoh

著者プロフィール

本間美紀
本間美紀
早稲田大学第一文学部卒業後、インテリアの専門誌『室内』編集部に約9年勤務。
2002年よりインテリア、デザイン、キッチン、暮らし関係のフリーエディター&ライターとして、暮らし、インテリア、デザイン、キッチンなどをテーマに雑誌の執筆やムックの企画編集を中心に活動を開始。

エキサイトコンシェルジュ
イズム http://www.excite.co.jp/ism/concierge/
ガルボ http://woman.excite.co.jp/garbo/concierge/
バックナンバー
vol.01 骨のような家具、肌のような家
vol.02 麻を「手なずける」
vol.03 素材感さえあえば 〜水回りとインテリアがつながるお話【前編】
vol.04 素材感さえあえば 〜水回りとインテリアがつながるお話【後編】
vol.05 「ほんとう」の贈り物
vol.06 業務用の落ち着き
vol.07 「スタイル」に惑わされるな
 
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