2023.03.20

庭や空、山々へと続き、 家族をつなぐ吹き抜け空間

白いキャンバスに描くように自由に楽しく色を重ねる

山々に囲まれた環境を生かす
南に開いたパッシブハウス

山々に囲まれた自然豊かな街並みで山麓の傾斜地の建築地は約270㎡と余裕があり、比較的自由な配置計画が可能だったN邸。そこで南西側の道路に対して角度をつけ、南に正対して建てるプランが採用された。実家と隣接しており、かつ双方の家の間には庭があるため、外部からの視線を気にせずにオープンなLDKとウッドデッキに。庭と一体化する住まいを目指した。「ウッドデッキに出て子供とおやつを食べたり、本を読んだり、椅子を出してくつろいだり…。ときにはそのままうたた寝することもあります。自然豊かなこの場所だからこそ、外の空気を取り込めて、自由気ままに過ごせる家になりました」とNさん。
1階リビング上部に7.45㎡の吹き抜けを設け、南に向いた大開口により、冬場の太陽の光と熱を最大限に確保することに成功。2階ホールにある吹き抜けに接した開放的な書斎からは、山の風景を眺めることができ、その立地が生かされている。また、趣味のアウトドア関連のギアは壁一面に飾ることで収納するなど、空間を有効に生かし、各所に大開口を設けることができた。さらに外観は長い庇で家全体を包むことで真夏の日差しを遮断し、年間を通じて効率よく太陽の光と熱を取り入れている。周囲の景観になじみ、自然のエネルギーを生活に生かすパッシブデザイン住宅となった。

緑も子供もすくすく育つ
自由でクリエイティブな空間

「家を建てる前から観葉植物を育てていましたが、完成して庭ができると、どんどん外で育つ木々に愛着がわいてきて。また新たな趣味が増えました」とNさん。家族でガーデニングを楽しんでいる。室内でも部屋のあらゆる場所にグリーンを置き、水やりの日課は子供たちが当番で行っている。「すべての鉢に忘れずに水やりできるよう、順番をつけたんです」と奥さま。この住まいでは、家族全員で楽しみながら家事に参加するようになったという。書斎から眺める山々の借景や、庭の木々の緑や影がリビングに入り込む風景は、いつも新鮮な驚きや喜びをもたらす。このようにN邸は、すくすく育つ緑や豊かな環境に囲まれている。
インテリアは既成概念にとらわれず、自由に色彩を重ねた。椅子やクッションもあえて不ぞろいに。シンプルでヌケのある空間だからこそ、そんなコーディネートが生き生きと映える。階段横の壁1面にのみグリーンのクロスを張り、吹き抜けには流木のオブジェを照明に…など、さまざまなアイデアで、自分たちならではのスタイルを築いてきた。「家は完成して終わりではなく、どう暮らしていくかが肝心だと思うので。暮らしながら家を育てていこうと、今も試行錯誤していますね」と、Nさんは笑う。

快適な空間づくりに並走する
頼りになる存在が工務店

そんなクリエイティブな空間づくりの伴走者が木造SE構法の実績があるタイコーアーキテクト。「全面的に信頼していただけました」と設計担当の前田 良さん。「希望を伝えても、それが家全体の雰囲気にそぐわないときには『それはやめておきましょう』と即、前田さんが止めてくれました」と奥さまは振り返る。「選んだ土地と建てたい家のイメージを擦り合わせて、ちょうどいいところを狙う。つくり上げたい空間にまっしぐらにならず、前田さんのアドバイスを聞きながら周辺環境に合わせていくことで良い家づくりができました」とNさんはうれしそうに語ってくれた。

取材・文/間庭典子

N邸
設計施工 タイコーアーキテクト 所在地 大阪府南河内郡
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 290.58㎡
延床面積 109.06㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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