MENU
kids

〜キッズ編集部がゆく!家づくりの裏側を取材〜2021.03.05

第2回:KURASU 工務店のお仕事教えてください。

【家づくりの現場って、どうなっているの?】

はじめてのことだから、家づくりには“はてな?”がいっぱい。
家族みんなが心地よく暮らせる「家」をつくりたいから、家族の一員でもある子ども達の疑問を解決するため、“キッズ編集部”が発足しました!
まだ見ぬ理想の「家」を思い描いて、たくさんの疑問を解決します。

2

第2回は、キッズ編集部が、実際の家づくりの現場へとおじゃましました。東京・世田谷区におしゃれなオフィスを構える工務店「KURASU」の社長・小針美玲さんが案内してくれたのは、まだ建設途中の家。実際の家がどうできあがっていくのかをレポートしながら、家づくりに大切なことや、これから家を持つひとが知っておいたことがいいことなどを、聞いてきました。

キッズ編集部:
小針さん、今日はよろしくお願いします。前回よりもワクワクしています! このあいだ、事務所で見せていただいた模型の家が、いまつくっているこの家なんですね! KURASUさんが家を建てるエリアは決まっているのですか。

小針さん:
今日は、図面や模型ではなくて、本物の大きな家をぜひ体験してみてください。建てている途中の建設現場は、危険なものがいっぱいあります。自分の家をつくるときも同じですが、必ず大工さんや家族の方と一緒に見るようにしてくださいね。ヘルメットも忘れずにかぶってください。
KURASUでは、東京の城南エリアのお客さんに頼まれて家づくりをすることが多いです。家をつくる場所と工務店というのは、とても密接な関係だから、地域のことを良く知っている工務店が受け持つことが多いんです。家ができあがった後も、建てた家に不具合がないかなどのチェックをするのにも、目の届く範囲というのは大事なんです。

キッズ編集部:
家づくりの、いまはどの段階なのですか。そもそも家って、どういう手順で作られていくんですか。

小針さん:
今日、ふたりが入ってきたところが、実際の玄関になります。まだ扉も窓ないし、床も壁もすべては張り終わっていません。この家はいま、柱や梁、母屋など、家の骨組みができ上がった「上棟(じょうとう)」の状態です。この状態になるまでの大まかな手順は、土地を平らにして、基礎工事というコンクリートで家の土台をつくる、そして材木を運んで、その上に木で骨組みをつくっていくという順番になります。
木造の家づくり自体は、日本で昔からある工法なんですよ。簡単に言うと、柱や梁、土台などを組み合わせた骨組みができたら、そこに壁をつけていくという方法ですね。木造の材料や組み立て方法なども、時代とともに少しずつ進化しているんです。

キッズ編集部:
1階に入ったとき、壁や床が緑色になっていました。ここだけなぜ緑にするのですか。

小針さん:
いいところに注目しましたね! 緑色に見えたのは、防蟻処理(ぼうぎしょり)といって“シロアリ”が家に入って家の土台や柱を食べてしまうのを防ぐための、お薬なんですよ。床や壁を張る前に、木の骨組みにあらかじめお薬を塗っておくんです。そうすると、シロアリの被害を防ぐことができます。この家では、人に害のない薬を使っていて、薬を塗ったところが分かるように色粉を混ぜて緑にしているんですよ。

キッズ編集部:
なるほど! 完成したときには見えないけれど、とても大事な作業ですね。階段はどこにあるんですか?

小針さん:
家の中に階段がつけられるのは、もっと後になってからなんです。木の骨組みを作る前に、「足場」といって、家ができあがる外側に鉄のパイプを高くまで組んでいって、大工さんが高いところでも作業ができるようにするんですよ。この家は2階建てで、さらに2階にはロフトもあるので、3階建てのような背の高さです。それでは、大工さんが使うハシゴを使って、2階にあがってみましょう!

キッズ編集部:
わあ! 2階は天井が高くて広いですね。太陽の光もいっぱい入ってきて、なんだか木の匂いがして気持ちがいい!

小針さん:
そうですね。木の家をつくる現場って、気持ちが良くて私も好きだなぁ。この家は、2階に家族が集まる場所として、リビングとダイニング、キッチンを持ってくるようにデザインしました。天井が高くて、壁や柱のない空間だから、とても広く感じますよね。これは、前回もお話しした「SE構法」という、特別な方法の骨組みだから作ることのできる大きな空間なんです。今日は、実際に家づくりをしている大工さんがここでお仕事をしているので、ご紹介しますね。大工の草刈さんです。

キッズ編集部:
こんにちは。よろしくお願いします!
今日は、何時からお仕事をしているのですか。大工さんは、この家を作るのに何日間くらい仕事をするのですか。

草刈さん:
はい、今日は朝の9時からここで仕事をしています。家で奥さんにつくってもらったお弁当を持ってきていて、お昼はそのお弁当を食べて、夕方暗くなるまで仕事をしていますよ。
私の仕事は、設計士がつくった家の設計図を元に、建材(木の材料)を用意したり、決まった長さに切ったり、さらにそれを図面通りに組み立てていくことです。寸分の狂いも許されない仕事だから、いつも設計図を照らし合わせながら、時にはこの場所で材料をカットして微調整をしながら、作業を進めています。一般的な木造住宅の場合は、大工が関わる仕事は、だいたい3ヶ月くらいかな。家の大きさに応じて、何人かでチームを組んでやることもあるんだよ。

キッズ編集部:
こんなに大きくて長い木の柱や板を運んだり、2階に持ち上げたりするのはものすごく大変ですよね。

草刈さん:
都心の住宅だと、トラックが入って来られない細い道に家を建てる場合もあり、そういうときは、資材のすべてを人の力で運び込んだりもするんです。KURASUが考える家づくりは、住む人の好みやこだわりがつまったものだから、ひとつとして同じ家がない。だからこそ、毎回図面をよーく見て、間違いのないようにしなくてはいけないんだ。釘を打つ位置ひとつとっても、とても大事だから、木に細かく印や数字をつけながら、何度も確認をして慎重に作業を進めていくんです。

キッズ編集部:
だからノコギリだけじゃなくて、測る道具も、いっぱいあるんですね。

草刈さん:
そうなんだよ。初めて見る道具もきっと多いよね。両面にたくさん目盛のついた指矩(さしがね)や、大きなハンマーの掛矢(かけや)、木材に穴彫ったりする鑿(のみ)や材木を削る鉋(かんな)など、昔から家づくりに使われている道具がいまも受け継がれているんだよ。もちろん、電動のキリや大きな電動ノコギリなど、現代の道具も使っています。若いときから何年も修行して、ようやく一人前になれる仕事なんだ。

キッズ編集部:
大工さんってかっこいいなぁ。家をつくる仕事って建築家だけだと思っていたけれど、実際には大工さんをはじめ、たくさんの人が活躍するんですね。

小針さん:
そうなんです。家づくりには、工務店で設計やデザインを担当する私たち以外にも、仲間の職人さんたちが大活躍してくれています。大工はじめ、足場をつくるとび、水道屋、電気屋、タイル屋、塗装屋、建具屋、左官屋などなど、たくさんの専門家がかかわって、ひとつの家ができあがっていくんですよ。

キッズ編集部:
すごいなぁ。最初は、ただの骨組みの空間だと思っていたけど、こうして歩いて見ると家の間取りが少しわかりますね! ここはもしかしてトイレですか?

草刈さん:
良くわかったね。いまは木の柱だけだけど、これから壁や床が完成したら一気に部屋らしくなっていくんだよ。でもこの柱こそが、強い家を保ってくれる大事なものなんです。ひとつの家ごとに「構造計算(こうぞうけいさん)」といって、地震の揺れや風の強さを考えて、家がどれだけ強いかコンピュータで事前に確認作業をしているんですよ。木の家でも地震の揺れにも耐えられて、安全に暮らすことができるのは、柱と梁を特別な金物で強くつなぎ合わせているからなんだ。

キッズ編集部:
前回の取材のときに、小針さんにお話をききました。「SE構法」という地震に強い骨組みなんですよね。地震に強いということは、「いい家」だって言えますね。他には、これがいい家だという何か基準みたいなものはあるんですか。

小針さん:
構造計算のように家の安全性だけでなく、目では見ることのできない快適さについても「数値」で出すというのは、いい家の基準のひとつになると思います。
例えば、断熱(だんねつ/家をどれだけ温かく保てるか)や、気密(きみつ/家にすきまがないかどうか)なども、きちんと数字で出すことができるんですよ。また、そういう数値を含めて、その家がちゃんと作られているかをチェックする、住宅性能評価(じゅうたくせいのうひょうか)というものもあります。その家づくりに関わっていない別の専門家に「家の通信簿」を作ってもらうという感じですね。家のデザインももちろん大事だけれど、安全で快適に暮らせる家というのはとっても大事なんです。

キッズ編集部:
「家の通信簿」なんて、学校みたいですね! いい家にするために、わたしたちも知っておいた方がいいこともたくさんありますね。そのうえで、家を作る工務店さんや職人さんたちと、いっぱい話し合っていくことがとても大事なんですね。とても勉強になりました! ありがとうございました。

photo 上村可織 text 須賀美季

取材した場所

株式会社KURASU
東京都世田谷区奥沢2-13-18
問い合わせ先: 0120-958-105

取材したひと

小針美玲さん
株式会社KURASU代表。一級建築士。出身地である栃木県のゼネコン、鹿島建設などで現場監督として大型建築の建設に従事。「本当にいい家を建てたい」という情熱のもとKURASUを設立し、一般住宅の設計やリフォームに携わる。講師や講演活動のほか、設計・施工のエキスパートとしてメディア出演もこなす。

大工さん 草刈 修さん(18歳)

ニコちゃん

家族で、海の近くに暮らす9歳。そろそろ自分のひとり部屋が欲しいと思っているところ。Kポップがいまのマイブーム。

マサノブくん

将来、建築家志望の8歳。通学途中も散歩するときも、ついつい建物ばかりみてしまうという建築好き。

キッズ編集部