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interview

子育てと暮らしinterview2020.04.09

花楓

家族がいちばん時間を費やす場所だから、居心地の良さを追求した「家」。そこに好きなものを集めて並べて、自分たちだけの空間を作り上げていく。第5回目は、モデル、アーティスト、プロデューサーなどさまざまな肩書きを持ち活動する花楓さん。インテリア選びのセンスにあふれた、素敵なご自宅へ。

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大好きを集結させた、こだわりのインテリア。

大きな木々が立ち並ぶ公園にはさらさらと小川が流れ、四季の訪れをいち早く知らせてくれる。その大きな公園を囲むように、閑静な住宅が立ち並んでいる。都心からほんの少し離れた場所とは思えないほど静かで、子育てをするには申し分のない環境だ。その住宅街の一角に建つ低層のマンション。その佇まいは、建築やデザイン好きならば、一歩立ち止まる風貌だ。

モデルとして活躍する花楓さんも、そんなデザイン好きのひとり。これまでも暮らしやすいこのエリアが好きで、すぐ近所に暮らしていたのだが、ずっとこの低層マンションに目を付けていたという。
「暮らすならこんなマンションがいいなと思っていました。散歩途中に見つけた時、すぐに不動産屋さんに連絡をして、分譲のうち数室が賃貸になっていることがわかりました。その数少ない部屋が空くのをずっと待っていたんです。私は高いところが苦手なので、落ち着きがある風貌でしかも低層というのが気に入っていました」

すべて間取りの違うマンション、花楓さん家族が入居したのは、LDKとベッドルームが螺旋階段でつながれたメゾネットタイプの広い部屋。リビングの大きな窓からはたっぷりの日が差し込み、白壁の部屋をよりいっそう明るく見せている。ヴィンテージのキャビネットの上には、多肉植物やガラス細工、キャンドルや小さなオブジェが絶妙なバランスで配置されている。壁には、赤ちゃんを腕に抱くピカソのデッサンが掲げられ、どれひとつとってもそのセンスに見惚れてしまうほど。バウハウスを代表するトーネットのチェスカチェアに腰掛ける花楓さん。美しい彼女をとりまくこの空間は、アムステルダムのテラスハウス、はたまたパリのアパルトマンを彷彿とさせ、脳内トリップをさせてくれるほど完成されている。

「インテリアは、ほぼすべて私の趣味なんです(笑)。前の家から引き継いだものもあるし、新しく買い足したものもあります。古着屋さんやアンティークショップを巡るのが大好きで、いつも夫には『え?これを買うの?』と呆れられるような不思議なものをついつい欲しくなっちゃうんです。悩んでいると、息子から『買っちゃいなよ!また働けばいいじゃん!』って笑わせてくれるコメントが飛び、ついつい買ってしまうんですけど(笑)」

花楓さんには、小学校1年生になる息子がいる。子どもの存在を感じさせない大人調のインテリアだが、子どもがまだ小さな頃から「大事なものだから、触らないでね」と言い聞かせるうちに、触ったらこわれてしまいそうなものには決して手を触れないようになったとか。でもそんな花楓さんが選んだ素敵なオブジェの隣に、息子が制作した陶器の怪獣がさりげなく並んでいたりするのが、なんとも微笑ましい。

モデルとして仕事をはじめた13歳くらいの時から、インテリアに興味を持つようになったという花楓さん。当時ヴィンテージの車を販売していたという父親の影響もあり、ピカピカの真新しいものよりも人の手を渡ったぬくもりのあるものに自然と惹かれるようになった。この家にあるインテリアのほとんどが、ユーズドやアンティークのものだという。
「子どものころから、家を眺めたり間取りを見たりするのが大好きでした。ヴィンテージの車を扱っていた父の仕事場には、クラシックでかっこいいものがいっぱいあって。そんな父にも影響されて、古くて味のある内装が好きなんです」

そんな“好き”を生かして、最近ではリフォームやリノベーションをプロデュースするまでに。リビングエリアの壁一面は、造作の飾り棚になっていて、開くと本棚やテレビが収納されている。まるごと取り外しが可能で、元の内装を傷つけることなく設置が可能だという。
「賃貸物件って、基本的にはリフォームNGですよね。気軽に内装をいじることができなくて、いつも残念に思っていました。暮らしてみると、自分らしさも出したいし、こうだったらいいのになってところが出てくるんです。だから、きちんと原状復帰ができるリフォームの提案をしたくて」

オルガンクラフトという工務店と組んでプロデュースしたクラシックな印象の壁は、中がまるごと大きな収納スペースになっている。余計なものを隠すことでリビング空間をすっきりと見せてくれるという利便性も。例えば、転居になって取り外しが必要になったときも、個々を本棚やキャビネットとして利用することもできるという。その造作した壁に共鳴するかのような存在感を誇るのが、壁に掛けられた大きなジャカード織りのピカソだ。偶然オンラインショップで見つけて、絶対にこの場所に飾りたいと取り寄せをしたという。

モデル業だけに留まらない花楓さんの活躍は、インテリアだけでなく、洋服メーカーやライフスタイルブランドとのコラボレーションや、21歳の時から取り組んでいるというコラージュアートと多岐に渡る。ヴィンテージの書籍や古い洋雑誌などから、気に入った絵柄を切り出して制作するコラージュアートは、驚くほど細密な作品。30cmサイズのキャンバスに開けられた円型の窓には、花楓さんの手によって再生された美しい世界が広がっている。

「コラージュアートを作るには、古くて素敵な本をたくさん手に入れなければいけません。いろんな古本屋に出かけるという、過程も好きなんです。ずっと趣味で続けていて発表をするつもりはなかったのですが、友人に『趣味で終わらせるのはもったいない』と言われたり、また別の友人に個展を依頼されたりするうちに発表にいたりました」
2016年に初めて愛媛で行われた個展は大盛況で、すべての作品に買い手がついたという。忘れもしないのは、初めて作品を買ってくれた人がフランス人の彫刻家だったこと。
「友人から、この人はアートの目利きだからと言われていたので、購入してくれたときはとても嬉しい気持ちになりました」
自身で作成したコラージュアートは、玄関にも飾られている。

やりたいことが次々と溢れ出していくという花楓さん。夫ともに活動するボランティアにも精力的で、東日本大震災の被災地である石巻での活動も続いている。被災地に足を運ぶことで、地震に備える意識も高くなり、暮らしの上での備えも考えるようになったという。
「被災地に赴くことで、一気に自分たちの暮らしの安全性にも目を向けるようになりましたね。特に家族で暮らしているので、家具が倒れないようにとか、普段からの備蓄や耐震にも気を配るようになりました」

いずれは、郊外の、できれば静かな湖畔に平屋の家を持ち、家族で暮らしたいと夢見ていると語る花楓さん。その穏やかな暮らしもきっと、彼女の審美眼で集められた美しいインテリアに満たされるに違いない。

Profile

東京生まれ。モデルとして数々のファッション誌や広告などに出演。
現在は、ボランティア活動を通したイベント開催や、デザイナー、コラージュアーティストとしても活躍。
2012年に結婚、1児の母。