2019.10.15

箱形の書棚と吹き抜けが壮観な大空間

どこでも人の気配を感じられるボーダーレスな家族の場

光と風を室内にもたらし
感覚を刺激するせせらぎテラス

 
室内とテラスがワンフロアでつながるように、その境界線があいまいに造られたT邸。例えばテラスと室内に同色同サイズのタイルを採用することで、リビング内部からテラスが始まるような錯覚を狙ったり、パーゴラのような庇も外部と内部の両方に設けている。
「ルーバー状の庇は、冬は太陽の光を取り込み、夏は木陰のような涼しげな影を作ってくれます」と全体設計を担当した星野建築事務所の星野貴行さんは解説。テラスには水盤があり、光を反射してきらめく。せせらぎの音は部屋の中にいても聞こえ、感覚を心地よく刺激する装置となっている。
「最初の打ち合わせで『光』と『緑』というキーワードがTさんご夫妻から出たので、緑や風、光と影など、自然や時間の流れを感じられる空間に
 

ライブラリーのような書棚が
LDK全体を包み込む

 
T邸のもう一つの魅力がリビングの吹き抜けに面した壁一面の書棚。「図書館のような大きな書棚は要望の一つでした。実用的な収納としてはもちろん、グリーンや雑貨を飾るギャラリーのような役目も果たします」と佐藤さん。手の届かない上部は2階の寝室側から扉が開き、書棚の各スペースに物を置いたり動かしたりできる。入れ替えが簡単なので、毎日水やりが必要なグリーンなども気軽に飾ることができる。 
動線の多彩さもT邸の特長で、LDKに併設された和室にはLDKを通らず玄関からそのまま入ることもできる。プライベートとパブリック空間を分けつつ、各部屋にアクセスしやすい動線にした。
障子一枚を挟んですべての部屋がつながる、伝統的な日本家屋を思わせる発想だ。家全体がボーダーレスにつながり、用途に合わせて変容する自由度の高い間取りとなった。 
 

内装はシンプルな木や白に
黒や重厚な真鍮をプラス

 
室内は木の質感や白い壁を生かし、温かみのある内装を基調にしている。ところどころで黒のスチールや真鍮のような重みのあるマットゴールドをプラスして引き締めた。「真鍮の素材感が好きなので表札、ライトなどインテリアに取り入れました」と奥さま。真鍮の脚が気に入っているという、リビングに置かれたラウンド形のテーブルは、インターネットで見つけたのだそう。空間に対するサイズ感などに不安はあったが、コンセプトにブレがなかったので見事に調和した。
また、グリッド構成の書棚や薄いプレートの軽やかな階段を付けることで、リズミカルな空間に。造作家具やキッチンの素材選びなど、内装は松崎友和さんが担当。「キッチンの天板には熱に強いセラミックストーンを採用し、壁面や収納は光沢のある鏡面塗装にするなど、同じ黒でも質感を変えて、色味を抑えながらも華やかさを演出しました」と松崎さん。ラグジュアリーと知的な落ち着きが同居した、上質な空間が完成した。

取材・文/間庭典子

T邸

設計施工 星野建築事務所 所在地 新潟県新潟市
家族構成 夫婦+子供2人+猫 敷地面積 308.99m㎡
延床面積 244.11㎡ 構法 木造SE構法

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