2020.11.02

モノトーンで統一した端正な都会の邸宅

大空間をゆるやかにゾーニングし、暮らしやすく

10年後も美しさを保つ
研ぎ澄まされた端正な家

 
M邸が立つのは品川駅から徒歩圏内とは思えない、緑に囲まれた御殿山。都会の静寂にたたずむスイートルームのような、非日常的な端正さだ。金融業界で活躍されているMさんの要望は「すっきりとした大空間」「経年対応が可能なこと」「きちんと収納できること」の3点。無駄のない空間には普遍的な機能美があり、メンテナンス性も十分な収納力も、すっきりとした快適な空間で長く生活するための条件と考えるMさん。確かに研ぎ澄まされたシンプルさを日常生活の中で保つには、メンテナンス性と収納力が不可欠である。シンプルでスタンダードなデザインは時がたっても飽きがこず、流行遅れにならない。
「ご要望が明確だったので、それをかなえつつ、環境的にも視覚的にも快適な住まいとなるようにしました。敷地が南北に細長いため、通常のプランでは分断されがちですが、空間がつながるように設計。リビングのソファに座ると中庭から玄関までひとつながりに見通せて心地がいいと気に入っていただけました」と参創ハウテックの清水康弘社長は語る。断熱設計を緻密に計算し、自然のエネルギーを効率よく取り込むパッシブデザインにより、柔らかな風と光を取り込む設計に。「パッシブ冷暖システムで洗面脱衣所やトイレ、廊下や玄関も同じ室温に保ち、エアコン1台の光熱費に抑えています」と清水社長。温熱環境のバリアフリーも実現。
 

住み手の目も楽しませる
エントランスのギャラリー

 
家全体に統一感が出るよう、床はオーク3層複合フローリングを、外壁や玄関などのタイルは耐久性のあるLIXILの磁器質タイルを主に採用。いわば真っ白なキャンバスのような空間だ。その分、インテリアを気軽に「着替える」ことができる。そのため、ソファやダイニングテーブルなどは主張しすぎないグレーや床のオーク材に近い色調のものをセレクト。鮮やかな色のチェアやアートなどを飾り、白い空間のスパイスにした。
ゆったりとした玄関ホールはまさにギャラリー。ゲストを最初にもてなす場所として、そして一日の終わりに寝室へと向かう道として、目を楽しませるアートやオブジェを飾った。ビンテージ調の木のベンチも無機質な空間に有機的なぬくもりを添えている。「急な来客のためのウエルカムスペースとしても重宝しています」と奥さま。玄関とLDKの間には中庭を配し、程よい距離感と光を得る機能を果たす。夜は間接照明によりムーディに。玄関脇にはゆったりとしたシューズクロゼットを配し、ここからも洗面、パントリーを通じてキッチンに抜ける生活動線をつくった。
 

キッチンなどの生活空間も
機能美と余裕ある動線を

 
キッチンにも機能美を追求。白と黒のシャープなL字型キッチンは参創ハウテックのオリジナルオーダーキッチン部門エクレアで製作。炊飯器など生活感のあるものをすべて収納できるゆとりを持たせた設計で常にすっきりと過ごせる。ワインラックなども収納の一部として設置でき、ライフスタイルに合わせた収納をカスタマイズできる。
シンガポールなど海外駐在の機会が多かったMさんご一家。キッチンや洗面なども海外の邸宅のような余裕のある幅の生活動線にし、ストレスなく生活できる設計に。10年後も普遍的な機能美を保つ家。それは毎日を快適に、すっきり暮らせる家なのである。
 

取材・文/間庭典子

M邸

設計施工 参創ハウテック 所在地 東京都品川区
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 253.88㎡
延床面積 229.47㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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