2018.04.27

スキップフロアでつながるホテルライクな大空間

スキップフロアでつながるホテルライクな大空間

4層がスキップフロアで連なる変化にとんだプランを採用

新潟市内の閑静な住宅街にあるS邸はスキップフロアを一段上がるたびに景色が変わるユニークなレイアウトだ。ゲストを招くのにふさわしい広々とした玄関から数段上がった1.5階には寝室、クローゼット、ゲストルーム、2階には広々としたキッチン&ダイニングを配置。その両脇にある階段は2.5階のリビング、浴室へとそれぞれ続き、そして、それらをつなぐようにルーフバルコニーを配した。エッシャーのだまし絵のように、各スペースが中庭を中心にしてらせん階段のようにつながっており、さまざまなアングルから外部や向かいのフロアを眺めることができる。

この独特なプランから得られるのは、どの部屋にも風が通り、光が注ぐ心地よさ。「住宅が並ぶ外部には閉じ、全部屋を中庭に対して開くことで、プライバシーの保護と開放感を両立させました」と話すのは設計担当の星野貴行さん。この案を実現するために、SE構法を選択。「木造で中庭に対して大開口をつくることができ、スキップフロアの強度も保証できるSE構法を選択することは必然でした。S邸はSE構法のメリットを最大限に生かすことで生まれた家です」。

どこからでも緑や空が見える最高に贅沢な空間

住み手のSさんご夫妻は、この家に暮らし始めて、「身も心も緩められる時間が増えた」という。これまでシャワーで済ませることが多かったご主人も大のお風呂好きになり、途中、お風呂と隣接するルーフバルコニーで涼んでは再び入浴したりするほどに。「どこからでも緑や空が眺められるか 住み手のSさんご夫妻は、この家に暮らし始めて、「身も心も緩められる時間が増えた」という。これまでシャワーで済ませることが多かったご主人も大のお風呂好きになり、途中、お風呂と隣接するルーフバルコニーで涼んでは再び入浴したりするほどに。「どこからでも緑や空が眺められるからだと思います。外を見るほうが心地よくて、テレビを見ながら食事をする習慣もなくなりました」と奥さま。ご夫妻は今、“家で心からくつろぐ”という何よりの贅沢を日々味わっている。

細部にまでこだわった仕上げで緊張感を保ち、美しく暮らす

また、ご夫妻には、リラックスの場でありながらも「美しく端正な家」にしたいという思いもあった。仕事から帰り、気持ちを切り替えるために、非日常的な空間にしたかったのだそう。

相談の末、「生活感のないホテルライクな住まい」を目指すことに決め、雑多なものが目に触れないように十分な収納をつくりつけた。DKの北西側の壁は下部全面をキャビネットに。常に磨かなくては指紋のあとが目立つ、艶のあるサンドベージュを緊張感を保つためにあえて選んだ。さらに、ダイニングには飾棚を配し、生活雑貨は置かず、ホテルのように飾るためだけに使用。空間を引き締めるブラックの小物を中心に、リビング・モティーフのアイテムと洋書をコーディネイトした。

また、“ホテルライク”を追求したS邸は細部の仕上げも美しい。金属研磨業は世界的にも認められる新潟県を代表する産業。この地で育ったご主人の見る目も鍛えられているが、施工スタッフの丁寧な仕事ぶりには感動したそう。なかでも驚いたのは階段の手すりの端正な仕上がり。「通常は金属と金属の継ぎ目が出るところが、まるでもともと一つの素材だったかのようにつながれていて驚きました」。新築パーティに訪れた友人の間でもその手すりの美しさが話題になったという。

熟練した職人とネットワークのある星野建築事務所ならではの完成度。心を解放できるのびやかさと無機質でストイックな非日常空間という、一見相反する2つの理想を兼ね備えた家が完成した。

取材・文 間庭 典子

S邸

設計 星野建築事務所 施工 星野建築事務所
所在地 新潟県新潟市 家族構成 夫婦
延床面積 224.83㎡ 構造・構法 SE構法

この家を建てた工務店

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