2025.08.25

屋外空間とつながるバリアフリーの平屋

安全性と快適さ、そして美しさを追求した「終の棲家」

ラグジュアリーな空間と、バリアフリーに対応した機能を見事に両立させた平屋の邸宅。それがU邸だ。健康面を考慮し、仕事を徐々にセーブしながら、旅行や趣味をアクティブに楽しんでいる夫妻が望んだのは「究極の終の棲家」。建築やデザイン、家具に関しても造詣が深い2人は、ホテルライクなデザイン性と快適さをもつ居住空間を目指した。
 
 
アウトドアリビングと一体化した約42畳のLDK、そこからフラットにつながる書斎、寝室の主な家具は、ポルトローナ・フラウやアルケティポ フィレンツェなどのイタリアの高級家具で統一。「ジャケ買い」したというリビングの家具は、ポルトローナ・フラウの世界観と座り心地にほれ込み、カタログ掲載のトータルコーディネートを参考にセレクトした。「SE構法であれば40畳以上のLDKも可能だと説明を受け、関工務所に依頼することを決めました」と奥さま。「ヨーロッパ規格の家具をそろえてもゆとりを感じるよう、天井高は2.7mとし、床から天井まで達するハイドアを採用。バリアフリー機能を高めるためにも必要だった、大きな空間と広い間口はSE構法だから実現したことです」と関工務所の代表であり、設計士の関 敏孝さんは語る。
 
 
将来を見据えて、階段のない平屋のプランに。たとえ車椅子での生活になっても自在にアクセスできるよう、扉の引き戸の幅を広くとり、ゆとりある動線を確保した。車を降りるとビルトインガレージからそのまま引き戸を開けて玄関ホールへ。土間から上がり框の段差はほとんどなく、LDKへと楽にアクセスできる。LDKの大空間から各室の行き来はストレスフリーだ。浴室や洗面、ランドリーなどの水回りも1カ所にまとめ、各トイレも介助がしやすい広さにし、手すりをあらかじめ設置している。「90歳になっても、調理を楽しめるキッチンをつくりました」と料理好きな奥さま。つややかに輝くブラックステンレスのキッチンは、業務用厨房機器会社タニコーの家庭用ブランド「マイスデル」にフルオーダー。かがむことなく食器や調理器具が取り出せるようにキッチン下の収納も設計し、力を込めて引かなくてもノックで開く食洗機を導入するなど、厨房も完全バリアフリー。「アスコ」のスチームオーブンとワインセラー付き冷凍冷蔵庫を備えたプロ仕様だ。
 
 
ホテルライクな寝室も見どころのひとつ。リビングとしての機能ももち、簡易キッチンやトイレ、夫婦それぞれのウォークインクローゼット、トレーニングマシンなども一室に収めた。「寝室だけで過ごすことになっても上質な時間が過ごせるようにしました」とUさん。大きな開口部から光が差し込み、閉塞感はまったくない。さらに、LDK、書斎、寝室や玄関と、どこからもアウトドアリビングや庭の景観が視界に入るのも魅力的だ。全館空調による常に心地よい室内環境の維持、ランニングコストを考慮し、屋根に搭載したソーラーシステムによる省エネなど、家そのものも健やかだ。
 
 
人生100年時代となった今、どんな状況になっても豊かなライフスタイルを楽しめる、進化系の終の棲家。「こうしたい、こう暮らしたいという夢がかないました」と奥さま。今も楽しく、生涯楽しく。U邸はそんな未来に寄り添う。
 
 
取材・文/間庭典子

U邸
設計施工 関工務所 所在地 群馬県太田市
家族構成 夫婦 敷地面積 988.30㎡
延床面積 285.91㎡ 構法 木造SE構法

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