箱形の書棚と吹き抜けが壮観な大空間


天井高約5.4mの迫力のある吹き抜けには、見下ろしても美しいラウンド形や四角形など幾何学的なテーブルを合わせた。自然光がLDK全体に降り注ぐ。

外部とボーダーレスなインナーテラスは現代の縁側のような役割を果たす。ラウンジチェアでくつろいでいると水盤に光が反射し庭にいるような感覚に

吹き抜けの明るさとは対照的に、キッチンエリアは黒やダークブラウンでまとめてシックな設えに。広々としたペニンシュラ型のキッチンに、さまざまな素材を組み合わせ、グラデーションで奥行きや変化を出している。照明の真鍮の質感も好相性。

ホームパーティーでは料理やワインをキッチンからそのままリビングやテラスに運べて、スマートにおもてなしができる。

壁面の書棚は、猫にとっても格好の遊び場。表から見える棚以外の部分は、2階の寝室側の収納となっている。寝室はガラスを挟んで吹き抜けに面し、家全体がシームレスにつながっている。

リビングとアウトドアリビングの間には水盤があり、両側から異なる景色を楽しめる。ガーデンファニチャーはデドンの「ムウ」シリーズを採用した。

住宅地に立つT邸だが、ガレージや壁によりプライバシーは守られている。星を眺めたり、友人と語り合うなど、テラスは第二のリビングとして大活躍。
どこでも人の気配を感じられるボーダーレスな家族の場
光と風を室内にもたらし
感覚を刺激するせせらぎテラス
室内とテラスがワンフロアでつながるように、その境界線があいまいに造られたT邸。例えばテラスと室内に同色同サイズのタイルを採用することで、リビング内部からテラスが始まるような錯覚を狙ったり、パーゴラのような庇も外部と内部の両方に設けている。
「ルーバー状の庇は、冬は太陽の光を取り込み、夏は木陰のような涼しげな影を作ってくれます」と全体設計を担当した星野建築事務所の星野貴行さんは解説。テラスには水盤があり、光を反射してきらめく。せせらぎの音は部屋の中にいても聞こえ、感覚を心地よく刺激する装置となっている。
「最初の打ち合わせで『光』と『緑』というキーワードがTさんご夫妻から出たので、緑や風、光と影など、自然や時間の流れを感じられる空間に
ライブラリーのような書棚が
LDK全体を包み込む
T邸のもう一つの魅力がリビングの吹き抜けに面した壁一面の書棚。「図書館のような大きな書棚は要望の一つでした。実用的な収納としてはもちろん、グリーンや雑貨を飾るギャラリーのような役目も果たします」と佐藤さん。手の届かない上部は2階の寝室側から扉が開き、書棚の各スペースに物を置いたり動かしたりできる。入れ替えが簡単なので、毎日水やりが必要なグリーンなども気軽に飾ることができる。
動線の多彩さもT邸の特長で、LDKに併設された和室にはLDKを通らず玄関からそのまま入ることもできる。プライベートとパブリック空間を分けつつ、各部屋にアクセスしやすい動線にした。
障子一枚を挟んですべての部屋がつながる、伝統的な日本家屋を思わせる発想だ。家全体がボーダーレスにつながり、用途に合わせて変容する自由度の高い間取りとなった。
内装はシンプルな木や白に
黒や重厚な真鍮をプラス
室内は木の質感や白い壁を生かし、温かみのある内装を基調にしている。ところどころで黒のスチールや真鍮のような重みのあるマットゴールドをプラスして引き締めた。「真鍮の素材感が好きなので表札、ライトなどインテリアに取り入れました」と奥さま。真鍮の脚が気に入っているという、リビングに置かれたラウンド形のテーブルは、インターネットで見つけたのだそう。空間に対するサイズ感などに不安はあったが、コンセプトにブレがなかったので見事に調和した。
また、グリッド構成の書棚や薄いプレートの軽やかな階段を付けることで、リズミカルな空間に。造作家具やキッチンの素材選びなど、内装は松崎友和さんが担当。「キッチンの天板には熱に強いセラミックストーンを採用し、壁面や収納は光沢のある鏡面塗装にするなど、同じ黒でも質感を変えて、色味を抑えながらも華やかさを演出しました」と松崎さん。ラグジュアリーと知的な落ち着きが同居した、上質な空間が完成した。
取材・文/間庭典子
T邸
設計施工 | 星野建築事務所 | 所在地 | 新潟県新潟市 |
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家族構成 | 夫婦+子供2人+猫 | 敷地面積 | 308.99m㎡ |
延床面積 | 244.11㎡ | 構法 | 木造SE構法 |