2019.07.16

南から太陽を取り込むトライアングル型のLDK

白い壁と木に包まれたやさしい空間

シミュレーションにより家事や子育てをより快適に

「家を建てる際に大切なのは、シミュレーションを重ねること」と住み手のTさん。Tさんの職業はプラントの設計士。工場と住宅という規模や用途の違いこそあれ、建築前のシミュレーションの必要性は重なる部分がある。「建物という『器』に合わせるのでは不都合が生じます。工場の場合、まずどの機械が必要で、作業するにはどれくらいの幅の通路が適しているかを計算するんです」。ストレスの多くの原因は実際の動きと「器」が合わないことから生まれるという。どんな家具を家に持ち込むのか、週末はどう過ごすか、帰宅後にはまず何をするのかなど、あらゆる行動パターンを想定して、どれくらいのスペースやどんな動線が必要かを徹底的に分析した。
まずはソファやテーブル、椅子以外の収納や家具を造作することに決め、生活パターンをシミュレートした。買い物で手がふさがるとライトのスイッチを押すのも大変、ならば人感センサーライトを採用しよう。和室は飲み物をこぼしても気にならない撥水性の高い素材を取り入れようなど、必要な機能を選んでいった。「無駄なものは排除しますが、必要な機能は積極的に取り入れました」とTさん。こうして家が住み手のライフスタイルに合わせた「器」となった。

太陽光を効率よく取り入れる南に向いた三角形のLDK

1階のLDKはSE構法の特性を生かし、のびのびとした吹き抜けを採用。2階の廊下を利用したライブラリーや子供室など、さまざまな場所がLDKと面し、どこにいても家族と対話できるプランにした。特徴的なのはその三角形の形状。設計を担当したアーキレーベル 鈴木組の鈴木留美子さんは、「敷地は長方形なのですが、平均日照時間が短い新潟の地で、より長く太陽の光を取り込み、明るく過ごせるよう南向きに大開口を設けました」と語る。南向きに設計することで、アウトドア好きなTさん一家がテラスでも食事ができるくらいの広さを外部にとることもできた。「テラスがLDKの延長として使えるよう、段差の少ないワンフロアであることも特徴です」と鈴木さん。子供が宿題に集中できるスタディコーナーやゲストルームとして活用することも視野に入れた和室など、それぞれの時間をLDKで快適に過ごせる設計にした。
料理好きなTさんが家族と対話しつつ調理できるよう、キッチンカウンターの対面にはダイニングテーブルも造作。「通常は直線だと思うのですが、食事しながらお互いの顔が見える、カーブのあるカウンターにしました」とTさんも微笑む。

生活の幅を広げてくれるストレスのない動線

現在、Tさんは仙台へ単身赴任中だが、「家が機能的にできているので家事のストレスもあまり感じません」と奥さま。子育てにも快適な空間だ。
週末には新潟に帰り、家族全員で過ごすTさん。風を感じられるテラス、夏に海水浴に行った帰りにそのままシャワーを浴びに行ける裏口の扉など、家族で休日を楽しむための工夫もぬかりない。
LDKに面した和室には、それぞれの両親が宿泊することもある。「和室から玄関横のトイレと洗面所まで2通りの動線があるので、LDKで夜遅くまで起きていても、互いに気兼ねなく過ごせます」と奥さま。和紙のような障子を閉めると中の光が透過し、温かな雰囲気が生まれる。家族もゲストも心からくつろげる家となった。

取材・文/間庭典子

T邸

設計施工 アーキレーベル 鈴木組 所在地 新潟県北蒲原郡
家族構成 夫婦+子供2人 延床面積 146.76㎡
構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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