〜キッズ編集部がゆく!家づくりの裏側を取材〜2021.02.26
第1回:KURASU 工務店のお仕事教えてください。
【家がほしい! おうちづくりって、どうやるの?】
はじめてのことだから、家づくりには“はてな?”がいっぱい。
家族みんなが心地よく暮らせる「家」をつくりたいから、家族の一員でもある子ども達の疑問を解決するため、“キッズ編集部”が発足しました!
まだ見ぬ理想の「家」を思い描いて、たくさんの疑問を解決します。
第1回は、家族のおうちはどこでどうやってつくればいいの? いいお家ってどんなものなの? などなど、子ども達の素朴な疑問の数々を家づくりのプロフェッショナルに聞いてきました。東京・世田谷区におしゃれなオフィスを構える工務店「KURASU」へ、“キッズ編集部”が突撃取材します。一級建築士でもある社長の、小針美玲さんが答えてくれます。
キッズ編集部:
はじめまして。今日は「家づくり」について、私たちが疑問に思っていることを聞きにきました。どうぞよろしくお願いします。この場所は「工務店」ということですが、新しい家は工務店さんで買えるのですか。
小針さん:
よろしくお願いします。
新しい家を持つには、いろいろな方法があります。「建て売り」と言って、すでに建てられた家の中からお気に入りを見つけたり、「ハウスメーカー」や「工務店」と呼ばれるところにお願いをして、自分たちの好みにあった家を一緒に考えたりすることもできます。また、「家をデザインする専門家=建築士」にデザインをおまかせする場合もあります。
「この場所に住みたい」とか、「一から自分たちだけの家を考えてつくりたい」という人たちは、工務店で建てることが多いです。工務店はその地域のことを良く知っていることが多く、工務店によっては、家をつくる場所=土地を探すことから一緒にかかわってくれるところもあるんですよ。「KURASU」では、家のデザインから実際に家を建てるまで、すべてのお仕事をお受けしています。一緒に“モノづくり”をしたい!というお客様とは、より良いものができ上がりますね。
キッズ編集部:
では工務店さんは、実際にどのようなお仕事をしているのですか?
小針さん:
一言でいうと、家族の希望に寄り添った家をデザインして、そのデザイン通りに、家そのものを組み立てていくことが工務店の仕事です。
家づくりに携わる人はたくさんいて、家をデザインする設計士、家を組み立てる大工、足場をつくるとび、壁を塗る左官屋、水道屋、内装屋、タイル屋、建具屋、塗装屋に板金屋などなど、工務店がお願いをするたくさんのプロの職人さんたちが、みんなで力を合わせてひとつの家を作り上げていくんです。
キッズ編集部:
なるほど! 工務店さんは、それぞれ専門の職人さんたちとチームを組んで家をつくっているんですね。
それでは、家のデザインは、どうやって決めていくんですか。
小針さん:
まずは家族みんなの希望をしっかりと聞き出して、暮らしやすく安全な家を提案します。
「KURASU」の場合は、家族みんなが快適に、安全に暮らせるように何度も打ち合せをしてから、「プラン」と呼ばれる、お家のカタチのアイデアを家族のみなさんに見せるんです。2階建てにしようか? お部屋はいくつ必要かな? 玄関や階段はどこに作ろうか? 窓の大きさは? などなど、家族みんなが納得いくまで、いくつも「プラン」を考えることもあるんですよ。
キッズ編集部:
子どもの私たちも、工務店に行ってもいいのですか?
小針さん:
もちろん! お父さんやお母さんと一緒に、工務店に遊びに来てください。ここでは、ブロックで家を作れるようなおもちゃもあるし、君たちが住んでみたいお家もぜひ聞いてみたいです。「KURASU」では、家ができあがるまで、だいたい2週間に一度くらいのペースで何度も打ち合せをします。その間に、君たちも少しずつ「家」について興味と理解を重ねていくことになるだろうから、自分が暮らす家ができあがるまでの数カ月は、とてもワクワクする体験が待っていると思いますよ。
キッズ編集部:
プランが決まったら、すぐに家を建てはじめることができるんですか。
小針さん:
プランがまとまったら、次は「設計図」をつくります。設計図は、家をどうやって組み立てていくか、どうやったら地震にも強くなるか、建築士や構造設計士がたくさん計算をしてつくっていきます。その途中で、最近はパソコンで見られる3Dでつくったまるで本物みたいなお家を見ることもできるんですよ。3Dでは、太陽の光がちゃんとお部屋の中に入るかなども、確認することができるので、便利ですね。ところで、ふたりは、どんな家に住んでみたいの?
キッズ編集部:
大きくて広い家がいいな! 実は今日、こんな家に住みたいなという絵を描いてきました。
小針さん:
わあ! すごいですね。お城のように豪邸ですね! プールもついていて、気持ち良さそう。窓の飾りやまんなかに開いた丸い窓も、すごく素敵です。
こちらは3階建てで、地下室もあるんですね。地下室ではお父さんがゴルフの練習をしているのかな。ふたりとも、屋上に木が生えていて、緑があるのがいいですね! 参考になりそうですよ。ツリーハウスも、夢があっていいなぁ!
キッズ編集部:
僕は将来、建築家になりたいと思っていて、いつも家のことを考えているんです。自分で住むなら、天井が高くて気持ちのいい家だったらいいなと思います。そういう家もつくれますか?
小針さん:
もちろん。天井が高くて広い空間があったら、とても気持ちがいい家になりそうですよね! お家の天井の高さや空間の広さは、家の骨組みと大きく関係しているんですよ。皆さんのからだにも骨があるように、家にもその家を支えてくれる骨があるんです。家の骨組みはどんな材料でできていると思う?
キッズ編集部:
木だと思う! 私は、石だと思う! 合っていますか?
小針さん:
どちらも、正解かな。いま日本の住宅の約60パーセントが、木でできていると言われています。石というのは、鉄と石を組み合わせた鉄筋コンクリートと言ってRCと呼ばれているものです。どちらにも、それぞれのいいところがありますが、日本の気候には木が適していると言われています。予算もおさえられてあたたかなぬくもりのある木の家は、とても人気ですね。
キッズ編集部:
でも、もし木の家だったら、たとえば大きな地震が来たときに、壊れちゃうんじゃないですか?
小針さん:
鉄や石だから頑丈、木だから弱いということは、まったくないんです。
「構造計算(こうぞうけいさん)」といって、どんな家も特別な計算をすることで、その家の強さを知ることができるんです。どれだけ地震に強い家かも、計算で出すことができるというわけです。「KURASU」でつくる家は、ひとつひとつの家に地震に負けないような強さを出すための構造計算をしています。「耐震等級3」というのが、いちばん地震に強い家になるのですが、この「耐震等級3」の家づくりをしています。これだけ地震の多い日本ですから、家は家族を守るものでなくてはいけませんよね。
どうやって木の家を強くするかは、家の構造=骨組みに秘密があるんですよ。きちんと強さのわかる木の骨組みを、特別な金具でつなぎ合わせて構造計算をする木の家づくりの方法は「SE構法」と呼ばれています。木なのに強くて頑丈、おまけに余分な柱がいらないという、特別な建て方なんです。
キッズ編集部:
「構造計算」をしているということは、家をつくるときに大切にしたい選択肢のうちのひとつですね。ほかにも、「工務店」選びで大事なことはありますか?
小針さん:
まず、家族みんなで住みたいと思う地域の工務店を探しましょう。そして先ほどお話しした地震に強い家をきちんと「構造計算」をして建てているかということ以外に、「長期優良住宅」や、「省エネ」などと言ったキーワードがあげられますが、これはこれから君たちが大人になっていく家だから、未来を考えた家づくりにつながると思います。
また良い工務店は、「定期メンテナンス」といって、家をつくった後もずっとその家が壊れないように見守っていくんです。家ができあがってからも、その家が壊れていないかをチェックしたり、万が一修理が必要な場合は、直したりもするんですよ。
ずっとお付き合いをするのだから、工務店の社長や大工さんときちんとお話ができるかどうか、安心して家づくりを任せられるかどうか、などを考えながら、いくつかの工務店を比較しながら見つけることが大切だと思います。
キッズ編集部:
工務店さんのお仕事は、家を建てたら終わり、というわけではないのですね!
小針さん:
そうなんです。家は暮らし方によって、ずっときれいなままだったり、不具合が出たりします。だから、これから新しい家に住むみなさんには、できあがった家をいつまでも大切にしながら暮らしてもらいたいですね。そうしてもらえたら、心を込めてつくったわたしたちも、とても嬉しいです。
次回は、建築途中の現場におじゃまします。実際の家づくりを体験レポートします! お楽しみに。
photo 上村可織 text 須賀美季
取材した場所
株式会社KURASU
東京都世田谷区奥沢2-13-18
問い合わせ先: 0120-958-105
取材したひと
小針美玲さん
株式会社KURASU代表。一級建築士。出身地である栃木県のゼネコン、鹿島建設などで現場監督として大型建築の建設に従事。「本当にいい家を建てたい」という情熱のもとKURASUを設立し、一般住宅の設計やリフォームに携わる。講師や講演活動のほか、設計・施工のエキスパートとしてメディア出演もこなす。
ニコちゃん
家族で、海の近くに暮らす9歳。そろそろ自分のひとり部屋が欲しいと思っているところ。Kポップがいまのマイブーム。
マサノブくん
将来、建築家志望の8歳。通学途中も散歩するときも、ついつい建物ばかりみてしまうという建築好き。