2026.01.26

光に満ちた中庭をアートギャラリーが囲むホテルライクな邸宅

異なる質感や濃度の「黒」を巧みに組み合わせた上質な空間

「カーテンのいらないホテルライクなインテリア」。Uさん一家が都内に一軒家を新築するにあたり、掲げたテーマだ。憧れていたのは、フランスの雑誌で見かけた、グレーを基調とした中庭のある家。シックな雰囲気に包まれ、光を取り込みつつ、周囲の視線を気にすることなく開放的に暮らす、そんなイメージが広がった。
 
 
Uさんが本誌『ML WELCOME』を通して知ったテラジマアーキテクツは、そんな理想の住まいを叶えるパートナーとして最適だった。設計施工からアフターメンテナンスまでを一貫して行い、東京23区と横浜をメインに都市型住宅を専門とする工務店。住宅が密集する都市部ゆえに外に対しては閉じ、内に向かって開く、中庭を効果的に取り入れた家づくりは、SE構法の強みを存分に生かした、同社が最も得意とする象徴的なプランだ。加えて、「黒やグレーの色使いが上品で素敵な住宅実例が多くあり、ここに依頼することを決意しました」と奥さま。
 
 
「大好きな黒をまとった家」というリクエストを受けて設計を担当した林 優介さんは「一口に『黒』といってもさまざま。取り入れ方には特に配慮しました」と振り返る。「黒は埃や手垢が目立ちやすく、メンテナンス性を考慮して敬遠する方も多い色。ですが、その特性を承知のうえでデザイン性を最優先したいとオーダーしてくださったおかげで、黒を多用する思い切った提案ができました。場所によって黒の質感や濃度を変える、細かな収まりにこだわるなど、空間が重く一辺倒にならないように仕上げたのがポイントです」。生活感を出さない美しい設えや収納など、「期待にとことん細やかに応えてくれました」と奥さまは満足そうに語る。
 
 
完成したのは黒い壁のソリッドな家。内部へ足を踏み入れると一転、陽光が降り注ぐ明るい光庭が出迎える。3層分の高さがあるダイナミックな中庭を中心として、その周囲を回廊と居室がぐるりと囲んでいる構成だ。家の外壁から内壁へと黒を連続して用いながら、内側へ進むほど黒の分量を減らし、白く明るい空間に。中庭に面して大きな開口を設け、視線のヌケと軽さを出した。卓越しているのが、天井高4.1mのLDK。SE構法ならではの無柱の大空間に光あふれる開放感が心地よい。内装も家具も、非日常のくつろぎをもたらすホテルのような輝きをたたえている。
 
 
ホテルライクなインテリアにさらなる格調の高さを添えているのが、随所に飾られた現代アートだ。夫婦共に好きな村上 隆やKYNEによる彩り豊かな作品の数々。前の家では収集するばかりで飾る場所がなかったが、この家でようやく堪能できるように。エントランスや廊下などをギャラリーとして活用することで、日々の暮らしにアートを取り入れ、さらにコレクションするほかの作品に掛け替える楽しみもある。
 
 
「以前は家族でホテルに泊まりに行くのが趣味でしたが、ここに住み始めてからは家での時間が最も快適で、あまり旅行に行かなくなりました(笑)。本当に住み心地も使い勝手もよく、すべてを気に入っています」というUさんご夫妻。
 
 
細部に至るまで自らの好みとこだわりが反映された住まいは、どんな高級ホテルもかなわない至福の空間だ。
 
 
取材・文/速水真理

U邸
設計施工 テラジマアーキテクツ 所在地 東京都江戸川区
家族構成 夫婦+子供3人+犬1匹 敷地面積 267.17㎡
延床面積 364.05㎡ 構法 木造SE構法

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