2022.03.22

アウトドアリビングが開放的なL字型の住まい

外と内との境界をあいまいにした──光の中で暮らす家

広い土間、縁側のような空間で
外とのつながりをゆるやかに

白い壁に黒のスチール階段。モノトーンでまとめたシンプルモダンなK邸には、伝統的な日本家屋の知恵が各所に生かされている。例えば広い土間のある玄関。LDKへとつながるエントランスには床の間のようなキャビネットがあり、季節の花や植物がゲストの目を楽しませる。ゆったりとした土間からの通路は、仏間であり客間としても活用する奥の和室にそのまま入ることができ、ガラス扉からは庭やテラスへもつながる。手前にはS.I.C.からLDKへ抜ける動線も。古民家の梁のような構造部分をそのまま現しにして吹き抜けへと広がる天井の高さを強調した。
伸び伸びとしたLDKは白い壁に囲まれたクリーンな内装だが、大開口に面した幅1.3m、長さ6.5mの5畳だけは床を大判タイルに変え、縁側のようにひなたぼっこができる居場所にした。天気のいい週末はここで読書をしたり、音楽を聴いて過ごす。家族が集まるグレーの大きなソファ以外は、レザー製BKFバタフライチェアやスピーカーにもなるCICONIAサウンドテーブルなど、気軽に動かせる家具をそろえた。広いLDKやその延長上にあるテラスなど、どこでも過ごせるフレキシブルさを楽しんでいる。
L字型の建物が囲むテラスは、子供たちの絶好の遊び場。敷地内には両親の住む実家があり、中央の庭を中心に2棟が向き合っているので、互いに子供を見守られて安心だ。テラスは40.26㎡のリビングとほぼ変わらないゆったりとしたスペースなので、第2のリビングとして、アウトドアテーブルやチェアを広げてピクニック気分で食事することも。ここは両親と共通のリビングのような役割も果たしている。幹線道路に近く、交通量も多い立地だが、2棟に守られた庭とテラスは信じられないほど静かで安全である。

快適な日常を無理なく維持する
ライフスタイルに応じた収納計画

部屋全体が常にすっきりとまとまるのはファミリークローゼットとなる大きなW.I.C.を確保しているから。収納家具は置かず、必要に応じた収納を造作した。例えばテレビを配置した壁の裏にはパッシブエアコンのD.S(ダクトスペース)にテレビの配線を収めるなど収納スペースとしても活用。ここにはコンパクトに畳めるアウトドア家具なども収め、いつでもすぐ取り出せるようにした。また存在感があるピアノもあらかじめ置く場所をダイニングの奥と決め、ぴったりと収まるように設計した。こういった「見せない工夫」により、研ぎ澄まされたシンプルモダンな空間となった。

洗濯、部屋干しを流れるように
回遊できる合理的な家事動線

K邸は水回りの配列も機能的だ。洗面と脱衣室は分離型とし、ランドリー部分に洗濯機を配置。ファミリークローゼットまで流れるように回遊できる家事動線である。内部に洗濯物を干すことも可能なランドリーからはテラスへもそのまま出られ、これらの一連の動きが数mの間で完結する。
SE構法ならではの大空間を快適に維持するのは、パッシブデザインと家の性能。この地域は冬場の西風が厳しく、それを遮る防風林があるほど。2階の各部屋を西に配し、中庭に風が当たらないようにした。高い気密性を約束する断熱材、芯から温まるペレットストーブやパッシブエアコンも搭載し、南側の大開口から太陽の熱を取り込んだ。テラスとリビングが一体となったK邸は、春夏秋冬、心地よい空間を保つことに成功している。

取材・文/間庭典子

K邸
設計施工 ニケンハウジング 所在地 愛知県西尾市
家族構成 夫婦+子供3人 敷地面積 273.69㎡
延床面積 201.22㎡ 構法 木造SE構法

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