


住宅建築の法律知識を学びましょう。ここは住宅の建築に関する法律の知識をコラム形式で紹介しているページです。 マンションの耐震強度偽装問題で、コンプライアンス(法律やルールを守ること)の精神が欠如した業者が多いことが表面化しました。住宅裁判を数多く手掛ける秋野
卓生弁護士は、施主を守ると同時に、正しい家づくりを行っている業者を守るために、「早い・安い家づくり」からの脱却を提言しています。そんな秋野弁護士に「安心・安全な家づくり」のために知っておきたい法律知識について解説いただくシリーズ。 |
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まだ電気も普及していない頃の日本の家づくりは、木造軸組土壁づくり工法が中心で、大工と左官、それに鳶の手で建てられていました。
その大工の師匠が棟梁で、この棟梁が中心となって1件の家が建てられていった訳です。
棟梁は、地縁血縁によって一つの街や村の家を独占状態で手がけていった事から、この棟梁の仕事ぶりは街や村の人々が実によく知るところであった訳です。
この頃の棟梁は、金儲けよりも自らの腕に磨きをかけ、高いプロ意識をもって仕事をしていたのです。
この棟梁による高いプロ意識とプロの目による厳しい現場チェックがなされていたため、欠陥住宅事故など起きなかったと聞きます。
この棟梁が、自らが手がける家づくりに命をかけ、そして技を高めていくという日々の修行の精神が「匠の心」と言われるものです。
この匠による家は商品ではありません。
全身全霊をこめた芸術作品なのです。
だからこそ、匠は自らの作品に決して妥協する事なく、「こだわりの作品」を丹念につくりあげていったのです。
このこだわりの作品に満足しない人がどこにいるでしょうか?
当然、住宅紛争など起こるはずがありません。
匠の心が存在した時代には、建築基準法令など不要でした。
当たり前です。自らの技に命をかけ、こだわりの作品をつくっていた訳ですから、最低限の基準など設ける必要すらなかったわけです。
耐震強度偽造問題では、「建築基準法令ぎりぎりの鉄筋量にしろと言ったのに建築基準法令以下とされるとは思いもよりませんでした!」なんて発言が言い訳として堂々となされていました。
昔の匠は、法律などなくても、自らの技を磨き、こだわりの作品として家づくりをしていたのに今の業者は最低基準を定めた建築基準法令ぎりぎりをねらおうとするのですから、嫌になってしまいますね。
逆に、今、この経済設計やらローコストやら「ギリギリ狙い」の住宅づくりが主流の中、匠の心を持った工務店はあまりいないのではないか、と思います。
そうであれば、この匠の心の持ち主を探せ!というのが、安心・安全な家づくりの第一歩となるのではないでしょうか?
日頃、住宅紛争専門弁護士として、住宅にまつわる様々なトラブルに接していると、「住宅産業はクレーム産業だな」とつくづくと感じます。
昨年1年だけでも耐力壁用ビスの国土交通省認定書偽造問題、悪質リフォーム問題、アスベスト問題、耐震強度偽装問題と問題ばかり発生しています。
業界全体でこれだけ多くの問題が発生すると言うことは、必ずその原因があるのですが、その一番の原因が、住宅業者の多くがコンプライアンスの精神を持っていない事にあります。
皆さんも身近にいる住宅営業マンに聞いてみて下さい。
「もし、私がクレームで怒って電話したら信号無視・路上駐車してでもすぐに来ますか?」と。
その多くが「勿論です」と回答するはずです。住宅業界では「顧客満足」という言葉の意味を勉強していない人が多い事から、こんな恥ずかしい回答をしてしまう事となるのです。
いつも、役所や企業でコンプライアンスの重要性について教育を受けている皆さんにとっては信じられない回答でしょう。
この社会の常識との乖離が直らない限り、住宅業界で問題がなくなる事はありません。
家づくりに失敗した人は悲惨です。
コンプライアンスのない業者は、逃げます。
逃げられてしまうと、全く落ち度がないにもかかわらず、日々、愛着のない欠陥住宅に住み続け、日々、ストレスを抱える事になります。
私自身も住宅紛争の過程で、夫婦が離婚したり、施主が自殺する等の案件を目の当たりにし、心を痛めており、悪質な業者が住めないような澄んだ業界にする事が私の責務であると心に誓っております。
しかし、住宅業界は、「お客様」と呼ばれる読者の皆様方の意識が変わらないと本当に変わりません。
家づくりを検討している皆様方はもちろんの事、皆様方と同様、理想の家が欲しいと切望している方々のためにも、「コンプライアンスの意識が高い」業者を業者選定基準の一つに加えて下さい。
皆様方の意識の変革によって、住宅業界が真剣にコンプライアンスの重要性を理解し、そしてトラブル産業と呼ばれる住宅業界から事件がなくなる事を願ってやみません。
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慶應義塾大学法学部法律学科卒。1998年第二東京弁護士会に弁護士登録(50期)、飯田・栗宇特許法律事務所勤務。2001年秋野法律事務所開設。03年匠総合法律事務所開設。現在、東京簡易裁判所民事第6室非常勤裁判官、日本弁護士連合会公害対策環境保全委員会特別委嘱委員、第二東京弁護士会住宅紛争審査会運営委員会委員ほか。 |
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