2つの吹き抜けで光と風を取り込む北欧インテリアの家


リビングに置かれた、北欧デザインの巨匠であるハンス・J・ウェグナーによる「PP19」、通称「ベアチェア」。長く憧れたマスターピースを迎え入れた。

玄関土間の脇にある、床が1段上がったスペースは趣味の時間を過ごすためのフレキシブルな“ステージ”。ここで奥さまは白樺細工を、娘さんはピアノを楽しむ。

「ベアチェア」やダイニングセット、照明など北欧家具が並ぶLDK。南側テラスの横と上階へ続く階段部分、2カ所の吹き抜けにより空間の隅々にまで光が巡る。

1.オーク材に白いオイルを塗った床、温かな白い壁のニュートラルな空間に家具が映える。ボーエ・モーエンセンのダイニングテーブルにウェグナーの椅子を合わせた。/2.ウォルナットと石材で製作したキッチン。奥側に設けたパントリーは袖壁で目隠しをしつつオープンなつくりに。玄関側とも直結しており、使い勝手抜群の動線。

LDKの延長の感覚で使えるテラス。屋外用チェアを置いてくつろげる場。周囲からの視線を気にせず、開放感を満喫できる。

3.2階の書斎スペース。小窓から光が入ると同時に、階段や洗面スペースの様子がわかり、家族間でコミュニケーションをとれる。/4.玄関脇、トイレの対面に備えた便利な洗面スペース。濃紺色のタイルが印象的なアクセントになっている。広々とした玄関土間は、愛犬・マースくんのお気に入りの遊び場でもある。

2階の主寝室。2面採光で明るさと風通しのよさを確保。

眺望を楽しむため、採光のために設けた屋上へと続く吹き抜け。この家のためにデザインされた軽やかな階段と、天井から吊り下げられたルイスポールセンのランプ「VL 45 ラジオハウス ペンダント」のシンプルな美しさが際立っている。

土間エリアにはハンス・J・ウェグナーが手掛けたソーイングテーブルや名作の「Yチェア」、北の住まい設計社のチェストなど、選び抜かれた家具や小物が並ぶ。

アーチの奥に飾り棚がある、窓辺の風景。窓枠の十字はシンメトリーではなく、ずらして配置。ルイスポールセンのランプ「PH3」の明かりが教会のような雰囲気を漂わせる。

浴室手前の洗面スペース兼ランドリールーム。洗濯をしてそのままクローゼットに収納できる非常にスマートな家事動線。

調理をしながら家族とコミュニケーションがとれるオープンなキッチン。

5.収納や造作棚の上は趣味の北欧雑貨やアートを飾る場所。リビングのキャビネット上にはルイスポールセンのテーブルランプ「PH2/1」などが飾られている。/6.落ち着きある上品な表情の外観が周囲の景観になじんでいる。
家族が趣味の時間を満喫する“ステージ”を備えた、愛着に満ちた暮らし
玄関扉を開くと目の前に広がる大空間。広やかな土間からシームレスにつながるLDK、南側にはウッドデッキのテラス、見上げれば吹き抜けという、開放感にあふれたダイナミックな構成が圧巻だ。ふんだんに注ぐ光と風のなか、住み手が大好きな北欧のインテリアやアートを飾って愛でる、クラフトを楽しむ、愛犬と遊ぶなど、のびのびと過ごす、快適で心豊かな暮らしがここにある。
以前はマンション住まいだったNさん一家は、一軒家を建てたいと考えるようになった当初から「家を建てるならTIMBER YARDに依頼しよう」と決めていた。千葉県にあるライフスタイルショップ「TIMBER YARD」に十数年来通い続けており、家具やアートの品ぞろえにもインテリアコーディネートのセンスにも信頼を寄せていたからだ。加えて、ショップに併設されたモデルハウス「gallery」で、SE構法によって生み出された空間の気持ちよさも体感していた。
実際に依頼し、相談を始めたところ「どんな家がいいのか、まず希望する全体像をヒアリングしてくださったので、叶うか叶わないかにかかわらず、理想の住まいについてお伝えしました」と奥さま。家全体に自然光が入り、日中照明をつけずに過ごしたい。開放的でありながら包まれるような落ち着き感もほしい、とリクエストしたそう。そこで改めてSE構法について詳しい説明を聞き、「高い耐震性による安全性と広くオープンな空間を両立できる点が、まさに理想を叶えるのにぴったり」と確信したという。
一般的な木造住宅と異なり、壁が少なくても成立するSE構法の利点を生かし、家族が集う1階を思い切った広さと開放感のあるLDKスペースに。2階には寝室や浴室、書斎などの個室をまとめ、2階の上は眺望と採光のためのルーフテラスとする、メリハリの利いた2階+ペントハウスのプランにたどり着いた。
設計を担当したTIMBER YARDの小林辰彦さんは「住宅街で隣家が近い環境のなか、周囲からの視線を遮断しながら開放感と光を得るために、吹き抜けを2カ所設けたところが大きな特徴です」と語る。SE構法によって強度を担保すると同時に施工精度にこだわり、高い断熱性と気密性も確保した。
インテリアに造詣の深い奥さまがコレクションしている家具やアートを配した空間は、まるで美しいギャラリーのよう。とりわけ北欧インテリアが好きなことから選ばれた家具は、ハンス・J・ウェグナーによるチェア、ルイスポールセンのランプをはじめ、長く愛される名作家具ばかり。温かな空気が漂うLDKには、奥さまが北欧の伝統工芸である白樺細工を習得して手づくりしたカゴなど、手工芸の作品の存在感も光っている。
一部の家具やブラインドは、TIMBER YARDのインテリアコーディネーターである田中直美さんの力を借りて選んだそう。建築とインテリアをトータルで提案するプロフェッショナルのおかげで、満足のゆく家づくりができた。
玄関土間とLDKの床の中間の高さに設けたスペースは、奥さまが白樺細工に没頭したり、娘さんがピアノを弾いたり。いわば、芸術活動のための“ステージ”。コンクリートに細いスリットのデザインを利かせた床がポイントで、玄関土間ともLDKとも一線を画す特別な空間になっている。生活のなかにこうした場をもつのは、なんと豊かなことだろう。
光と風、住み手の趣味性と愛着が隅々まで行きわたった、幸せな家が完成した。
取材・文/速水真理
N邸
| 設計施工 | TIMBER YARD | 所在地 | 千葉県市川市 |
|---|---|---|---|
| 家族構成 | 夫婦+子供1人+犬 | 敷地面積 | 143.26㎡ |
| 延床面積 | 128.75㎡ | 構法 | 木造SE構法 |








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