工場見学レポート2021.04.27
森から生まれる、木の住まい。vol.1
代々木公園にあるイタリアンレストラン「LIFE」のオーナーシェフ、相場正一郎さん。平日は都内で働き、週末は栃木県の那須高原にある別宅で過ごしています。那須の家は、木造の一軒家。木の家の暮らしの温もりを知っている相場さん、妻の千恵さん、8歳の娘の葉和ちゃんは、木の家の材料がどのようにつくられるのかを見学しに出かけました。目的地は、岡山県にある院庄林業です。
木を育てることからはじまる、家づくり。
相場さん一家がやってきたのは、岡山県津山市。岡山県はヒノキの名産地として知られており、丸太のヒノキの生産量は日本一を誇ります。自然豊かなこの地にある院庄林業では、SE構法の素材である集成材をはじめ、ヒノキの無垢材の加工を行っています。
製材のみならず、木々の伐採や植林も自社で行う院庄林業。山での仕事を見るために、工場のある津山市内から約2時間車を走らせました。雨あがりの山は、清々しい空気に包まれています。
自然が大好きな葉和ちゃん、思わず足取りも軽くなります。木が生い茂る山の景色を、相場さんのカメラを借りて撮影していました。
ダイナミックな伐採の現場。
まずは、木の伐採現場を見学します。伐採には車体の前方にクレーンがついた森林伐採車「ハーヴェスター」を使います。巧妙な操縦で、クレーンを使って木を切り倒していく様子は迫力満点。
木の伐採は、材料を確保するために必要なだけではなく、美しい森を維持するためにも、大切なことなのです。適切なペースで木を切ることで、短い木にも日光が当たり大きく育つことができる。自然豊かな山を守るためにも、定期的に伐採をしています。
木を倒した後は、さらに木の運搬や枝の刈り落とし、丸太のカットまでが次々に行われます。匠の技に、相場さんたちの目は釘付けになっていました。
車が入れない斜面では、院庄林業伐採チームのスペシャリスト、河野さんがチェーンソーを使って木を伐採します。
実は、相場さんも伐採経験があるそうです。
「私も那須の家で、チェーンソーを使って伐採に挑戦したことがあります。汗だくになるほどすごく大変でした。なかなか倒れないし、周りの木に引っかかってしまうことも。さすがプロですね」
手際良く木を切り倒していく様子に、感心しています。
次の世代のために、木を植える。
院庄林業では、木を切ったあとは植林もしています。木を使う産業として、次世代に自然を残すための責任あるアクションです。
木は一度植えたら、自然と大きくなるわけではなく、1年後、3年後、5年後と植え替えをします。手間ひまと時間をかけることによってスギは30年後、ヒノキは60年後にやっと、材料として使えるくらい大きな木に育っていくのです。
「こんな小さな木が、60年経ったらあんなに大きくなるんだ」
植樹体験をした葉和ちゃんは、自分の手で植えたヒノキの苗が大きく育つ未来を想像しています。
次の世代に木を受け継いでいくために、伐採と植林をひとつの大きなサイクルとして考え、自然と真摯に向き合っている院庄林業。その現場を目の当たりにした相場さん一家は、木に対してさらに親近感を持てたようです。
「週末は木の家に住んでいる私たちですが、木の伐採の様子まで想像することはありませんでした。毎日見ている木も、こんな山からやってきたんだなあと、見る目が変わりました」
と千恵さんが話してくれました。
未来の山は、どんな姿になっているんだろう。今よりも豊かな自然になるように、環境にも思いを馳せる機会になったようです。