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interview

子育てと暮らしinterview2020.09.28

ヨンア

子どもの成長を見守りながら、家族の大切な時間を重ねて行く「家」。第9回は、ファッションモデルとして多方面で活躍するヨンアさん。アートに囲まれた美しい自宅には、理想の暮らしが隠されています。

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いつでも家族の気配を感じられる、フラットな空間。

その昔、外国人向けの高級住宅があったという都心の小高い丘の上。石垣と森に囲まれた静かで荘厳なマンションが、ファッションモデルとして活躍するヨンアさんが家族とともに暮らす場所。広い玄関で出迎えてくれたヨンアさんは、すらりと伸びた背に健康的な笑顔、軽やかに揺れるドレスをまとい美しさが際立っている。韓国出身で、日本でモデルとしてデビューをした彼女は、飾らない自然美で長年にわたり多くのファンを惹き付けている。

流れるような後ろ姿を追いかけて、リビングまでの長い回廊を歩けば、壁側に飾られたいくつものアートが目に飛び込んでくる。たどり着いたリビングもまた、静謐なギャラリーのような空間だ。写真や絵画、骨董や書にいたるまで、あらゆるアートが点在している。聞けば、アートに目がないというご主人のコレクションだという。そんな芸術作品に囲まれたリビングの中央に、大きなソファが鎮座する。北欧デザインを代表するルイス・ポールセンのペンダントライトがふたつ、シンプルな空間に華を添えている。南側は大きな窓が広がる開口部で、外のベランダ一面には葉が茂る植栽がほどこされ、室内とグリーンのコントラストも美しい。さりげなくソファに背をもたれるヨンアさん、その姿に上質なくつろぎの時間を想像せざるを得ない。

「アートは主人の趣味ですが、私自身が好きなものも飾っています。時々作品を入れ替えて、部屋の雰囲気を変えたりもしています。子どもが生まれてからは大きなものは置けないから、飾り方も変わったかな」
ソファに座るヨンアさんは、おだやかで優しい笑顔を振りまく。それは彼女が持つもうひとつのママの顔。その視線の先には、3歳の息子さんのプレイコーナーがあって、息子さんが大好きだというキャラクターのおもちゃや、恐竜のフィギュア、クレヨン、絵本や画用紙でいっぱいだ。手作りのクッションフロアで区切られたキッズコーナーで、今朝も息子さんにせがまれて、昆虫の絵をたくさん描いたのだと笑って見せてくれた。

「子どもが生まれて、生活のすべてが変わりました。以前は外食も多かったけれど、いまは毎日料理をしています。週末は家族で一緒の時間を過ごしていて、公園やギャラリーなどにも出かけています。それから覚えたてのママチャリで、息子とふたり、街を走っていますよ! いまは家族との時間がなにより大事。最近は、私の仕事に息子が付き合ってくれることもあり、それが何だか微笑ましいんです」。

モデル活動やテレビ出演に加えて、この数年はファッションブランド「COEL」のクリエイティブディレクターとしても活躍するヨンアさん。長年ファッションの世界に身を置く彼女だからこそ、ウェアラブルでデザイン感度の高いアイテムがファンを惹き付けている。最近では、自身のYouTubeも話題をよんでいる。どの姿もナチュラルで健康的な彼女を映し出しているのは、なによりこの生活を彼女自身が楽しんでいるからに他ならない。いつだって理解を示してくれるご主人、覚えたての言葉で会話する息子さんとの愛しい時間•••。いまヨンアさんの心を満たすのは、大切な家族であり、この家、この街で過ごす時間なのかもしれない。

現在暮らす街は、都心でありながら公園や緑地も多く点在する、落ち着いた人気のエリア。ヨンアさんが16年前に日本に来たとき、すぐに大好きになったという場所だ。
「この街には、歩くだけできもちのいい空気があります。それから安心感も。日本に来たばかりの時、いつか絶対に住みたいと思っていました。11年前にその夢がかなってこの街に引っ越しましたが、結婚してからも、このエリアに住み続けています。このマンションは主人が選んだんですが、この丘陵の地盤の強さも選ぶキッカケになったと思います」。

結婚した当初は、同じマンションの最上階、屋上に行くことのできる階段付きの部屋に住んでいたという。子どもが生まれたとき、よりフラットな間取りが良いと探していたところ、偶然に空いたという同じマンションの階下の部屋へと引っ越しをした。
「以前暮らしていた最上階の部屋も素敵だったけれど、各部屋がドアで区切られていたんです。どこにいても子どもに目が届くような、フラットな空間が理想的だったんです。キッチンで料理をしながら、リビングで子どもが遊んでいる姿を見られるこの部屋の環境が最高です」

フラットな間取りに加えて、収納の多さも魅力的だったという。膨大なシューズを収納できるシューズクローゼット、食器のコレクションは余裕を持たせてキッチン収納に納めることができるほど。さらに、洋服やファッションアイテムを大量に持つヨンアさんが満足できるクローゼットルームなど。夫婦ともにモノへの愛情が深く、大切なモノをたくさん持っているのに、暮らす部屋はモノに溢れておらずクリーンで美しく、整然としている。
「主人も私もとにかく綺麗好きなんです。子どものものはキッズスペースのみと決めているし、就寝前には必ず息子と一緒におもちゃや本の片付けをしています。子どもがいるとなかなか大変ですが、暮らす場所は整っていた方が、皆が気持ちいいですからね」。

ソウル生まれのヨンアさんは、韓国でも日本でもこれまでずっとマンション住まい。子どもが成長をしてきたいま、庭付きの戸建てにも興味があるという。
「家の中を縦横無尽に走り回る息子だから、部屋から庭に出られるような家にも憧れますね。でも、主人と共通の考えは“大きな家はいらない”ということ。私たちは家が大きくなくてもいいから、お互いに好きなものに囲まれた空間に住みたいと思っています。私の場合はファッション。そして主人はアート。将来的には“ふたり”が好きなものに囲まれた家に住もうと、話をしています」。

大好きな息子さんとの濃密な時間を味わいながらも、夫婦という長い時間軸をやさしく包み込んでいくのが「家」であることを、ヨンアさんは感じている。大切なものだけを残していく暮らし方こそ、ヨンアさん自身に沸き出すような自然美を与えているのかもしれない。

Profile

1985年、韓国ソウル生まれ。ファッションモデル。2004年から日本での活動を開始。数々の女性ファッション誌の表紙を飾るほか、テレビCMなどにも数多く登場。2018年より、ファッションブランド「COEL(コエル)」のクリエイティブディレクターに就任。現在、YouTubeにて「ヨンアTV」を配信中。1児の母。