住まいにも暮らしにも棚卸しが必要 Vol.1
◎リフォームは物の寿命が基準
リフォームというと、何をイメージするでしょうか?ほとんどの人が、「古くなって傷んだり汚れたりした部分を直す」ことをイメージするでしょう。実際に、キッチンや浴室、トイレなど汚れやすく傷みやすい部分のリフォームが多いようです。戸建住宅の場合は、屋根や外壁の塗り替え・張り替えもあります。一般的にリフォームは「古くなった」タイミングに行うため、だいたい築20~30年以上の住宅が対象になります。リフォームは「物の寿命」が基準になっているので、リフォームをする・しないの判断はとても簡単。見れば分かるからです。寿命がきたら新しいものに交換することは必要ですが、ここでは家を単なる「物」として見るのではなく、暮らしの「場」として考えたいと思います。
◎暮らしの「場」の寿命を考える
家は、人が暮らす場所であり、社会における家族の居場所といえます。そして、その家の中にもまた家族それぞれの居場所があります。夫の居場所、妻の居場 所、夫婦の居場所、親子の居場所、祖父母の居場所、兄弟・姉妹の居場所、赤ちゃんの居場所、ワンちゃんネコちゃんの居場所・・・etc。さらに友人がきたときの居場所や、読書するときの居場所、一人になりたいときの居場所など、行動や習慣ごとにも細分化されます。そう、家は居場所の集合体。家を手に入れるときには、どんな居場所がほしいか、という視点で考えるとよいと思います。そしてその居場所は、家族が歳をとったり、生活リズムが変わったり、趣味や関心事、習い事が増えたり、さまざまな変化(成長)によって、居心地がよくなったり、悪くなったりするもの。その時々で楽しいと思うこと、快適に感じることも変わりますから、物の寿命と比べると、居場所の寿命は短いかもしれません。反対に最高の居場所ができれば、それは一生もの。物の寿命とは比べものになりません。
◎暮らし方を見直すタイミング
家を建てたり、買ったり、リフォームしたりする機会は、人生にそう何度も訪れないので、家族の希望を膨らませるだけではなく、家族関係や暮らし方を見直す よい機会と考えます。夫婦、親子、家族は、どこでどのくらいどんな会話をするのか。食事や就寝時間の違いによるストレスはないか。今の家の最も心地よい居場所はどこか。反対に今の家で嫌いなところはないか。家族の生活習慣に不満はないか。兄弟・姉妹のコミュニケーションはどうか。将来をどう考えているか…など、暮らしと家族の「棚卸し」をおすすめします。普段はなかなかできないことでも、「住まいを手に入れる」という共通のテーマがあれば、話がしやすいと思います。住まいと向き合うことは、家族関係と向き合うこと。物の寿命ではなく、家族の暮らし方に変化を感じたときこそ、リフォームを検討したいものです。
大阪で暮らすKさん一家は、夫婦と姉妹の4人家族。築15年を過ぎ、収納が足りなくなったことをきっかけにリフォームすることになりました。
次回は、Kさん一家の「棚卸し」の様子を紹介します。
文・木藤阿由子(建築知識ビルダーズ編集長)
撮影・渡辺慎一
※文中の本調査は、300万円以上のリフォーム3年以内実施者を対象としたものです。
※出典:株式会社リクルート住まいカンパニー・2014年12月1日発表資料から抜粋