光庭を囲むアートギャラリーを備えたセカンドハウス


建物中央の光庭をコの字型に囲むギャラリー。一角に佇む猫の像は、彫刻家・三宅一樹さんが台座を含めて一本造で制作した作品「聖唐櫃」。

ギャラリーを案内する建て主のKさん(右)。洗練された切妻屋根の空間を、ベルナール・シャロワによる絵画の柔らかな色合いが心地よく彩る。

SE構法により奥行き約10m、高さ約4.4mの無柱の空間を実現。中庭と天窓から差す自然光のなかで名画を鑑賞できる。家に客人を招いてアートでもてなしたいという思いを込め、くつろげる居場所を目指した。ポール・ケアホルムによるデイベッド「PK80」を中央に配置。スピーカー「Beosound 2」φ200×H431mm ¥520,000(バング&オルフセンジャパン)

ギャラリーはナチュラルな木と白い漆喰風自然塗料で仕上げたニュートラルな空間。一方、光庭の一面の壁にはアンティークレンガを張り、歴史ある展示作品とバランスを取るアクセントとした。

光庭と天窓から取り込んだ自然光を緻密にコントロールすることで、穏やかな反射光で鑑賞できる光環境をつくり出した。展示内容により照度や光色を変えられる天井のスポットライトと、壁の間接照明を組み合わせた照明計画にもこだわっている。

玄関からギャラリーを見る。木の壁で囲んだ箱は展示準備用のバックヤード。空間の重心を落ち着かせるため、天井に届かせず、ぽんと置くように配置した。ポール・ケアホルムがデザインしたラウンジチェア「PK4」、ルイス・ポールセンのフロアランプ「PH 3½-2½ フロア」など、北欧の名作家具が格調を添える。

無垢木材を使ったパネルを張り、トップライトを3カ所に設けた光に満ちた天井。

1.玄関エリア。来訪者を絵画が出迎えると同時に地窓から中庭の存在が垣間見える、ギャラリーの魅力を凝縮して表したアプローチ。天井高は抑えてあり、ギャラリーへ歩を進めると一転、2層分の高さのある開放的な大空間が広がる。/2.季節や天候、時間帯によって変わる光。見飽きることのない情景を味わえる。

住居棟1階のLDK。彫刻家・三宅一樹さんの作品「軍荼利」を箱から出し吟味していた最中。神社から譲り受けた御神木から一木造で彫り出されたという仏像は圧巻。ダイニングに選んだ家具は、アルネ・ヤコブセンが手掛けた「エッグテーブル」と「アリンコチェア」。階段を上った2階は寝室と収蔵庫になっている。

リビングでは、ピエロ・リッソーニによる「リッソーニソファ」、アルネ・ヤコブセンによる「AJトロリー」と「AJフロアランプ」を使用。

洗面・トイレスペース。ギャラリーと住居の中間地点に配置。来訪者も住み手も共用する。

この家ではキッチンは簡易的に設え、ギャラリーに重心を置いて設計を行った。
コンセプトは「現代の蔵」。アートの力で人々を楽しませるために——
真っ白な切妻屋根の建物が2棟、シンメトリーに連なっている。住まいの原型たる「家型」であり、日本伝統の「蔵」を現代的に再解釈した形でもあるという、象徴的な姿。玄関に向かって左の棟にギャラリー、右の棟に住居と倉庫があり、中央に光庭を擁する一軒家だ。
このアイコニックな家の建て主は、医師のKさん。アート、とりわけ絵画が人の心に与える影響に注目し、開業時から医院の待合室に本物の名画を飾り続けてきた。「本来、医療は『抜苦与楽』。患者から苦痛を取り除くこと(抜苦)と、安らぎや幸せを与えること(与楽)が一体なんです。私は抜苦に偏重せず、与楽の価値を尊んで診療したいという思いでやってきました」とKさん。芸術の力を借り、医学を超えた医療を行うことを目指している。
Kさんは古くなった実家を建て替えセカンドハウスとすると同時に、本格的なギャラリーを構えることを構想した。たまたま千葉県にあるライフスタイルショップ「TIMBER YARD」併設のモデルハウス「gallery」と出合い、SE構法ならではの大空間とスタイリッシュな北欧スタイルにピンときて、依頼を決めたのだという。
コンセプトは「現代の蔵」。美術品や骨董品のコレクションを安全に収蔵する耐震性を確保しつつ、展示を堪能するための場をつくり上げた。完成したのは、切妻屋根に開いたトップライトから明るい光が差し込む清新な空間。設計担当のTIMBER YARDの香取昂希さんは「大空間でも間延びしない居心地のよい構成、人の心に安らぎをもたらす『与楽』を体現する建材選び、大切な作品を守る『現代の蔵』としての木繊維断熱材ECOボードを用いた断熱・防火・透湿性能の確保、作品鑑賞のために理想的な光環境の設計など、あらゆる面でKさんの思いに応えるべく尽力しました」と語る。
「思いが叶い、絵が生きる空間が完成しました」と顔をほころばせるKさん。今後、コレクションの展示替えや音楽会などのイベント開催も計画中。ギャラリーを活用して患者ら招待客を喜ばせるのが楽しみだそう。
「趣味などの住み手の思いを詰め込む家づくりには、大きな可能性があるのではないでしょうか。Kさんのギャラリー併用住宅のように、自分だけの家の形を探るお手伝いをしたいです」と語る香取さん。生活のための機能が備わっているのはもちろんのこと、家は、自他にまだ見ぬ大きな喜びをもたらす装置となりえる。
取材・文/速水真理
K邸
| 設計施工 | TIMBER YARD | 所在地 | 千葉県千葉市 |
|---|---|---|---|
| 家族構成 | 大人1人 | 敷地面積 | 198.18㎡ |
| 延床面積 | 127.52㎡ | 構法 | 木造SE構法 |







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