階段によって家の印象は変わる! 知っておきたい階段の種類や名称、注意点を解説

階段によって家の印象は変わる! 知っておきたい階段の種類や名称、注意点を解説のインデックス
注文住宅は、思い通りの家を作るための唯一の方法です。今、思い描いている家が2階建てないしは3階建てならば、階段について知っていただきたいことがあります。家族が家の中を行き来するときに欠かせない階段にも種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
また、階段をつくる際の注意点として、寸法の問題もあります。せっかくの注文住宅で理想のマイホームをつくるなら、後悔のないようにしたいですよね。階段は生活動線の中でも重要なものです。家族の安全で快適な生活を支える階段の種類にはどのようなものがあるのでしょうか。それらはどのような間取りに合うものでしょうか。今回は階段についてご説明いたします。
階段とは?
住宅における階段とは、フロアを繋ぎ安全でスムーズな移動をサポートするものであると同時に、空間づくりを印象付ける建築要素のひとつでもあります。形状やデザインも様々あり、暮らしに溶けこむデザインも主役級のアクセントにすることも可能となります。配置の仕方は生活動線や空間の広がりにも影響するため、家族の快適な暮らしを思い描きながら設計しましょう。
階段の種類とその特徴
直線階段
一般的な注文住宅で最も採用されることの多い階段のスタイルです。踊り場はなく、1階から2階までを直線で結ぶ階段です。占有する面積が少なく済みますし、階段下部を収納スペースに仕立てることもできます。形もシンプルであるため、設置費用も少額で済むのがメリットですが、階段に使える面積が限られていると、勾配(傾斜)が急になることもありますので、安全面を考えなければなりません。そのため、手すりをあわせて設置するのがおすすめです。
かね折れ階段
建物の隅に配置するときに考えられるのが折れ階段です。間取り図で見るとLの字に見える階段で、途中に踊り場、もしくは斜め角度の階段が生じます。必要な面積は比較的少なくすみますが、斜め角度の階段部分は、踏む面積に大きな差が出ますので、安全面に配慮が必要です。
折れる分、直線階段よりは費用がかかり、スペースもとるため一見するとデメリットに目がいくかもしれません。しかし、途中で踊り場があることで万が一の際に落下しても、ずっと下まで落ちてしまうことを防いでくれますし、スペースが確保されることで勾配も緩やかに設計できるメリットがあります。
折り返し階段
間取り図で見ると、コの字型やU字に見える階段です。途中に踊り場を設けますので、折れ階段と同様、仮に階段で足を踏み外したときも転がり落ちる段数を最小限にとどめることができます。下部に収納スペースを設けられますが、他の階段と比較して設置スペースを広く取らなければなりません。ただし、階段の段差の数が多くなることで、勾配もなだらかに大きくとることができるため、安全面でのメリットがあります。
回り階段
回り階段とは、途中で180°方向を変えるタイプの階段のことをいい、円を描くようにゆるやかにカーブしながら昇降します。折り返し階段とよく似ていますが、回り階段はカーブ部分に段差があるのが特徴です。踊り場がなく踏み外しのリスクも考えられるので、正方形の踏み板を設置したり手すりを追加するなど、安全性を高める工夫があると良いでしょう。
螺旋階段
階段の中で、一番省スペースで済むのが螺旋階段です。踏み面が全て三角形に近い形状で、中心に近いほど踏む面積が狭くなるため、他の階段に比べ上り下りに注意が必要です。狭小住宅にぴったりの階段ではありますが、2階や3階に家具を搬入する場合は階段の幅や天井までの高さ等、チェックするポイントがいくつかあります。おしゃれな雰囲気を演出できるため、マイホームの個性を重視する方にはおすすめです。
階段のデザイン別種類とその特徴
箱型階段
箱型階段は、箱を積み重ねたような見た目をしている階段で、昔ながらの日本住宅でも多く使われてきた実用性の高い構造です。段板と蹴込み板がしっかりと組まれているため、安心感のあるデザインといえます。上下の空間を分けて使えるので、階段下にトイレや収納を設けるなど空間を有効活用しやすいというメリットがあります。
スケルトン階段
スケルトン階段は蹴込み板がない階段のことで、シースルー階段やストリップ階段とも呼ばれます。デザイン性も高く、スタイリッシュで軽やかな印象を与えられるのが魅力。段の間に抜け感があるオープンな構造は安全性への配慮と手すりの工夫が必要になりますが、視線が通りやすく光や風も遮らないため、空間が明るく開放的に感じられます。
ひな壇階段
ひな壇階段は、階段片側が露出しており、横から見るとまるでひな壇のように見えるデザインが特徴です。側面の壁がなく階段の形状が見えるつくりなので、圧迫感をぐっと抑えることができます。壁側に配置したり吹き抜けとあわせることで、さらに開放感を演出できるでしょう。デザイン性と空間演出の両方を意識したい方におすすめです。
片持ち階段
片持ち階段は、片側だけが壁などに固定され反対側が宙に浮いているように見えるデザインで、はね出し階段やキャバレー階段とも呼ばれています。一段一段が浮かんでいるようなモダンで美しいデザインは、インテリアの主役にもなりハイセンスな空間づくりにピッタリです。構造的にはしっかりとした補強や正確な設計が必要となるため、施工には技術力が求められるでしょう。
階段を構成する主要素
踏み板
足で踏みしめる板を「踏み板」といいます。私たちが日頃意識しているのはこの踏み板で、その上面(奥行き)を「踏み面(ふみづら)寸法」と呼びます。踏み面の奥行きが狭ければ、まるでつま先だけで上がるような感覚となるでしょうが、建築基準法では15センチ以上と定められていますので、そのような階段になることはまずありません。この踏み板の面積をどれくらい確保するかによって階段を上り下りする際に足を踏ん張れる面積が変わります。
段鼻
段鼻とは、踏み板の先端にあたり滑り止めを付ける部分のこと。最近では、溝を設けて滑り止め機能とデザイン性を両立させたタイプも増えています。段鼻が視認しやすいと昇降時の足元が安定し、安全性が高まるでしょう。蹴込み板より出っ張るように設計することで、昇る時につま先がぶつかるのを防ぐことができます。
蹴込み(蹴込み板)
蹴込みとは、階段の安全性や歩きやすさの向上に重要な要素です。段鼻の先から、段と段の間に設けられる垂直の板(蹴込み板)までの奥行きのことをいい、一般的に3mm以下での設置が推奨されています。階段の種類によっては、蹴込みがなく蹴込み板のみで段が繋がるスタイリッシュなデザインのものもあります。
蹴上げ
階段が急か、それともゆるやかなのかを感じさせるポイントが「蹴上げ」です。一段の高さが低ければ登り降りは楽に感じはしますが、一方で段数が増えてしまうというデメリットがあります。建築基準法では蹴上げは23センチ以下で、と定められています。小さいお子さんやお年寄りにとっては、23センチでも上り下りを辛く感じるでしょうから、家族構成や将来を見据えた設計にしたいですね。
手すり
手すりは、高齢の方が安全に階段を利用するためには有用です。ストレートなタイプのものから、掴みやすさを確保するため波打ったような形状をしたものなど、多くの種類があります。また、手すりを設置する場合には、どのくらいの高さに設置するとよいかも検討しましょう。
照明
夜間の安全のため、階段にも照明は不可欠です。とっさのときにも慌てずに昇降できるよう常に明るくしていたい場所ですが、一晩中電灯をつけておくのももったいないものです。ムダを防ぐため、手すりの裏側や踏み板裏側に省電力のLED照明を組み込んだ商品もあり、常夜灯として用いることができ便利です。
階段の素材の種類
木製
木製の階段の魅力は、なんといってもその素材が持つ自然な風合いの温かさと美しさでしょう。木の質感や木目は、ひとつひとつ違っていて面白みがあります。また、樹種も豊富な選択肢の中から、自分好みのものを選べるのが嬉しいところ。さらには加工がしやすいというのも、デザイン性を高めるにはありがたい特徴です。
アイアンなどの金属製
アイアンなどの金属製を階段の素材として使った場合は、まずそのデザイン性の高さに驚かれるでしょう。クールでモダンなイメージが好みの方であれば、金属製の階段のスタイリッシュな雰囲気に、満足するのではないでしょうか。金属も加工がしやすく、細く薄くすることで繊細なイメージを演出することも可能ですし、逆に厚みを持たせることで骨太な男らしさを印象付けることもできるでしょう。また防錆加工などを施すことで、外部階段としても対候性の高いものが出来るでしょう。
上り下りしやすい階段の寸法
建築基準法の寸法の基準
先ほどご紹介した通り、階段を構成する踏み板(踏み面)と蹴上(段の高さ)には、法律で定められた基準があります。しかし、これらの最低基準では、上り下りのしやすさという点で十分とは言えません。実際、多くの人が利用する公共施設では、踏み面を約30センチ、蹴上を約15センチといったように、より緩やかな寸法で設計されていることが多く見られます。一方、建築基準法が定める最低基準は、踏み面15センチ、蹴上23センチ。この数値の差からも、実際の使いやすさには大きな違いがあることがわかります。
階段寸法の計算法
一般的に、上り下りしやすい階段は踏み面寸法と蹴上のバランスによって決まると言われており、蹴上の2倍に踏面を足して60センチになる寸法が良いとされています。計算式にすると、「蹴上×2+踏み面寸法=60センチ」となります。先ほど紹介した公共施設の階段も、15センチ×2+30センチ=60センチでちょうどこの計算式に当てはまっていますね。
ポイントはバランス
階段の上り下りのしやすさはバランスが鍵になります。先ほどご紹介した、踏み面と蹴上のバランスに加えて階段の段数のバランスも重要です。踏み面を大きく蹴上を小さくすれば緩やかで安全な階段にすることができますが、その分段数が増えることになり階段のスペースも大幅にとることに。上り下りのしやすさには個人差もあるため、家族やご自身たちの将来を考えて、実際に上り下りしやすいと感じる階段を調べてみることをおすすめします。
階段の配置を考えよう
ホール階段
ホール階段は、玄関ホールや廊下などリビングから離れた空間に配置されるタイプの階段です。動線を分けやすいため家族間のプライバシーを確保でき、来客時でも顔を合わせずに往来できるという特徴があります。帰宅してから自室へスムーズに行くことができますが、家族のコミュニケーションが減ってしまう可能性も。
また、生活空間ではない場所に設置することになるため、ある程度の広さを確保する必要があります。間取りを圧迫してしまう恐れもあるので、家の広さと階段とのバランスを考慮し、階段の形状・配置など工夫をしながら検討するとよいでしょう。
リビング階段
リビング階段とは、リビングの中に階段を設けるスタイルです。自然と顔を合わせる機会が増え、家族のコミュニケーションも生まれやすくなります。ホールの空間をカットできるので、その分リビングを広く確保することも可能。吹き抜けとの相性も抜群で、広々とした開放的な空間を実現できます。
来客時でもリビングを通ることになるので気を遣う場面もあるでしょう。上下階が繋がる構造になることで冷暖房効率への影響も考えられるため、シーリングファンなど空気循環を整える設備や断熱性能などもしっかり検討することが大切です。
階段づくりで後悔しないためのポイント
階段の役割をイメージして設置場所を考える
階段を考える際には、暮らしの中での役割をイメージすることで、最適な設置場所を考えることができます。家族の会話を大切にしたいならリビング階段、玄関から直接2階へ行くことが多い生活スタイルや間取りであればホール階段がおすすめです。どんな生活をし、どのような空間にしたいのかを事前に明確にしておくことがポイントといえるでしょう。
安全性・将来性を見据えたデザインにする
階段は毎日使う場所だからこそ、安全性を第一に考える必要があります。小さな子どもや高齢者がいる場合は、スケルトン階段や片持ち階段よりも箱型階段の方が安心かもしれません。デザイン性も両立したい場合には、手すりの高さや形状、滑り止めや落下防止などの細かな工夫も重要です。また、将来的な変化も見据え、誰にとっても使いやすい設計を心がけたいですね。
階段をおしゃれにする4つのアイデア
階段の踊り場を有効活用
スキップフロアを採用することで、階段スペースを居住空間として活用することが出来ます。こちらの事例では、階段の踊り場を広く取り、書斎スペースとしています。こうすることで、1階から2階への移動手段である階段が、ひとつの居住空間として成立してしまうのです。スキップフロアの良い点は、独立した居住空間でありながらも、他の空間と間仕切りによって分断されていないことです。緩やかにリビングとつながることで、家族内のコミュニケーションが取りやすいでしょう。
スケルトン階段のある吹き抜けのリビング
こちらはLDKの一部に吹抜けを作り、壁一面の大開口から陽光が降り注ぐ、明るい大空間に仕上がっています。その吹き抜けの中に階段が設置されていますが、階段としての主張がほとんど感じられない、空間を邪魔しないスタイリッシュなデザインで作られています。素材は木材と金属のミックスで、木の温かみを金属のクールさが適度に抑えていて、窓枠やキッチンの金属ともマッチしつつ、部屋全体の明るい温かい雰囲気にも寄り添うような素材配分と言えますね。
細い手すりの階段はモダンな印象
大きな玄関土間と玄関ホールのデザインは、シンプルな白い空間の中に、木の温かみとスチールのクールさがアクセントとして効いています。中でも、螺旋のように回転しながら登っていく階段のデザインのおかげで、まるでギャラリーに配置されたアートのようにも感じられます。階段が存在感を放ち、主役となっている空間ともいえるでしょう。階段には重厚感のあるスチールが多用されていますが、階段上部は大きな吹抜けが施されているので、明るさを十分に感じる玄関として仕上がっています。
階段下に暖炉のあるガラスの手すりの階段
玄関ホールから2階へ上る階段は通常の階段とは違い、段差のある箱を重ね合わせたような、お洒落なデザインで作られています。また、玄関ホールにはエタノール暖炉がインテリアとして設置されています。このエタノール暖炉は、一酸化炭素を排出せず、安全性が高いので、目を離す時間が長い玄関ホールに設置しても安心です。階段と共に、玄関をおしゃれに演出する仕掛けになっています。
【実例紹介】階段の実例が豊富な重量木骨の家の施工例
階段下スペースを有効活用
階段下にあえて複数の収納スペースを設けたこちらのお宅。まるで、大きさの異なる額縁が飾られているかのよう。それぞれのスペースにお好みの小物やディスプレイをおいて、プライベートギャラリーのようにも楽しめます。何も置かなくてもこのままで十分おしゃれに見えるも素敵ですね。
階段を中心に家族が集まるリビング
スキップフロアで個性的な空間をつくっているこちらのお宅。階段がうまく配置されており、階段による圧迫感を感じさせることなく広く見せています。通常では踊り場に当たる階段の折り返し部分もひとつの部屋のように使える広さを確保しており、階段を使ってそれぞれの空間を行き来する中で家族が自然と集まるリビングになっています。
存在感を排したモダンアートのような階段
リビングの壁にそうように配置されたこちらの階段。まるで宙に浮かんでいるかのような軽やかさがありとってもアーティスティックです。この階段そのものがインテリアのようですね。リビング内に配置された他の家具とも調和しながらお部屋のアクセントにもなっています。
個性が際立つ螺旋階段
先ほどとは打って変わって、存在感もインパクトもピカイチのこちらのお宅の階段。階段全体を重厚感のある黒い色に統一することで、階段の存在感を強調しつつ屋内全体の印象を引き締める効果があります。照明や手すりのデザインとの組み合わせも素敵ですね。自宅でありながらまるでレジャー施設にいるかのようにワクワクする階段です。
階段におしゃれな収納棚を
開放的な吹抜けのリビング階段は、お部屋に合わせたグレージュ色のアイアン手すりと一体となり、美しいインテリアのよう。吹抜の天井に設置された天窓から差し込む自然光により、リビング全体が明るい空間になっています。階段の片側の壁面には床から天井まで、一面に収納棚が備え付けられていて、1階から2階へ移動しながら本を選んだり、飾り棚のインテリアを楽しむことが出来る仕掛けになっています。
ガラスの階段でリビングからも車を眺められる
こちらの階段は、大好きな車を家に居る時も眺めながら過ごしたいという思いから、ガラスを多用したデザインに。ガレージの上部踊り場から、スキップフロアの手法で2方向に階段が伸び、一方はリビングへ、もう一方は個室へとアクセスできます。個室へアクセスする階段が、ガラスでつくられており、その下のガラス屋根からは、大好きなクルマを眺めることが出来ます。屋根だけでなく、階段の素材にもガラスを使うことで、車を眺めるという実用性と、まるで浮きながら移動するというデザイン性を兼ね備えています。
緑を見ながら移動できる癒しのスケルトン階段
2階へ上る階段は、段板のみが上へ上へと続く、スケルトン階段。前面の窓の向こうに広がる緑を眺めながら、2階へと移動することができます。また、視線を上げると上部に広がる、明るく青い空と白い雲も楽しむことができるので、家に居ながらにして、自然を楽しむことができる階段デザインですね。片側には手摺も設置されて、安全対策も十分に考慮されています。
スタディースペースのあるリビング階段
2階リビングの一部として、オープンな作りの階段があります。段板のみで構成されたスケルトン階段は、一方を壁で固定し、もう一方はスチールの板に固定されています。この鋼鈑のデザインが、イナズマのように見えて、階段というより、インテリアの一部としてリビングをおしゃれな空間に演出しています。究極まで薄く細くデザインされた側板と手摺は、限りある空間を最大限広く見せる効果もあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。どんな階段を選ぶかによってお部屋の印象がガラリと変わりますね。せっかく注文住宅でのマイホームを検討されているなら、個性たっぷりの階段を取り入れてまわりと差をつけるのも一案です。安全にも配慮し、長く楽しく住める家を実現してみてはいかがでしょうか。