
家づくり対談
Vo.2
- 小池祥子(左)
- こいけさちこ/株式会社フリーダムデザイン専務取締役。インテリアデザイナー・インテリアコーディネーター。1998年インテリアコーディネート事務所「小池インテリアコーディネートオフィス」設立。2011年(株)フリーダムデザインとして法人設立。インテリアデザイン全般を牽引するブランドリーダー。2024年「小池インテリアデザイン」ブランドを設立し、MLスタイリング認定インテリアコーディネーターとしての活動の場も広げている。実例受賞歴も多く第2、5、8回モダンリビングスタイリングデザイン賞ノミネート。
- 株式会社フリーダムデザイン
-
〒020-0015 岩手県盛岡市本町通3-5-8
TEL 019-681-6255
従業員数:8人
創業:2011年
https://www.freedom-design.biz/
- 西山礼美(右)
- にしやまあやみ/株式会社コージーライフ / TIMBER YARD 取締役チーフデザイナー兼広報 PR マネージャー。株式会社 H&T 代表取締役社長。千葉・稲毛で人気のライフスタイルショップ「TIMBER YARD」内にあるモデルハウスや体験スペースの内装デザイン、インテリアコーディネート、キッチン製作などを手掛けたほか、住宅のデザイン、キッチン製作も多数。2024 年 TIMBER YARD の食部門の系列会社、株式会社 H&T の代表取締役社長も兼任。
- 株式会社コージーライフ / TIMBER YARD
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〒261-0002 千葉県千葉市美浜区新港117
TEL 043-248-7411
従業員数:38人
創業:1995年
https://timberyard.net/
第2回
TIMBER YARD & フリーダムデザイン
インテリアから住まいを考えよう
建築とインテリアが調和した家づくりを提案するTIMBER YARDとフリーダムデザイン。
TIMBER YARDは千葉を拠点に、北欧を中心とした国内外の有名ブランドを取り扱う
ライフスタイルショップ「TIMBER YARD」を営み、小物から建築まで住空間をトータルで提案しています。
盛岡を拠点とするフリーダムデザインは洗練されたインテリアに定評があります。
第2回目の対談は、TIMBER YARD取締役・西山礼美さんと、フリーダムデザインの専務取締役、小池祥子さんに
「インテリアから考える家づくり」について語り合っていただきました。
取材、文=植本絵美/写真=吉次史成
インテリアは家の満足度を高めてくれる存在
―― 「TIMBER YARD」と「フリーダムデザイン」に相談に来るお客さんは、インテリア好きの方が多いかと思います。まず、住まいにとってインテリアとはどんな存在なのでしょうか?
小池:インテリアは最も身近な存在であり、インテリアのクオリティ次第で想像を超えるような豊かな暮らしが広がっていくと考えています。インテリアによって建築の質を高めることができ、オリジナリティのある空間をつくることができます。

西山:生活は毎日のことですから、自分の好きなインテリアに囲まれていたら、それだけで気分良くいられますよね? そのくらいインテリアは暮らしに深く関わる存在なんです。
小池:朝、目が覚めてから目に映る暮らしのワンシーン、ワンシーンがいいなと思える。その積み重ねが本当にマイホームの満足度につながりますよね。
西山:本当に。コロナ禍を経て家で過ごす時間が長くなった今、家族みんなが心地よいと感じられる空間にするのが大切ですね。今はSNSやWEBのおかげで情報収集しやすくなり、知識もたくさんお持ちで、私たちに求めるレベルも上がってきていると感じます。

ライフスタイルショップ「TIMBER YARD」で取り扱っている北欧の家具は安いものではありませんが、長く使えるよう非常によく考えられている。家具は消耗するものではなく、価値が残っていくもの、一生ものだとお客さんにはお伝えしています。
小池:質の高い家具や照明はディテールまで本当によく考え抜かれています。デザイナーがこだわり、ブランドが時間と手間をかけてつくっているものは、座り心地や構造、耐久性などあらゆる点で異なります。インテリア初心者にとっては、高い家具も安い家具もカタログやWEBの画像では同じように見えるかもしれませんが、使っていくうちに違いがわかり、「この家具を選んでよかった」と言ってくださる方がほとんど。最終的な満足度はまったく違いますね。
インテリアは建築と一緒に考えるのがベスト
―― 「インテリアは住み始めてからでもいいのでは?」と考える方もいますが、どのタイミングで考えるのがベストなのでしょうか? また、お二人の会社では、どのような流れで家づくりを行なっていますか?
小池:インテリアは置き家具だけじゃなく、建築に仕込まれた間接照明や造作家具も含まれますから、建築とインテリアは一緒に考えることが大切です。
西山:おっしゃる通りですね。建築とインテリアは一緒に考えた方が豊かな空間になります。言葉で説明するのは難しいので、まずはモデルハウス「gallery」に来ていただくんですよ。ここは、系列の並木木材がオーストリアから直輸入しているオリジナルの床材や塗り壁、オーダーキッチンや造作家具、家具や照明はインテリアショップでコーディネートしたものですから、ここを体感してもらうのが一番早いんです。
私たちの家づくりに対する考え方や標準仕様についてお話しし、価格についても「なぜこのくらいかかるのか」「なぜこれが必要なのか」をしっかり説明します。「gallery」は完成から13年経ちますが、飽きのこないタイムレスなデザインなので、みなさん「10年経っているとは思えない」と驚かれますね。私たちが採用している無垢の素材は経年で色褪せることなく、味わいを増していくもの。年を経るごとに、竣工当時にはない、深みのある空間になっています。



小池:フリーダムデザインも2軒のモデルハウスや見学会で実際に空間を見てもらいますね。うちも漆喰と無垢材を標準仕様としていますが、本物の素材や家具を入れると、空間の質がグッと上がりますよね。間接照明の光も、漆喰の壁と量産のビニルクロスの壁とでは光の広がり方がまったく違うんです。
私たちは、お客さんとじっくりお話をする座談会を設けています。私たちの家づくりに多羽する考えをお伝えし、お客さんには理想の家について語っていただく。これからの人生設計について、理想の暮らしについて、ざっくばらんに話してもらいます。あえて家とはまったく関係ない話もして、お互いの人間性も知れるような場にしています。
座談会後に社内でコンセプトや方向性を決め、社長の小池康也が設計を、私がインテリアを担当しています。フリーダムデザインはシンプルな空間をベースにし、白いキャンパスに色入れてくようにインテリアを追加していくイメージです。



西山:TIMBER YARDでは、設計とインテリアコーディネートがチームを組んでカンファレンスを行うことでベストな提案を提供できる体制をとっており、建築とインテリアの打ち合わせは同時進行で進めていきます。今のお客さまはSNSで情報収集し、好みも細分化していますから、チーム体制をとることで幅広い好みに対応できるんです。設計の段階から家具や照明をイメージしながらプランを進めることができ、また、最初からすべてを揃えなくても、お引渡し後に少しずつ家具を買い足していくなど暮らしを楽しみながらアップデートさせていくお客さんも多いですね。


そこで過ごす時間を考える
―― コロナ禍を経て、どのようなに住まいは変わってきましたか? また、将来的にライフスタイルやライフステージが変わっていくことを踏まえ、どのように家具を選んでおいた方がいいのでしょうか?
小池:プランもインテリアもより多様化してきていると思いますね。
西山:TIMBER YARDのお客さんは子育て世代から50代のご夫婦まで幅広く、ダイニング一つとっても、みんなが集まれる大きなダイニングテーブルを求める方、キッチンと一体のカウンターで食事をパパッとすませたい方など、本当にさまざまです。
小池:50代のご夫婦でもホームパーティが好きな方なら大きなダイニングテーブルを求めますし、本当にライフスタイルによりますよね。インテリアをデザインするというのは、“そこで過ごす時間”をデザインすることなのだと思います。ダイニングやリビングという空間をデザインするというより、そこでどう過ごすかを考えることなんです。
西山:それ、すごくよくわかります。


小池:将来的なことを考えると、やはり質のいいものをおすすめしています。イニシャルのコストはかかるかもしれませんが、長く使えますし、ロングスパンで考えておくことが大切。お子さんがまだ小さいなら、ソファは取り替えられるカバーリングタイプをご提案したりします。
西山:ご夫婦二人なら、それぞれにお気に入りのラウンジチェアを選ぶのもいいですね。かつてのリビングはソファとテレビボードの位置がまず決まっていましたが、今はプロジェクターの進化もあり、リビングの家具レイアウトがより自由に楽しめる時代。最近のソファのデザインは、低めにデザインされた背もたれに腰を掛けられたり、いろんな方向から座ることができたりします。新しい暮らし方を提案するようなデザインの家具も増えている気がしますね。
小池:ソファの背もたれが低めであったり、背もたれの一部がないデザインのソファは、対話の方向が自由で、ダイニングやキッチンともコミュニケーションが取りやすいですよね。家族や暮らしの在り方も変わってきているので、家具のデザインも変わってきていますね。

小池:リモートワークが増え、書斎は必ずつくっていますね。これまで「書斎=ご主人のスペース」と捉えられていたところがありますが、奥様だって自分のスペース、個になれる場所は欲しいんです。
西山:キッチン横のちょっとしたコーナーでもいいんですよね。私たちも必ず奥様の場所は提案しますね。


空間の雰囲気をつくる照明
―― お客さんは家具につい目がいきがちになりますが、照明についてはどのような提案をされていますか?
西山:本当に、照明でまったく違う雰囲気になるんですよね! ただ、お客さんにとって照明計画は家具以上に想像がつかないもの。ですから、まずはこのモデルハウスに来て光を体感してもらうんです。
小池:ほの暗い中で温かい電球色を好む人、間接照明で空間を照らし明るい光を好む人など、光の明るさや温かさの好みは人によってまったく違いますよね。
西山:そうなんです。言葉に表すのも難しいから、体感してもらうのが一番。TIMBER YARDは北欧のような一室多灯の照明計画を提案しています。照明は明るさを得るだけではなく、空間の雰囲気をつくり出す大切なエレメント。一つの部屋にペンダントライト、スタンドライト、フロアライトなど照明が複数あると奥行き感を演出できますし、コーナーに置くことで空間を広く見せる効果もあります。照明をすべてつける必要はないですし、夜が深まるにつれて一つずつ消して寝るモードにしていくなど、シーンに合わせていろんな使い方ができます。
ルイス・ポールセンの名作照明「エニグマ」をデザインした内山章一さんが以前、「ペンダントこそ調光してほしい」とおっしゃっていました。夜の食卓のシーン、お酒を飲むシーンとさまざまですし、テーブルにキャンドルを置く場合は、それに合わせてペンダントの明るさを抑えたり。
小池:シーンや時間に合わせて調光できると暮らしの幅が広がりますよね。私はバスルームも調光したいぐらい。ペンダントライトやスタンドライトは温かみのある電球色をベースにしていますが、夏は光で体感が変わるため、クールダウンできるよう間接照明などは5000Kの昼白色に調色できるLED器具をおすすめしています。
西山:トイレなど窓がとれない場合は、間接照明の色をあえて自然光に近いものにして天窓の明るさを演出したり、ベッドルームは天井照明をつけず、足元やリーディングライトなどに絞っています。コンセントを用意して後からフロアライトを追加できるようにしたり、ポータブル照明を追加したり、光も移動できますから。
小池:照明は全部つけた状態がすべてではない。こっちを点けてあっちは消したり、いろんな楽しみ方ができるよう計画しておきます。また、その空間でしかできない照明計画もありますよね。たとえば、吹き抜けがあるならダイナミックなペンダントが生きてきます。
西山:ダイナミックな空間は、内装の仕上げとの組み合わせも大切ですよね。吹き抜けにテクスチャーのある石を張って、そこを照明で浮かび上がらせることで大空間のアクセントになり、目線がそこに集まる。それぞれの空間を生かした照明計画があり、照明は面白いですよね。



FLOSの「Noctambule」
―― お二人の対談からインテリアは暮らしや空気といったカタチのない“コト”を創出するものだと改めて気づかされました。
本日は楽しいお話をありがとうございました!