2026.10.26

光庭を囲むアートギャラリーを備えたセカンドハウス

コンセプトは「現代の蔵」。アートの力で人々を楽しませるために——

真っ白な切妻屋根の建物が2棟、シンメトリーに連なっている。住まいの原型たる「家型」であり、日本伝統の「蔵」を現代的に再解釈した形でもあるという、象徴的な姿。玄関に向かって左の棟にギャラリー、右の棟に住居と倉庫があり、中央に光庭を擁する一軒家だ。
 
 
このアイコニックな家の建て主は、医師のKさん。アート、とりわけ絵画が人の心に与える影響に注目し、開業時から医院の待合室に本物の名画を飾り続けてきた。「本来、医療は『抜苦与楽』。患者から苦痛を取り除くこと(抜苦)と、安らぎや幸せを与えること(与楽)が一体なんです。私は抜苦に偏重せず、与楽の価値を尊んで診療したいという思いでやってきました」とKさん。芸術の力を借り、医学を超えた医療を行うことを目指している。
 
 
Kさんは古くなった実家を建て替えセカンドハウスとすると同時に、本格的なギャラリーを構えることを構想した。たまたま千葉県にあるライフスタイルショップ「TIMBER YARD」併設のモデルハウス「gallery」と出合い、SE構法ならではの大空間とスタイリッシュな北欧スタイルにピンときて、依頼を決めたのだという。
 
 
コンセプトは「現代の蔵」。美術品や骨董品のコレクションを安全に収蔵する耐震性を確保しつつ、展示を堪能するための場をつくり上げた。完成したのは、切妻屋根に開いたトップライトから明るい光が差し込む清新な空間。設計担当のTIMBER YARDの香取昂希さんは「大空間でも間延びしない居心地のよい構成、人の心に安らぎをもたらす『与楽』を体現する建材選び、大切な作品を守る『現代の蔵』としての木繊維断熱材ECOボードを用いた断熱・防火・透湿性能の確保、作品鑑賞のために理想的な光環境の設計など、あらゆる面でKさんの思いに応えるべく尽力しました」と語る。
 
 
「思いが叶い、絵が生きる空間が完成しました」と顔をほころばせるKさん。今後、コレクションの展示替えや音楽会などのイベント開催も計画中。ギャラリーを活用して患者ら招待客を喜ばせるのが楽しみだそう。
 
 
「趣味などの住み手の思いを詰め込む家づくりには、大きな可能性があるのではないでしょうか。Kさんのギャラリー併用住宅のように、自分だけの家の形を探るお手伝いをしたいです」と語る香取さん。生活のための機能が備わっているのはもちろんのこと、家は、自他にまだ見ぬ大きな喜びをもたらす装置となりえる。
 
 
取材・文/速水真理

K邸
設計施工 TIMBER YARD 所在地 千葉県千葉市
家族構成 大人1人 敷地面積 198.18㎡
延床面積 127.52㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

MLWELCOMEの新着記事

MLWELCOME

MLWELCOMEは『モダンリビング』誌と「重量木骨の家」とのコラボレーションで特別編集されたムック本として2015年10月に発行されました。厳選された木造住宅の実例をウェブサイトでもご覧ください。