2022.06.20

野遊びを日常にするウッドデッキリビング

風や木の香りが通り抜ける8の字に回遊する空間

家族全員で壁を塗り、仕上げた
手づくり感覚のアウトドアハウス

K邸は家族全員でつくり上げた、日常でアウトドアを楽しむための家。入居前、夫妻と小学生の息子さんと幼稚園生の娘さんの4人で汗を流して、キッチンや洗面、子供室などの壁一面を手作業で塗ったのだそう。「子供たちにとって初めての経験だったので、当然、塗りムラも目立ちますが、それも味。家族全員でつくり上げたという思い出をつくりたかったのです」とKさんは語る。そんな家全体が作品であり、プレーグランドであるような遊び心にあふれている。
なんといっても特徴的なのは1階LDKに連続するように外部にせり出したウッドデッキ。樹木に囲まれて心地よく、目の前が生産緑地などの平地であるため視界が開ける。中央で焚火もできる六角形のアウトドアテーブルを置き、食事をここで楽しむことも多いという。いわばKさんファミリーのプライベートなキャンプ場。夏はタープで日差しをカットしてビアガーデン代わりにしたり、子供たちがプールで遊んだり、さまざまな野遊びの場となる。都内の住宅地とは思えないほど自然を身近に感じるアウトドアリビングである。

オリジナルな階段や棚、窓枠で
唯一無二のリビング空間が完成

ダイニングもとてもユニークなつくり。キッチンとの間にあえて段差を設け、リビング側の床がベンチになる掘りごたつのような設計にした。「ダイニングに座ると、ウッドデッキや外の景観が見渡せる高さに設計しました」と設計を担当したミューズの家の藤本卓也さんは語る。ミューズの家は、信頼できる職人と密に連携して、住まいの機能性からコストバランスまで考慮したうえで、オリジナルの空間づくりを目指している。
このK邸では階段周りにはカウンター棚を造作。キッチン近くは棚、階段まわりはデスクやベンチ、リビングを飛び出しウッドデッキまで一続きにつなげ、1段目はステップで調節して、階段の一部とした。「設計からの多様な要望にも、細部まで丁寧に匠の技で応えてくれる、頼りになる施工チームです」と藤本さんも胸をはる。
真鍮の素材感に引かれると語る奥さま。そこでダイニングの照明のトーンに合わせて階段の手すりやキッチンの窓枠、思い出の写真を並べる飾り棚などを真鍮で造作した。その鈍くやさしい輝きが、クラフト感があるK邸にマッチしている。

リゾートコテージでの安らぎと
開放感を自宅で毎日味わう

くつろぎと癒やしを求めるとリゾートにたどりつく──。そう気づいたミューズの家のモットーは、リゾート地での感動するような開放感や美しい眺め、わくわくする仕掛けを住まいに取り入れること。K邸の場合、それは自然に囲まれたアウトドアライフだった。階段まわりの開口は北方面の2面に開き、K邸の裏庭と隣家の借景が重なるように設計。庭は、西東京市の蓮見ガーデンと協力しプロの意見を尊重しながらデザイン。どこに植物を配すのが室内から見ていちばんドラマチックか、家具はどう配置すれば景観を生かせるか、など双方の知見を生かした家造りが行われた。
ハンドメードならではのぬくもりに包まれ、自然との暮らしを大切にするK邸。なかなか旅に行けない状況になったニューノーマルな生活の今、取り入れたくなるヒントがたくさんある。キャンプで味わう高揚感、焚火の炎を囲みながら無になる時間など、アウトドアを日常にする贅沢を教えてくれる住まいである。

取材・文/間庭典子

K邸
設計施工 ミューズの家 所在地 東京都立川市
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 162.97㎡
延床面積 113.44㎡ 構法 木造SE構法

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