MENU
interview

子育てと暮らしinterview2020.03.04

和田 明日香

日々変化していく子どもの成長を見守り、家族がひとつになる「家」。一緒に過ごす時間を何よりも大切にしたいから、子どもと密着できる暮らしを優先。第4回は、食育や料理の分野で活躍する、和田明日香さん。素敵なママの魅力を探ります。

4

食べることで繋がる、家族みんなの居心地の良さ。

真っ白なキッチン。食器棚も調理台も窓枠も、クリーンな白一色。カウンター式になっている調理場スペースの天井には、大きな天窓がついている。その天窓から降りそそぐたっぷりの自然光が、まるでスポットライトのように、キッチンに立つ美しい女性をさらに輝かせている———。白づくしのキッチンの中をこっそりのぞくと、足下の床は、意表をつく鮮やかな赤だった。
「キッチンは、わたしにとって聖域みたいなもの。赤い色は気合いが入ります。リングにあがるような気持ちで、ここに入るんですよ」と、光を浴びた女性は高らかに笑う。

和田明日香さんは、料理家・平野レミさんを姑にもち、タレント活動や食育インストラクターとして現在活躍中。持ち前の大らかな性格と、明るくさっぱりとした話し方で、個性あふれる料理家として知られる平野レミさんとの楽しい掛け合いも、話題を呼んでいる。

そんな明日香さんが家族と暮らす家が建つのは、都心からほど近い人気の街。夫が生まれ育った場所であり、結婚してからずっと夫婦で暮らしていた馴染みの場所だ。毎日の食材を買うスーパーも、可愛い雑貨や洋服を買うお気に入りの店もある。大好きなレストランも、ほとんどがこの街にあるという。
「とにかく居心地が良すぎて。子育てをはじめてからは、この土地にますます愛着が沸いてしまったんです。結婚して夫と暮らしたマンションで子育てがはじまりましたが、やっぱり手狭になってしまって。住み替えに、近隣のマンションや建て売りなどを数多く見たけれど、行き着いたところは“自分たちの好きな街に、好きな家を建てよう!”ということでした」

この土地から離れたくないという思いで、街の中でもエリアを限定せずにあちこちの土地を探した。そうこうしているうちに出合えたのが、日当りのいい角地。建築事務所へは、夫婦で相談を行く際には、自分たちの希望がしっかりと伝わるようにと、さまざまなプレゼンテーションを事前に制作し持ち込んだという。中には夫が用意したポエムもあったりして、設計士を驚かせたというエピソードも。それだけ思い入れも強かった我が家が完成したのは、5年ほど前のこと。

「家づくりをしていたのは、3人目の子がお腹の中にいるときでした。家ができあがるか、赤ちゃんが出てくるのが先かってタイミングだったんです。無事女の子を出産後、夫が『新しい赤ちゃんを新しい家で迎えたいから、明日引っ越し予約した!』と。産後10日で急遽この家に引っ越してきたんですよ(笑)」

その次女はもう5歳になり、9歳のお姉ちゃんと7歳のお兄ちゃんを追い抜かすようにして、この家を縦横無尽に走り回っている。家族が集まるLDKは3階の最上階にあり、いまはこの部屋が子ども達が最も多くの時間を過ごす場所でもある。リビングの一角には、小さなデスクと椅子、たくさんの絵本や色鉛筆が並んでいる。窓には、ママに宛てた可愛らしい手紙や絵が張り付けられていて、子ども達が不在の日中でさえ、愛おしい空気に満ち満ちている。

「子ども部屋は2階と1階に個々の部屋があるのですが、普段は目の届くリビングで宿題をしたり、遊んだりしています。いまはお友達が来ると、大人から隠れる場所として子ども部屋を使っていますね」

まるで外国のリビングのような、居心地のいいカントリー調の内装。“窓”が好きという明日香さんの希望もあって、キッチンの天窓しかり、家全体に窓の数がとても多い。ダイニングの最も大きな窓は、全開口サッシになっていて、開け放つと広いデッキが出現。内と外がひとつになった、大空間が生まれる。あたたかな日には窓を開放すれば、心地よい風が室内に入り込んでくる。
「夏はここで、子どもたちが1日中プールを楽しむ日もあります。私はデッキで大好きなビールを飲むのが、暖かい日の楽しみだったりするんです」

新居に暮らすことになったタイミングと時を同じくして、明日香さんは徐々にお料理を仕事にするようになったという。
「お料理は毎日のことだったし、義母であるレミさんにも教わるチャンスもありました。あるとき、レミさんが離乳食の本を制作するという話になって、現場の声を聞かせなさい!って、現役ママとして仕事場に呼ばれたのがキッカケでした。当時子育てばかりしていた私にとって、お料理の撮影現場はとても刺激的でした」
それから、撮影現場を少しずつ手伝うように。そうしていくうちに、賑やかな嫁姑のやりとりがなんだか面白いと評判をよび、対談に呼ばれたり、料理番組に呼ばれたりするようになったという。そんな中、料理を仕事にすることに自信が持てなかったという明日香さんは、夫のアドバイスもあって、子育てをしながら通信教育で、食育インストラクターの資格を取得。どうせ学ぶなら、仕事に役立つだけでなく、自分の家族に役立つものをとの思いだった。

「食育って、子どもに正しい食の知識を与えるためのものだと思っていたんです。でも学んでみて、食育は子どもに携わる大人のためのものかもしれないと思うようになりました。生まれながらにして食べることへの興味や、するどい味覚を持っている子どもに、大人流の食べ方とか、汚してはいけないとかネガティブなことを植え付けているのかもしれないなって」

いちばん下の子が保育園に入るようになって、料理の仕事を本格的にするようになったという明日香さん。でも、ママであることも本業だからと、保育園のお迎えに間に合うよう、仕事はきっちり17時までと決めている。

「いつか離れていってしまう子どもたちだから、いまの子ども時代を大切にしたいんです。食事は一緒に、が基本です。『おいしいね』って話しながら食卓を囲むことってすごく大事だと思うから。我が家ではいま野菜ゲームが流行っていて、料理に使われている野菜を当てっこしながら食べるんです。そうすると食べられなかった野菜にも、いつの間にかチャレンジできるんですよ」

家は家族みんなを守ってくれる、安全な場所。そして、帰ってきた時に、ご飯のいい匂いがする家でありたいと話す明日香さん。笑顔の向こう、キッチンの窓辺に置かれた「ベストマザー賞」のトロフィーを、オレンジ色の西日がきらりと照らした。

Profile

1987年4月17日生まれ。東京都出身。3児の母。
料理研究家・平野レミの次男と結婚後、修行を重ね、食育インストラクターの資格を取得。
各メディアでのオリジナルレシピ紹介、企業へのレシピ提供など、料理家としての活動のほか、各地での講演会、コラム執筆、CM出演など、幅広く活動する。
2018年、ベストマザー賞を受賞。著書に『子どもは相棒 悩まない子育て』(ぴあ/2018年)、『和田明日香のほったらかしレシピ』(タツミムック/2019年)。