2020.02.17

玄関ホールが家族をつなぐモダンな二世帯住宅

京都北山の麓にたたずむシックで美しい邸宅

南北に延びた敷地を生かし
緩やかに分けた二世帯住宅

 
京都北山の麓に位置するS邸は、山と空そのものが借景となる二世帯住宅。南北に延びた敷地を生かし、家族の集うLDKを1階北側に、浴室やクローゼットなどの共有スペースも同階にまとめた。
扉を開くとまず目に入るのは、圧倒的な迫力のある玄関ホールだ。この広々とした玄関ホールそのものが、二つの世帯をつなぐ大切な役割を果たしている。玄関を入ってすぐの南東側は、トイレやシャワーブースを備えたお父さまの住居に。「お父さまの居室とLDKとの間には納戸やゲストルームにもなる和室、さらに中庭テラスも挟むため、同じ建物内にありながら、離れのような落ち着きが生まれました」と設計を担当したビルド・ワークスの河嶋一志さん。
2階は子世帯が使用し、北側に主寝室、東側に3人の子供たちのスペースを連ねた。子供たちが成長し、就学したら個室にする予定だ。家族全員のプライバシーを確保しながらも、LDKと玄関ホールで家族がつながる開放的な間取りとなった。
 

最優先したのは家の性能!
365日心地よい室内環境

 
南からの光を受けた北山の景観は絵画のように美しい。SE構法により約36畳のLDKの内部には柱が1本もなく、約26畳のリビング全体が吹き抜けとなっている。通常の在来木造では表に出る梁や火打ちなどの構造材も見えない。新緑から紅葉、雪景色など、季節ごとに表情を変える自然を愛でることができる、贅沢なLDKだ。
デザイン性が際立つS邸だが、見た目の美しさが最優先ではなかったそう。「デザインは二の次でいいから、実用性に優れ、堅固な構造の家を望みました。SE構法は木造でありながら、構造計算を全棟で行い、強さの根拠が明確と知って選んだんです」と住み手のSさん。データをしっかり解説してくれ、こまやかな配慮ができるビルド・ワークスを信頼できるパートナーだと確信した。「70代のお父さまが望む空間の豊かさと、40代のSさんにとって不可欠なメンテナンスのしやすさや快適さの両立を検討しました」と河嶋さんは語る。
 

日々の生活に求める
利便性と暮らしの喜び

 
三方が山に囲まれた盆地である京都市北部は、地表近くの空気の逃げ場がなく、夏は湿度が高くて冬は冷え込む。そんな厳しい気象条件を考え、断熱計算によりエアコンだけで快適な室内環境を実現した。また、夏は直射日光を遮る庇や風の通り道を利用するなど、自然のエネルギーを生かすパッシブデザインを積極的に取り入れている。
「大開口のサッシ枠や桟なども目に入らないよう計算しました」と河嶋さん。装飾を排した結果、空間の凹凸が最小限となり、掃除や日々のメンテナンスも楽になった。また、収納家具を新たに置かずに済むように、W.I.C.や納戸も余裕を持たせて造作。そのため無駄なものが目に入らない端正な空間となり、アルフレックスの家具がオブジェのように映え、照明計画も楽しめる空間が完成した。室内の各所には日当たりや水やりの心配が要らないアーティフィシャルグリーン(人工樹木)を京都下鴨の「イランイラン」がコーディネート。その分、庭を耕して家庭菜園を作り、休日は土いじりにいそしんでいる。「ルッコラやイチゴはもう収穫できたんですよ」と奥さま。実利を重視し、耐震性やメンテナンスの容易さを極めた家は、非日常が広がるラグジュアリーな空間となった。
 

取材・文/間庭典子

S邸

設計施工 ビルドワークス 所在地 京都府京都市
家族構成 夫婦+子供3人+父親 敷地面積 684.46m²
延床面積 386.39m² 構法 木造SE構法

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