2019.02.01

水盤のある庭を望むシンプルモダンを極めた邸宅

水盤のある庭を望むシンプルモダンを極めた邸宅

美しい庭を囲んで暮らすL字型邸宅の豊かさ

現代美術館と見まごうほどのモダン外観のY邸。門を入るとまず目に飛び込んでくるのが、木々に囲まれた水盤のある庭だ。住みてであるY夫妻の要望は、プライバシーを守り、メンテナンス性に優れた住宅でした。そこで長期に渡り維持しやすい堅牢な素材を使い、道路の敷地境界線から建物を十分セットバックさせた、L字方のプランを採用しました。
道路側の開口部を極力少なくし、さらに生垣で庭を囲い込んでプライバシーを確保。光にあふれた住環境を実現しました」と設計を担当したテラジマアーキテクツの伊澤杉人さんは説明する。
庭は建て替え前の日本庭園を生かしつつ、高さの事なる壁を配置し、室内からの眺めや歩いた時の風景が変化する演出を狙ったという。住み手のYさんは不動産関係の事業を展開し、自宅で作業する時間も長いため、LDKの一部にワークスペースを設けて庭を望むレイアウトに。仕事中にふと庭に目を向ければ、やさしい緑に癒やされる。庭に面したLDKの大開口からはもちろん、浴室やオフィス、LDKに浮かぶロフト内の和室等家のどこからでも庭の木々を眺められ、景観を味わえるようになっている。

視覚効果を狙って色や素材選びまで吟味

好奇心旺盛で感度が高く、旅行好きなY夫妻。ふたりが自分たちらしくデコレーションを楽しめるようにと、内装はごくシンプルに。柔らかさのあるグレイッシュな色味を空間の基調とした。「最初、白で統一したキッチンを希望していたんです。けれど伊東さんにグレーのほうが汚れも目立たず濃淡で奥行きが生まれるといわれて納得しました」と奥様。その後は設計の経験とセンスを信頼し、全面的にまかせることに。さらに奥さまは、「私がキッチンを作る際にお願いしたのは、十分な収納と研ぎ澄まされた美しさでした」と振り返る。北側の緑を反射するガラス天板を採用しオブジェのように美しいキッチンとなった。外観に関しては、「溝形ガラスによるボックスを外観のアクセントにするため、出来上がりを想像できませんでしたが、伊澤さんが勧めるからには面白くなるだろうと思って」ご主人。その結果エントランスポーチを目隠ししつつ、外部とほどよい距離感のある実験的なデザインが完成。この家の個性のひとつとなった。また、ご主人のオフィスにあるコレクションを展示する収納やライティングも伊澤さんの発案によるもの。「理想を超えた空間です」とYさんも満足そうだ。

特別な時間を生み出すさまざまな仕掛け

夕刻の美しさも格別なY邸のLDK。オーディオ専門誌を飾ったコトもあり、よるは大型スクリーンで映像や音楽を楽しむシアターに変身する。リーン・ロゼのソファ「ブラド」でゆったりとくつろぐ。屋外にはテラスが広がり、まるでアウトドアシアターで観賞しているような気分になれるという。オーディオ機器は極力目立たぬように、家具を造作して視覚的なノイズを徹底して排除。LDKの壁面に設置した階段も、ミニマルなデザインにした。「階段は見えるパーツを最小限にするために、壁内に鉄骨を仕込んでキャンティレバーにしました」と伊澤さん。LDKの隅々にまで非日常のような美しさを生み出す仕掛けがある。

取材・文 間庭 典子

Y邸

設計 テラジマアーキテクツ 施工 テラジマアーキテクツ
所在地 東京都 家族構成 夫婦
延床面積 215.85㎡ 構造・構法 SE構法

この家を建てた工務店

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