2017.07.13

外と緩やかにつながる自然の力を生かした家

外と緩やかにつながる自然の力を生かした家

子供と愛犬が喜ぶ外に開いたL字型の家

玄関の扉を開くと、正面にリビング。その奥にはキッチン&ダイニングがL字型に配され、右手には広々としたテラスと庭。LDKの床とテラスのウッドデッキには段差がなくひと続きになっており、この視覚効果が、LDKに外へと広がるような開放感を与えている。
広々としたテラスの「主」はラブラドールレトリーバーのHANAちゃん。都市部のマンションに暮らしていた頃に奥さまがご実家から引き取ったため、家を建てるなら「犬が駆け回ってのびのびと遊べる庭」がマストだったそう。その後、ご夫妻は兵庫県の川西市に70坪の角地を発見。基本のプランは、HANAちゃんが庭と室内を行き来でき、さらに、終日室内に陽光が入る、南東に開いたL字型に決めた。
1階にはLDKのほか、浴室など、日常で使う空間を集約。居住スペースをコンパクトにまとめて、テラスや庭を広くとった。M邸が立つのは、数分歩けば山歩きが楽しめる環境。夏にはせせらぎに蛍が舞い、冬には夜空に星がきらめく。「土地の特徴を生かし、鳥の声や移り行く季節を感じられる、外に開いた家にしたかったんです」とMさんは語る。

安心して過ごせる「天然素材の家」を追求

こちらに越して3年半。その間にはお子さまも生まれた。「子供も犬も外で自由に遊べるテラスと庭に、心から満足しています」と奥さま。室内はHANAちゃんたちがどれだけ走り回ってもダメージを気にする必要がなく、傷も味になるような無垢材のフローリングでまとめた。「床は無加工のスギ材です。建築の足場板として使用している、幅が広く厚手のものを選びました」とMさん。長い外出や旅行から帰ってくると、室内に漂う木の香りにほっとするという。
また、Mさんが無垢材と同様に重視したのは口に入れても安全な天然素材の漆喰を使うこと。壁は柿渋とオリーブオイル、銀杏草などを配合した漆喰で仕上げた。「2階の寝室の壁は半月かけて2人で塗りました」とMさん。海藻からつくられた糊は磯臭く、壁全体を塗るのは大変な重労働だったが、今ではその苦労もいい思い出だという。手作業ならではの不揃いな質感は温かみがあり、ほかにはない風合いになった。

感覚の合うパートナーに出会いプロの視点のアドバイスに納得

「ナチュラルで安心な家」というご夫妻の価値観に合ったのが、「長く住み続けられる家」を提案しているフクダ・ロングライフデザインだった。「家は家族の命を守るシェルターでもあります。地震国日本、特に近畿圏では30年以内に50%の確率で起きるといわれている南海地震に備える必要があります」と設計担当の千(ち)知(ぢ)岩(いわ)賢二さんは言う。フクダ・ロングライフデザインでは耐震構法 SE構法を全棟に採用。「SE構法という地震に強く安心感のある骨組みと、素材の心地よさを肌で感じられる無垢・無添加素材の内装が特徴です」と千知岩さん。さらに、M邸には高気密高断熱で自然のエネルギーを活用するパッシブデザインも採用され、一年中快適な室内環境が保たれている。「西側にも窓を希望したのですが、夏の日差しを考慮すると現状のほうがエネルギー効率がいいと、千知岩さんに説得されました。各所に配した小窓から光や風が入るので、西側は遮断して正解だったと住んで納得しました」と、Mさんは当時を振り返る。寝室には可動ルーバー式の雨戸を設置し、夜間も通風を可能にして、冷房エネルギーを軽減している。
「フクダさんとは、健康的な天然素材を使用するというコンセプトや、インテリアの価値観が共通していたため、信頼して家づくりを進めることができました」とMさん。木造のタフな構造、心地いい素材、そして自然の力を生かしたパッシブデザイン―プロとしての視点に導かれ、目指していた「自然の力で家族を守る家」が完成した。

取材・文 間庭 典子

M邸

設計 千知岩賢二(フクダ・ロングライフデザイン) 施工 フクダ・ロングライフデザイン
所在地 兵庫県川西市 家族構成 夫婦+子供1人+愛犬
延床面積 109.24㎡ 構造・構法 SE構法

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