2023.06.26

ギャラリー空間に心躍るヴィンテージ家具が映える住まい

飴色の家具や骨董になじむ柱のないギャラリー空間

ギャラリー感覚で遊ぶための
各方向を見渡せる103㎡の大空間

柱や壁が視界を一切遮ることなく、端から端まで見通せる103㎡のLDKは圧巻。木造SE構法の限界に挑戦した平屋と言っても過言ではない。住み手は70代のYさんとその奥さま。ご近所が転居したことを機に、その土地に新築を決意した。「想定以上に広かったのですが…」と奥さまは笑う。
広場のように広いLDKは、ヴィンテージの家具や世界各国の食器や雑貨を自由に飾るギャラリー空間。旅好きな夫妻が各地で選んだ思い出の品や骨董は、それぞれ国も時代も異なるが、奥さまのコーディネートにより、見事にこの空間に調和。飴色のヴィンテージ家具に合わせて、天井と床は少し赤みのあるチェリー材を選んだ。経年変化によりさらに艶を増し、風合いが出ることを想定。玄関も広めに取り、季節や気分に合わせてアートや花を飾る空間に。膨大なコレクションを収納するバックヤードのような納戸も奥に配した。Y邸は移り行く季節を愛でて、日常を遊ぶ家でもある。

視点やヌケを計算した
どこにいてもくつろげる場に

ワンフロアで生活できる平屋だが、小上がりの和室、一段低くしたライブラリー、窓際の縁側など、LDKを緩やかに拡張して、視点が変わる居場所をつくった。「ダイニング、和室、寝室のどの場所からも庭を眺めることができますが、階段のような形の間取りにすることで、互いの視線がぶつからないようにしています」と設計を担当したビルド・ワークスの河嶋一志さん。玄関との境は壁にせずに造作の書棚で仕切り、玄関ホールからも奥の天井が見えるようにした。飾り棚は目線の高さに隙間のあるデザイン。廊下を進みながら、この棚を介してLDKの気配とヌケを感じる仕掛けで、より広く感じられる視覚効果も計算された。
また、休日はクラフトが趣味というYさんのアトリエとなるライブラリーは、天井からも採光。「このトップライトは構造部分を避けて、四角錐に近い台形にカットしています」と河嶋さん。諸条件に柔軟に対応できるデザイン力を誇るビルド・ワークスでは、高い技術力を誇る職人とも連携しながら数々の難題をクリアしている。

将来も想定した設計で
住み継がれる家に仕上げる

まだまだ現役でアクティブシニアの代表のような夫妻。敷地内でも常に自然を感じられるよう、野山のような造園デザインを&andの安堵礼多さんに依頼し、家庭菜園も始めた。しかし70代で建てた家だからこそ、将来を見据え、高齢者とそれをサポートする側の双方にとって優しい設計を考えた。例えば、玄関などの段差はできるだけ少なくし、車いすでも自在に動けるほど動線を広くとった。また、介助が必要になっても動きやすく広いトイレをゲスト用のトイレとは別に、脱衣所内に設けている。「浴室から脱衣所、クローゼット、寝室まで動線をつなげてほしいとお願いしました」と奥さま。LDKから縁側を通じて寝室にそのまま行くことができる。さらに将来的に誰かが住み継ぐことも視野に入れている。どの場所に座ってもくつろげるLDKはまるでカフェのよう。キッチンも開放的でバックヤードもあり、すぐにでも店舗になる間取りだ。
耐震性に優れ柔軟な間取りに対応できるSE構法が、さまざまな未来予想図を描くことのできる住まいを実現した。

取材・文/間庭典子

Y邸
設計施工 ビルド・ワークス 所在地 京都市左京区
家族構成 夫婦 敷地面積 809.60㎡
延床面積 215.00㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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