



わが家は東京のど真ん中、新宿区市ヶ谷にある。この家は大正時代の古住宅で(写1)、13年前に今の姿に再生した。古い家の良さを生かしながら改修することを再生という。
古いものと新しいものの共生
伝統的な日本の家は開放的であることを特徴としているのに対して、断熱・気密化は閉める技術である。しばしば断熱・気密化が伝統を破壊するという批判はこんな処にある。
確かに、断熱・気密を追求すれば窓は小さい方向に向かうから、自然との関係は薄れ、町の人との関わりも薄れていく。
でも、昔のままに大きな窓をもち、窓を閉めれば断熱・気密に優れ、窓を開ければ風が抜けると考えたらどうだろう。開けたり閉めたりするのだ。
冬、大きな窓から入る日射で部屋の中はポッカポカになる。
昔の家はその熱を捨ててしまうが、断熱性が高ければ夜まで残り、小さな暖房で十分に快適になる。
大きな窓は断熱の弱点部だが、そこで働くのが縁側という熱的なクッションで、陽が差す日中は温室に、陽が落ちれば断熱空間に、そして夏は風を入れ、風とともに地域の人までがやってくる(写2)。伝統的な開く技術と新しい閉める技術の見事な共生である。
土壁を残して外側で断熱し(写3)、窓は木製・ペアガラス、耐震性も高めた。
ハナレの事務所は屋根を緑化し(写4)、庭は蛍が生息するビオトープを試み(写5)、日本的な鑑賞する機能をもたせたビオガーデンにした(写6)。
陽と風を楽しみ、夏は蛍が光り、秋は鈴虫、冬は鳥、春にはハナレの屋根でシバザクラが満開に咲いた。
東京のど真ん中で四季を感じられる住まいは都心の環境共生住宅として注目され、国交省のパンフレットに載ったり、マスコミの取材が続いた。
みなさん、この家はスゴイと思っての取材だが、私はこの家に住みながら逆のことに気づいていた。エコハウスとは自分だけ頑張ることではなく、町がエコに頑張れば各戸のエコ負担は軽くなるということ。
例えば、雨水利用にしても、生ゴミ処理にしても各戸でやれば効果は薄いが、町ぐるみでやれば充実する。
でも、各戸でやるべきこともある。それが断熱を充実し、日射や通風を利用して暖冷房を減らすことである。
こうして都心の環境共生住宅として注目されるわが家だが、10数年を経て状況は大きく変化している。ご近所の戸建住宅がどんどんマンションに建て替えられていき、周辺の様相は激変し、わが家は周囲に共生するどころか「不調和」の度合いを強めようとしている・・。


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