2016.12.15

それぞれの庭を介して緩やかにつながる二世帯住宅

それぞれの庭を介して
緩やかにつながる二世帯住宅

庭を介して相互につながる南北に世帯を分けたウイング型

O邸は経営者である多忙なご夫妻の世帯と、80代になるお母さま世帯が、緩やかにつながる二世帯住宅。40×10mの横長の敷地の中央には、日本庭園とテラス。さらに玄関や浴室、ギャラリースペースや和室などの共有部分を配し、それぞれの世帯のリビングを南北に分けてウイング状に置いた。
「庭やテラスを挟んでリビングが対面しているので、お互いの気配を感じながら過ごすことができます」と奥さま。まだまだお元気なお母さまだが、シルエットで行動を確認できるので、プライバシーを尊重しながらも、安心して暮らすことができる。来客の多いご夫妻だが、このレイアウトにしたことで、お互いに気を遣わず程よい距離感を保つことが可能になった。
「実は以前の家は先代が建てたもので、築45年となっていました。これからの人生、もっと自由に、和モダンな家で生活してみたいとも思い、思い切って建て替えました」とご主人。ご自身の年齢も考えて躊躇もしたが、今はその決断に心から満足している。

落ち着きのある和モダンの心が解放されていくLDK

ご夫妻の要望は外につながる大空間。そのため、テラスはLDKの一部として活用でき、一人でも大勢でもくつろげるスペースに。テラスの床は内部と同じ白のタイルを選び、ワンフロアであることを強調。屋外へと開放されるような広がりのある空間が生まれた。
また、リビングとテラスの軒、そして吹き抜け越しに見える2階の天井を同じレッドシダー材でつなげることで、ひと続きの大きな天井のように見せている。
「レッドシダーは狭い板幅を選び、明るめのトーンで着色して、マットに仕上げてもらいました。木目が強く出すぎると古民家のような感じが出てしまいますが、そうすることで軽さを出しました」とインテリアコーディネイターとしても活躍される奥さま。そんな細やかな調整が、洗練された和モダンの空間を完成させた。
木の温もりを生かすのは鮮やかなグリーン。「自宅でインテリアに関するセミナーを開いたときに、『花好mokume』という滋賀にあるグリーンショップにコーディネイトを依頼しました。選んでいただいた植栽や置き方の提案がこの空間にぴったりだったので、そのまま買い取ったんです」と微笑む奥さま。プロならではのアドバイスにより、さまざまなグリーンが空間に生命力を与えている。オリエンタルテイストのヴィンテージ家具もこの空間によく調和する。

週末は社員、友人、そして地域の人々が集うラウンジ空間に

このモダンな空間でご夫妻がいちばん望んでいたこと、それは大切な人たちと集い、語らうことだった。
社交的なご夫妻は親戚、社員、友人を毎週のように招き、自慢の本格的な石窯で焼いたピザやバーベキューでもてなす。
「 30代の姪っ子世代はリビングでDVDを楽しみ、その子供たちはテラスで遊び、自分たちはダイニングで語らうなど、それぞれの世代が自然に集まって過ごしています。でも、そのときどきで、若い人たちの輪に加わったり」と奥さま。ワンフロアで共に過ごし、緩やかにつながっているのが心地よいと語る。O邸のLDKは、招かれる人々にとっても、気軽に人の輪に飛び込めるようなラウンジ的空間だ。
ときには地域の子供たち20人以上を招いてタコ焼きパーティをすることもあるそう。「焼きたてのピザはもちろん、ピザ窯で焼いた肉汁たっぷりのハンバーグもパーティではいつも大好評です」とご主人。今、ご夫妻が実感しているのは、友人や地域の人と交流しあうことで生まれる人生の豊かさ。人の輪を広げる舞台として、壁や仕切りのない大空間が生きている。

取材・文 間庭 典子

O邸

設計 井上久実(井上久実設計室) 施工 大輪建設株式会社
所在地 滋賀県大津市 家族構成 夫婦+母親+愛犬
延床面積 254.13㎡ 構造・構法 SE構法

この家を建てた工務店

MLWELCOMEの新着記事

MLWELCOME

MLWELCOMEは『モダンリビング』誌と「重量木骨の家」とのコラボレーションで特別編集されたムック本として2015年10月に発行されました。厳選された木造住宅の実例をウェブサイトでもご覧ください。