2016.06.30

薪ストーブでくつろぐログハウスのような住宅

薪ストーブでくつろぐ
ログハウスのような住宅

冬の訪れが待ち遠しい
薪ストーブを囲む森の家

「冬が待ち遠しくなる家です」と薪をくべながら語るご主人。リビングにある鋳型の薪ストーブはアメリカのニューイングランド地方のメーカー「バーモントキャスティングス」の「アンコール」というモデル。世界で愛されている定番モデルで、大きすぎないサイズが日本の住宅にもフィットして、和、洋、あらゆるデザインと調和する。体が芯から温まるうえ、ピザを焼くなど、料理にも活用できる。また、パチパチと音を立てて揺らめく炎を見ていると気持ちが安らぐ。「自給自足のような生活をしたかったんです」とご主人。ホイル焼きにしたサツマイモやニンニクは敷地内の畑で穫れたもの。薪も毎日自分で割っている。「介護の仕事をしているので高齢の方とお話しする機会が多く、昔の生活の豊かさを教えてもらっています。そのせいもあって、自然とともに生きるスローライフを実践したいと思うようになりました」。
そんなご主人が依頼の際にイメージしていたのは「森のログハウスのような家」。これを受けて、kotoriの設計担当・原 茂貴さんは、カントリー調にまとめるのではなく、薪ストーブを囲むシンプルモダンなデザインを提案した。「薪ストーブの背後に森を望めるようにしました。室内にいながら自然の中でくつろぐ感覚を味わえます」。ダイナミックな開口を可能にした機能性の高い窓や建材が、モダンな森のログハウスを実現させた。

自然の中で生活を楽しむための
工夫が随所にある設計

この家には、冬だけでなく四季それぞれに楽しみがある。「夏は流しそうめんパーティを開きました」とご主人。通常よりかなり幅を広くとった縁側では、リビングの延長のように過ごす。縁側に腰掛ければ、眼下にはふもとの街が広がる。新幹線の駅から約8㎞とは思えない、のびのびとした風景だ。お茶を用意し、暖かい日差しの下でカフェのように過ごすこともある。
自然を味わう工夫は室内にも。キッチン奥の小窓やワークスペースの窓は、ソファやラグに座ったときに、ちょうど遠くの山々がおさまるように配され、風景画のよう。ハンモックに横たわれば、空の景色も楽しめる。
玄関と階段の横には、自然に囲まれたこの家に馴染むアートを飾った。友人の結婚式で知ったという奥山優子さんの作品がさりげなく日常に調和している。玄関からつながるクローゼットや食料を保管するパントリーなど、収納スペースを十分にとったのも美しく暮らすための工夫だ。

震災をきっかけに
安全で快適な家を築くことを決意

S邸が立つ場所には、もともとおばあさまの家があった。冬は寒く、夏はたまらなく暑かったが、雰囲気のある古い木造家屋で、ご夫妻は結婚前から自然に囲まれたこの土地に惹かれ、引っ越してくることに決めていた。ところが、入籍の3日後に東日本大震災が起こった。「もしも同じ規模の地震が東海地区で起きたとき、大丈夫なのかと心配になって古家の耐震工事をすることにしました」とご主人。ところが、おばあさまの家は昔ながらの在来工法で強度には不安があり、シロアリの被害もあった。かなりの工費がかかることがわかり、ならばいっそ新築にしようと、ご主人の務める会社の社長の知り合いだったkotoriに相談した。「デザインもいいし、誠実な対応で、ここがいいなと直観したのです。でも『いろんな会社があるのですぐに決めず、いろいろまわってみたほうがいいですよ』と言われて」と、こちらのことを考えてくれるフラットな姿勢が印象的だったとご夫妻は振り返る。その後、大手メーカーを含め、いろいろと話を聞いた結果、感覚を共有できるのはkotoriだと改めて感じ、依頼を決めた。
SE構法について予備知識はなかったが、実際に暮らし始めた今、木の温もりを感じつつ、安全で守られていると実感している。「自然と共生する昔ながらの暮らしを、快適で安心な木造住宅でできるのがうれしい」とご主人。機能に優れたモダンな木の家の素晴らしさを日々かみしめている。

取材・文 間庭 典子

 

S邸

設計 原 茂貴(kotori) 施工 kotori
所在地 愛知県豊橋市 家族構成 夫婦
延床面積 128.37㎡ 構造・構法 SE構法 2階建て

この家を建てた工務店

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