フリースペースに家族や仲間が集う健やかな木の空間


フリースペース北側の大きな開口部は、窓枠の奥行きを広くとり、子供たちがベンチとして腰掛けられるようにした。「隠れ家」を意味するヌックのような居場所に。

2階のほぼすべてを占めるLDKとフリースペース。視線を遮るような壁や扉はなく、遊び道具を収納する小屋裏収納とも一体化する、開放的な大空間となった。

1.高窓と天窓の両アングルから光が注ぐ、朗らかなダイニング。ナチュラルな色調に壁のマスタードイエローや造作収納のレンガ色の差し色が印象的。/2.ダイニング側は複合フローリングでヘリンボーン張り、リビング側はマホガニーの無垢材での定尺張りなど、床の素材や組み方も変えて視覚的にもゾーニング。

LDKと浴室などの水回りをつなぐ動線上に設けたフリースペースは、「体育館」と呼んでいる遊び場。階段を介して視線が抜けていく、大胆なプランを採用。

キッチンの壁は光沢のあるブルーグレーのタイルを選び、アクセントに。森林資源の再生と活用をする広島の会社、ウッドワンの無垢材を用いたキッチンを選択。

3.玄関の正面に飾られているのは、コレクションしている抽象画家のRikako Kimuraの作品。これ以外にも大小さまざまにある作品を季節や気分に合わせて各所に展示し、生活のなかでアートを楽しんでいる。/4.光と風を届ける2階のルーフバルコニーは心地よい季節には絶好の居場所に。夏はビニールプールを設置して水遊びすることも。

子供部屋は将来的に個室へとリフォームできるよう、扉やデスクスペースも線対称に配置している。

ダイニング上に位置する小屋裏収納。吹き抜けに面した部分に細長いデスクを設けた。家族との時間を共有しつつ、1人の時間も楽しめる。

寝室は壁の一面をテラコッタブラウンにし、床材の木目のトーンとなじませた。

5.リビング側に設けた高窓の周囲にも無垢材を張り、木のぬくもりが感じられるデザインに仕上げた。/6.無垢材のキッチンカウンター、ヘリンボーン張りの床、天井の板張りと、微妙に風合いの違う木材を組み合わせた。壁の一部は家族全員でハケを手にして、マスタードイエローにセルフペイントした。

7.趣味のアウトドア用品を収納するストレージやワークスペースを兼ねた余裕のあるビルトインガレージ。屋根には太陽光発電も搭載。/8.玄関やガレージのエントランス奥の洗面は、グレーを基調にシンプルにまとめた。
それぞれの場所でくつろぎ、遊ぶ。LDKを中心としたひとつながりの空間
大きな窓から自然光が注ぐLDKとフリースペースを育ち盛りの3人の男の子が元気に駆けまわり、バスケットボールに興じる。「フリースペースは体育館とも呼んでいます。子供たちが集まるお泊り会ではここに布団を敷いて寝転んで、合宿所のようににぎやかです」と奥さまは笑う。
回遊性の高い、木の空間が広がるI邸。近所にある素敵な家の設計施工がどこかを直接尋ね、ミューズの家であることを知ったIさんはまずはサイトをチェック。そこでSE構法という耐震構造を知り、興味を抱いた。「耐震性に優れた家が必須条件だったので、くわしく話を聞いてみることにしました」とIさん。「最初は性能や必要な部屋数など、数字に基づくご要望が多かったのですが、お話しするうちにただ大きい空間をつくるのではなく、同じフロアでにぎやかに過ごすご家族のイメージが浮かんできたのです。そこで、動線そのものをフリースペースにするプランを提案しました」と設計を担当したミューズの家の藤本卓也さんは当時を振り返る。2階のリビングと、「体育館」ことフリースペースに設けた大きな吹き抜けもSE構法だからこそ可能になった。家族そろってフリースロー大会をしたり、オンラインで親戚一家とつなぎ、サーキットトレーニングをしたり。柱のない伸びやかな空間には、毎日のようににぎやかで楽しげな声が響く。
I邸は「東京ゼロエミ住宅」の建築当初の最高値である水準3(当時基準)を取得。太陽光パネルを搭載し、高い断熱性能も備えている。今後、過酷になっていくであろう東京の気候にも対応した、将来を見据えた家だといえる。各種補助金制度を賢く利用し、高性能な家を実現した。
「家づくりの過程でアイデアがどんどん広がり、2階のLDKではさまざまな色や素材を取り入れることで、決まりきったスタイルにとらわれない空間になりました」と藤本さん。フローリングも素材や光沢、張り方などすべてが異なる組み合わせを選択。同じ階でも、床や段差に変化をつけることによってキッチンダイニングとリビング、フリースペースを緩やかにゾーニングしている。Iさん一家の自由な発想がさまざまなところに生きている。「マスタードイエローの壁に合わせた造作収納のレンガ色もアーティストの母に相談しながら選びました」と奥さま。一方で、設計側は完成後に雑然とした印象にならないよう数多くのCGパースを作成し、何パターンもの組み合わせを検討。注意深くひとつひとつの素材や仕様を決定していった。さらに、マスタードイエローの壁の塗装は家族全員で参加。外構の植栽も普段からDIYを楽しむIさん自ら造園デザインと植栽作業を行った。こうして家族や仲間が集う、唯一無二の住まいが完成した。
「現状のライフスタイルと向き合いつつ、未来も見据える家づくりは、今後ますます主流になっていくのではないでしょうか」と藤本さん。最近の傾向として、デザイン性、耐震性、省エネ性などの1つに特化するのではなく、総合的にバランスのよい家が望まれているそう。
そのために必要なのは、理想の性能、デザインを可能にするビルダーの手腕だ。「私たちも時代に合わせた情報をキャッチし、日々アップデートできるように精進していきます」と展望を語ってくれた。
取材・文/間庭典子
I邸
| 設計施工 | ミューズの家 | 所在地 | 東京都杉並区 |
|---|---|---|---|
| 家族構成 | 夫婦+子供3人 | 敷地面積 | 139.69㎡ |
| 延床面積 | 183.67㎡ | 構法 | 木造SE構法 |








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