2018.11.15

ヴィンテージ家具と庭を愛でる家

ヴィンテージ家具と庭を愛でる家

ヴィンテージ家具が馴染む風合いを生かした素材選び

新築に際し、イギリスでの生活が長かったOさんが希望したのは、重厚でクラシカルな「ヴィンージ家具が馴染む家」。これまでシャープでモダンなデザインを得意としてきたテラジマアーキテクツにとっては、新たな取り組みとなった。「ご夫妻にお手持ちのコンソールなど調度品を見せていただき、そのサイズや質感を考慮して、アンティークが似合う風合いのある建物にしました」と振り返るのは、設計者の深澤彰司さん。レンガ調のタイルを積み上げたような階段の壁の仕上げなど、粗い素材感を生かした内装に合わせ、外壁のタイルもヴィンテージ調のものをオリジナルで制作した。
中庭の石畳も、種類の違う石を組み合わせ、不揃いに。「ベンチもあえて平らではない石にしてもらいました。この独特の温かみが好きなんです」と話す奥さまは、庭づくりが好きで植物にも詳しく、中庭の緑も自ら吟味したそう。庭のレイアウトを依頼したグリーンスペース社と共に、イングリッシュガーデン風の庭園をつくり上げた。玄関の扉を開けば正面のガラス越しに木々が覗き、2階から見下ろせば石畳が絵画のように円を描く、どんな角度から見ても美しい中庭が完成した。

フロアより高い位置に庭を配し室内からの眺めをよりよく

その中庭は、1階のLDKから数段スキップを上がった高さに位置し、ダイニングに腰かけると、石畳を含めた庭全体がちょうど風景画のように目に入る。奥さまもお気に入りのこの眺めは、実は延床面積をより広くとるための工夫から生まれたもの。景観地区であるこのエリアは建蔽率が低く、ご夫妻が希望される部屋数や広いLDKを実現するためには、中庭を1階の面積に入れないようにする必要があった。そこで、半地下階につくったガレージの上を庭に。これによって生まれた高低差を上手く利用することで、佳景を生んでいる。

デザイン性を極めながらも機能性を確保できるのがSE構法

そして、デザインのほか、「快適に過ごすための機能」を重視していたOさん夫妻が選択したのが、木造のSE構法だ。先に奥さまのご実家が、地階をRC造、地上階をSE構法にする方法で新築しており、その木の家の心地よさとSE構法が可能にする開放的な大空間を気に入ったそう。そこで、ご両親のすすめもあり、SE構法の家を多く手がけるテラジマアーキテクツに依頼した。
完成したO邸は、木造でも開口部や天井を広く高くとれるSE構法の特性が存分に生かされている。1階は、中庭に面する大開口が気持ちのいいLDK。2階に個室、地下階にシアタールームなど趣味の部屋を配した。奥さまが特に気に入っているのは、リビングの壁に用いたガラスブロック。木の家に広範囲でガラスブロックの壁をつくれたのは、構造計算をすることで、家の強度を保証できるSE構法だからこそと言える。半透明のガラスは、プライバシーを守りながらも、常にやわらかな陽光を室内に招き入れる。
緑が爽やかな中庭は、夜になると陰影が際立ち、よりドラマティックな表情に。「唯一の希望がワインセラーをつくることだった夫も、よくこの中庭でワインを楽しんでいます」と奥さま。ロンドンで長い時を刻んだヴィンテージ家具と、それらが醸す厚みのある美しさをより一層引き立てる美しい家と共に、ご夫妻は日々を楽しんでいる。

取材・文 間庭 典子

I邸

設計 テラジマアーキテクツ 施工 テラジマアーキテクツ
所在地 東京都世田谷区 家族構成 夫婦+子供2人
延床面積 325.08㎡㎡ 構造・構法 SE構法

この家を建てた工務店

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