2024.03.25

多彩な木の表情が個性となった傾斜地の家

敷地の地形が室内に連続したような雛壇状のプラン

外観に木材を張った住まいが、緑豊かな住宅街の急な傾斜地に立っている。ここに住むのは、無垢フローリングを製造販売する渡辺泰寛さんと建築デザイナーとして活躍するスペイン出身のクリスタさん夫妻。湘南の海から近い場所に敷地を探していたところ、出合ったのが前面道路から約4mも高い場所にあるこの敷地だった。
 
 
「道路から距離があり、後ろは自然に囲まれているこの敷地を見て、ひと目で気に入りました。敷地の特徴を生かしてデザインしたいと思いました」とクリスタさん。
設計・施工を依頼したのは、ご主人が仕事を通して10年来の知り合いだったリモルデザイン。クリスタさんが大まかな間取りとイメージスケッチを描き、それをもとにリモルデザインが具体的な図面を製作。地盤や法的な与条件、コストなどさまざまな面を同時に整理していき、細かにやりとりをしながらつくり上げていった。
 
 
道路から階段を上がり、銅板張りの玄関扉を開くと床がフラットに連続。室内の階段を数段上がると、天井高約6mものリビングと吹き抜けに面して設けられた伸びやかな開口が圧倒的な存在感を放っている。リビングはダイニングより床のレベルを70㎝低く設定。デッキテラスから室内まで雛壇状になっており、まるで傾斜地の地形が室内に表れたかのよう。
「傾斜地はどうしても段差が必要になります。そこで、その段差を室内の床のレベル差に変換することで、視線を効果的に変えたり、腰を掛けられる場所になるのではないかと考えました」とリモルデザイン社長の菅沼利文さん。
 
 
リビングは段差に合わせてソファを設置。ソファに座ると囲まれた安心感があり、ハイサイドライトからは向かいの山の緑と空だけが見える。ここで過ごすのが泰寛さんのお気に入りだという。雛壇状のおかげで道路から室内はほとんど見えないため、カーテンも掛けていない。さらに立体的なプランなのが功を奏し、キッチンからは1階全体を見渡せ、ガラス張りの2階の書斎の様子も吹き抜け越しによくわかる。
開放的でシンプルな空間をイメージしていたクリスタさんにとって、木造でヌケと広がりを表現できるうえ、余計な柱や梁が現れないSE構法は心強かったと話す。「リビングのエタノール暖炉を収めた壁の中には柱が入っていますが、一体にデザインすることで存在を感じさせません。こちらのリクエストに対し、構造設計の担当の方が構造を見えないように工夫してくれました」
 
 
プレーンな室内でアクセントとなっているのが、無垢材の色と質感。2階につながるオープンな階段は、泰寛さんが保管していたカリン無垢材を2階の壁まで張り上げ、空間の主役となるデザインに。また、ダイニングテーブルはブラックウォルナットでこの空間に合わせて製作した。住まい全体はオーク材を基調としつつも、ベッドルームはヘキサゴン(六角形)、書斎はヘリンボーンなどスペースごとにフローリングの張り方を変えて、プロフェッショナルらしい遊び心をプラス。そこにクリスタさんがセレクトしたアンティークの家具や照明が加わり、さりげなく個性が表現されているインテリアとなっている。
 
 
デザイナーである建て主と工務店との信頼関係に基づく絶妙なコラボレーションで、室内外に心地よい居場所が点在する個性豊かな住まいが完成した。
 
 
取材・文/植本絵美

渡辺邸
設計施工 リモルデザイン 所在地 神奈川県中郡
家族構成 夫婦+子供1人 敷地面積 330.60㎡
延床面積 138.82㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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