2019.05.20

太陽の光を感じる心地よい都心の空間

爽やかな風が似合うミッドセンチュリーな空間

洗いざらしのデニムのような西海岸スタイルのLDK

S邸が立つのは中目黒駅からほど近い、家々が立ち並ぶ都心の住宅地。「本当は緑に囲まれた郊外に住んでみたかったんですよ」と住み手のSさんは語る。しかし、仕事の関係で海外出張が多いことから利便性を考え、生まれ育った実家の土地を引き継いで、目黒に一軒家を建てた。都会にいながら太陽とともに目覚め、自然の中で暮らしている感覚になれる家を目指した。
山荘のようなぬくもりのある空間を、スギ材を貼った勾配天井や、石材を天井まで積み上げて造ったストーブで実現。空高く伸びた大開口からは太陽の光が降り注ぐ。4.8mの天井高や大空間を柱や壁で遮ることないのびやかさは、SE構法ならでは。敷地面積が34坪とは思えないほど、開放的な空間だ。「日中はライトをつけることはありません。一番日当たりがいいのは、LDKからつながる吹き抜けに面した3階。朝の光を浴びながらヨガを楽しんでいます」
天井や階段は“インディゴ”と呼ばれる青みがかったグレーの塗料を選び、ポイントカラーに。チャールズ&レイ・イームズの「ラウンジチェア」をはじめとしたミッドセンチュリーの名作家具が空間になじむ。以前、LAに暮らしていたというSさん。当時の邸宅のように、爽やかで自然とともに暮らす空間となった。

思わぬ誤算から生まれたくつろぎのカフェスペース

LDKの配置から照明計画に至るまで、Sさん自らがプランを描き、詰めていった。そんな中、思わぬアクシデントが起きた。
「近隣の日照を確保するために、条例でキッチン奥の北側をカットしなくてはならないことに途中で気づいたのです」とSさん。それにより、すでに決定していたプランを調整することになった。
「北側を削るなら、その場所にはテーブルや収納を設けてはどうかと設計を依頼したKURASUさんから提案され、当初は予定していなかったカフェコーナーになりました」
角度ができたことで近隣の住宅と対面せずにすみ、視線を気にせず過ごせるようになった。また、緑に囲まれた借景が楽しめるくつろぎのカフェコーナーも誕生した。「春には隣の家の桜も眺められるんですよ」とSさん。規制によるプランの変更がなければ思いつかなかったアイデア。都会の中で自然を感じられるスペースが増えた。

優先順位を明確にし、メリハリのある家造りを

都心ゆえの限られた敷地で、理想を実現するためには、これだけは譲れないというイメージを明確にすること。S邸の場合は日当たりのいいLDKだった。「その点は妥協せず、希望を貫きました。2階のLDKは空間を十分にとり、高価でも納得できる素材を選びました」とSさんは振り返る。
その分、1階はコンパクトにして、寝室や浴室、音楽スタジオなどプライベートを過ごす場所に。
近隣の住宅と接しているので、防音効果の高い二重窓にするなど、個の時間を楽しめる工夫も盛り込んだ。廊下はギャラリースペースとしても使い、空間を無駄なく活用。LDK以外はリーズナブルなクロス材や床材にするなど、予算配分にもメリハリをつけた。
好きな家具や音楽など趣味を楽しむ空間でありつつ、実は家事動線にも優れたこの家。将来、家族が増えたり、生活スタイルが変わっても対応できる、自由度や機能性の高い家が完成した。

取材・文/間庭典子

S邸

総合施工 KURASU 所在地 東京都目黒区
家族構成 単身 延床面積 125.55㎡
構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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