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interview

子育てと暮らしinterview2019.10.11

クリス-ウェブ 佳子

家族にとっていちばん大切な「家」だから、こだわって選んで、心を込めて暮らしてきた。その間取りにも、選び抜かれたインテリアにも、机についた小さなキズにだって、暮らす人の魂が宿っている。第1回は、クリス-ウェブ 佳子さん。素敵なセンスが詰まった東京のご自宅に、お邪魔しました。家族の家のありかた、理想の暮らしについて探ります。

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大きな窓のヴィンテージマンション。

玄関から敷かれたベージュの絨毯が、どこか外国風の佇まい。その絨毯をたどると、開け放たれたリビングルームへとつながっている。ダイニングと一間続きの壁一面が大きなガラス張りになっていて、その広い部屋はやさしい光に満ち満ちていた。窓からは緑の木々が見下ろせ、そこが都心であることを忘れてしまうほどの、居心地の良さ。もともと、外国人住宅として建てられたゆとりのある間取りは、中央のキッチンスペースを取り囲むようにして、リビング・ダイニング、子ども部屋や寝室が配されている。

奥のキッチンから出てきた、吸い込まれそうな笑顔とぶつかる。クリス-ウェブ 佳子さんは、中学生の姉妹を持つママでありながら、モデル業に執筆業にと忙しい日々を送り、その私生活が世間から注目される女性のひとり。
「私を24歳の時に産んだ母は、40歳代のうちにおばあちゃんになったんです。もしかして、自分も同じ道をたどったりして、とか最近考えちゃいますね(笑)」

今年40歳を迎えた彼女は、自分と同い年だという現在の住居を、とても愛おしくて仕方ないと語る。
「このマンションの築年数を見た時、私と同い年!と、ワクワクしました。ここに住んで5年になりますが、それ以前は、実は目の前のマンションに住んでいたんです。子どもたちがまだ小さかったから、ドタバタするのを前提に1階に住んでいました」
聞けば、さらにそれ以前のすみかも、もう一軒裏手のマンションだったという。すぐ近所で、3回の引っ越しをしているということになる。
「私、行きつけを作るのが好きなんです。いまの居住区の中には、長年かけて作ったお気に入りの場所がいっぱいあって。公園も買い物もレストランも、すぐ近くに大好きなところがたくさんあります」

モロッコ製のラグにアジアで見つけた帽子、そして個性たっぷりの小物たち。そこに近所の通りで偶然出合ったユーズドのダイニングテーブルやサイドボードを加えるなど、持ち前の審美眼で選ばれたインテリアの数々が見事にマッチしあう。それらはすべて佳子さんのファッションセンス同様に、誰からも共感の得る佇まい。
「テーブルはコップの跡やキズが残った中古家具をあえて選んでいます。ミニマルモダンやラグジュアリーなスタイルも好きですが、いまは誰かが汚したり傷つけても気に留めなくてすむような、ラフでいられるインテリアがしっくりきます。ライフスタイルに合わせてこそのインテリア。いつまでも完成することのない趣味として楽しんいます」

中学2年生と3年生になったふたりの娘たちとの会話で、最近よく話題にのぼるのが「あと何年一緒に住むんだろう」ということ。自分自身、18歳で大阪の実家を出た経験もあり、子どもたちもまた18歳で家を出たいと話しているのだという。ちょっぴり寂しそうな表情を見せたかと思うと、佳子さんはクスクスと笑い出す。
「面白いのが、娘達が家を出るなら向かいのマンションに住みたいって言っていること! ここから見える古いマンションをすごく気に入っていて。ついこの間、一緒に内覧もしてきたほどです。本当に、糸電話の距離!不動産の物件を見るのが好きな娘たちはいま、ルームシェアに憧れているんです。連休ともなれば、友だちが泊まりにきて、皆でキッチンの小さなテーブルを囲んで足を抱えて座ってる(笑)。ティーンエイジャーの思春期だからこそ友だちとの時間がすごく大事で、子ども達がその大切な時間を家で過ごしてくれるというのは親としてもすごく嬉しいです」

家族にとって安心できる家を

島根県生まれの大阪育ち。共働きだった両親に育てられ、父親が作った学童保育と、島根のおばあちゃんの家で過ごした記憶が、幼少期の思い出として強烈に残っている。2003年に上京し、東京生活は16年目。そのほとんどを仕事と子育てで慌ただしく過ごしていたという。子どもたちに手がかからないようになった昨今、改めて自宅のインテリアに手を加えてみたり、海外の住宅の間取りを眺めるのが楽しかったり。さらに将来の住居プランなども、考えるようになった。

「子どもの時、建築士の父親と勉強部屋をシェアしていたんです。だからすぐ側で図面を引く父を見ていたのもあって、間取りやインテリアも大好きなんです。最終的に住みたいのは、ぜったいに平屋。キッチンが土間になっているような家で、床をホースで水洗いとかできたら最高ですね」
大阪市の建築課に務めるその父の影響で、阪神淡路大震災の耐震チェックや仮設住宅の話題も、とても身近に感じていたという佳子さん。その後の東日本大震災を東京で経験し、ますます安全に対する意識が高まったという。ふたりの子どもたちとも、災害時の避難場所を決めている。
「暮らす家というのは、家族にとってまず安全なものでありたい。安心できる家を、父の設計で、そして木で作れたら理想ですよね。勝手口が多い平屋で、ふらりと友だちが立ち寄ってくれるような。そしていつか、コミュニティみたいにできたら! 私自身もシングルに戻ったし、まわりには事実婚であったり、同性で暮らす友人もいます。いろんなカタチの暮らし方があるからこそ、仲間たちが皆歳をとった時に助け合いながら一緒に暮らせたら、それって素敵ですよね」
と語りながら、大きな窓の外に目をやる。これからもきっと走り続ける彼女のライフスタイルは、たくさんのママにのびのびと暮らすことの大切さを教えてくれる。佳子さんにとってかけがいのない充電の場は、こうやって次々と大切なひとたちにシェアされていくのだろう。

Profile

1979年10月生まれ。島根生まれ、大阪育ち。モデル・コラムニスト。
4年半にわたるニューヨーク生活や国際結婚により、インターナショナルな交友関係を持つ。
バイヤー、PRなど幅広い職業経験で培われた独自のセンスが話題となり、2011年より雑誌「VERY」専属モデルに。
ストレートな物言いと広い見識で、トークショーやイベント、空間、商品プロデュースの分野でも才覚を発揮する。
2017年にはエッセイ集「考える女(ひと)」(光文社刊)、2018年にはトラベル本「TRIP with KIDS -こありっぷ-」(談社刊)を発行。interFM897をメインにラジオDJとしても活動中。
二女(中学生)の母。