2019.06.03

ライフスタイルに対応したストレスフリーな住まい

自分たちのライフスタイルに必要な機能を選び抜く

集合住宅に暮らしたことで見えてきた家造りのポイント

結婚前から奥さまに家を建てると宣言していたSさん。自身が転勤族の子供として育ち、会社に勤めて以来、神戸、金沢、名古屋など日本各地を転々としたことから、“拠点”が欲しいという強い思いがあった。上のお子さんが中学に入学したのをきっかけに、6年前、この千葉の地に新居を建てることにした。
「いつか新築するという心構えがあったので、そのときのために準備し、各地で暮らすたびに気づいたことをメモしていました」と奥さま。社宅や集合住宅のスペックはいわば平均値。すべての層にとっての快適を目指すものだ。しかし、それが必ずしも自分たちにとってベストではないことに早くから気づいていた。「不便な動線や足りない収納にはストレスを感じていました。逆に思わぬ収納が快適だと発見したり」と奥さま。以前、住んでいた社宅で、納戸を食料常備用のパントリーとして活用してみたら、意外にも使い勝手がよかった。「そこで今回は階段下のデッドスペースをパントリーにしました」。また、造作の収納も緻密に計算をし、「キッチンの引き出しにはどの皿を何枚おさめるとか、いつも使う調味料は何か、食材のボリュームはどのくらいかなどを伝えて、細かく収納のサイズを決めていきました」とのこと。ライフスタイルに合わせて調整していけるのが、注文住宅の利点である。

何よりも大切にしたかった家族を守ってくれる耐震性

阪神・淡路大震災を経験したSさんは、耐震に優れた住まいが家族を守ってくれると確信していたので、当初鉄骨造による家造りを想定していた。一方で奥さまが思い描く理想は、無垢材に包まれた温かみのある家だった。「インテリアショップの『TIMBER YARD』が好きで、あんな空間に住みたいなと思っていたんです」と奥さま。木造は避けようと言っていたSさんに、話を聞いてみるだけ、と説得して訪れてみたところ、技術に明るいSさんのほうが重量木骨の家に引き込まれ、「木造もいいんじゃない?」と考えるようになった。
エネルギー効率が悪いからと懸念していた吹き抜けも、住宅密集地で光を取り込む役目を果たすことを知り、検討。デザイン性や心地よさに目がいきがちな木造でも、機能的で強さを兼ね備えた、家族を守る家造りが可能だと気づいたという。

無垢材に包まれた北欧スタイルの空間

設計施工を行ったTIMBER YARD/コージーライフは材木卸から始まり、17年前に住宅部門をスタート。住宅を手がけるほか、家具・雑貨などのインテリアショップ、カフェまで展開している。トータルで家造りを相談できるのが魅力で、S邸ではキッチンや収納も造作。「地震などの災害時の危険を軽減するためにも、家に固定できる造作家具にしました」と奥さま。ソファやテーブルなどもこのショップで購入した。
「『アルファベットソファ』は背もたれやアームなど、どこにも座れるソファなので、ダイニングテーブルに向かって座れば、奥の和室まで見渡せます」と内装を担当したTIMBER YARD/コージーライフの西山礼美さん。このソファは3年前に家族の一員となった愛犬もお気に入りの場所だ。
Sさんが単身赴任になったり、お子さんが独立したりと、家族のありようが将来変わっても、一家の心をつなぐ“拠点”はここにある。

取材・文/間庭典子

S邸

設計施工 TIMBER YARD/コージーライフ 所在地 千葉県船橋市
家族構成 夫婦+子供2人+犬 延床面積 146.56㎡
構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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