2019.08.19

研ぎ澄まされたミニマルで美しい空間

 
 

白と黒のみの世界がもたらす優美で快適な住まい

シンプルなラインが美しい五感が喜ぶ上質な素材

無駄な要素を排除したゼロ空間。それがK邸のコンセプトだ。装飾のない空間、色は白と黒の2色に抑えられ、余分な線がなく描かれたパース。現代アートのギャラリーのようなシャープな外観など、そのすべてが無駄なく美しい。
まず、入り口の2重扉を開くと驚かされる。靴を脱ぐ場所まで約10mのアプローチがあるのだ。「帰宅して外の世界から自宅へ戻る。その気持ちの切り替えをこのスペースでしていただければと思いました」と設計を担当したテラジマアーキテクツの深澤彰司さん。地窓から自然光が入り、硬質な石の素材を柔らかく包む。夜はライティングされ、さらにドラマチックな演出になるという。ベンチにもなる台を設け、バカラのコレクションをさりげなく飾っている。
その凜とした佇まいは2階、3階まで続く。2階は書斎や寝室、子供室がある居住空間。3階はワンフロアをLDKとした。「リビングとダイニングのテーブルは、実家で長く使い続けてきたアルフレックスのものです。このトーンに合わせて造作家具をデザインしていただきました」と奥さま。
カーフレザーを使用し、テレビ周りの家具などを造作。シンプルながら迫力と華やかさのあるリビングとなった。緩やかなL字を描く長手側はキッチンとダイニング。キッチンはドイツ製のポーゲンポールを選んだ。
 

ハレの日も普段も快適な才色兼備を極めた空間

テラジマアーキテクツを知ったきっかけは、奥さまが通っているおもてなし料理のサロン。『MLウェルカム VOL.2』でも紹介したM邸だ。「先生の自宅でもあるそのキッチンスタジオは居心地がよく、ショールームのようにスタイリッシュなのに、機能的で調理しやすいんです」と奥さま。家を建てるならシンプルな美しい空間でありつつ、性能面でも妥協したくなかった。日常も非日常も快適に過ごせる空間が理想だ。
キッチンは先生のお宅をお手本に。天板は光沢があり華やかで、かつ手入れがしやすい人工大理石のサイルストーンをセレクト。収納やパントリーにゆとりを持たせた結果、パントリーでも作業ができるようになり、キッチンは見せるステージとしての役割も生まれた。ダイニングの壁を生かしてカウンターテーブルを付けて、お子さんたちが勉強に集中できるコーナーも設けている。
 

木造の可能性に挑戦し安全で快適な木の家に

1階には音楽室、応接室を兼ねた和室など、独創的なスペースが広がる。和室は謡うたいを趣味とするご主人が稽古の場に。壁には贔ひいき屓にする歌舞伎役者の隈取などが飾られている。玄関のアプローチ同様、和室の入り口までは伝い石が敷かれた小路が作られ、屋内にありながら離れのような趣がまた、風情を感じさせる。
3階LDKの大空間の上にはアウトドアが楽しめる屋上バルコニーがあり、家族で集うことも。今までの木造住宅ではありえなかった規模での耐震等級3をSE構法で実現した。「木造だからといって木のぬくもりは強調したくなかったんです。鉄筋造のような硬質でシャープな印象でありながら、安心できる自然素材に囲まれて暮らすことがかないました」と奥さま。外壁には天然石を使用するなど、屋内外と共に上質なマテリアルを追求している。「大人が楽しめる上質な家」であり、「子供にも安全な素材の家」となった。

取材・文/間庭典子

K邸

設計施工 テラジマアーキテクツ 所在地 東京都渋谷区
家族構成 夫婦+子供2人 延床面積 318.56㎡
構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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