暖炉がある憧れの住宅を。導入のメリットデメリットと活用方法を解説

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寒い季節が来ると、暖房器具の事を考えなければいけません。そうはいっても現在の住宅では、ほぼ全ての家にエアコンがありますので、夏は冷房、冬は暖房とワンタッチで快適環境を切り替えることが出来ます。他にも暖房器具は、電気ヒーターやガスヒーターなどもあります。そしてその中でも多くの人が憧れていながらも、なかなか手が出せないでいるのが「暖炉」ではないでしょうか。今回は、その暖炉について掘り下げてみましょう。憧れの暖炉生活を、身近に感じるようになるかもしれません。
暖炉の定義と魅力
では「暖炉」とは、どういったものを言うのか、まずは暖炉の定義から見てみましょう。
その起源は12世紀のヨーロッパという事ですが、二階建ての家が建つようになったことで、天井高が低くなり室内で火を焚くことによる危険性が大きくなったことから、不燃性の高いレンガや石で炉を作り、煙突と組み合わせて暖炉を完成させたという事が起源のようです。つまり、暖炉の定義としては不燃材で炉を作り、中に薪や石炭を入れて火をおこし、家の中の人が暖を取ることが出来る暖房器具という事になります。暖炉の火によってどのように家の中が温まるかというと、炎の輻射熱(放射熱)によって熱が伝わり、家全体が温まる仕組みです。また、人は揺れる炎を見ることで癒し効果を得ることが出来るそうですが、それは「1/fゆらぎ(エフぶんのいちゆらぎ)」と呼ばれます。「1/f」は、波のせせらぎや緩やかな風の音など、自然界のさまざまなものにあるそうで、リラックス効果があると言われています。炎も、その揺らぎにより見る人がリラックスできるという訳ですね。
暖炉の種類は様々
昔は薪を使う事が主流の暖炉でしたが、最近は様々な方法で部屋を暖めることが出来ます。どのようなものがあるのか見てみましょう。
今でも主力の薪暖炉
一番一般的な材料は、薪です。薪には広葉樹と針葉樹がありますが、火を起こす材料として使いやすいのは、ヤニの量が少ない広葉樹でしょう。薪はホームセンターやネットショップで買う事も出来ますし、解体業者さんや大工さんに直接掛け合えば無料でもらえることもあるようです。また、同じ薪を使う暖炉でも炉の材料がレンガや石ではなく、鋼板で作るものもあり、こちらは暖炉の進化版のようなもので薪ストーブと呼ばれます。
近代化したガス暖炉
もう一つ、形状は暖炉と似ていますが、燃料はガスというものがあります。厳密にいうと、暖炉と言う定義からは外れてしまいますが、直火を見ることが出来、火災などの心配もなく、メンテナンスも楽だという事、スイッチ一つですぐに暖かくなるというメリットもあり、最近人気が出てきているタイプになります。
最近話題? バイオエタノール暖炉
こちらも新しいタイプの暖炉ですが、燃料はバイオエタノールです。その内容はと言うとトウモロコシやサトウキビなど植物由来の資源、バイオマスからつくられるアルコールという事になり、薪のように煤も出ませんし、環境にも優しいという事もあり、エコライフにこだわる方に人気のタイプです。また煙突も不要で、メンテナンスも不要なうえに暖房効率も高いというメリットもあります。
暖炉があるメリット
さて暖炉の起源や暖炉の定義やその魅力、最近の暖炉事情についてお伝えしましたが、暖炉のある生活についてのメリットを見てみましょう。
メリット1.インテリアとしてもお洒落
暖かさや炎を見ることのメリットは既にお伝えした通りですが、その他のメリットとしての一つ目は、その見た目のお洒落さではないでしょうか。暖炉自体のフォルムもお洒落なので、火が付いていても消えていても様になります。暖炉を設置するのはリビングが多いでしょうから、その家のインテリアの中心的存在になるでしょう。また、暖炉の上には飾り棚のように使えるスペースがありますので、海外の映画や雑誌などを参考にすれば、お洒落に小物を飾れるのではないでしょうか。
メリット2.料理が出来る
皆さんも直火で調理された料理の美味しさは、キャンプ場やBBQ場などの経験からご存知だと思いますが、暖炉の中の直火でもこれと同じように調理が出来るんです。調理器具を用意する必要がありますが、肉や野菜を焼いたり、鍋でスープを作ったり、串に刺したマシュマロを焼くことも出来ますので、料理からスイーツまでなんでも暖炉で調理できてしまいますね。家族や友人たちと暖炉の火を囲みながら直火で料理を楽しむことが出来ますので、キャンプやBBQを屋外でするのが寒くなる時期にはピッタリでしょう。
メリット3.もしもの時にも使える
燃料を燃やす暖炉を暖房器具として使う場合は、電気やガスなどの公共インフラを使う必要がありませんので、その分の光熱費が掛かりません。薪の費用は必要ですが、工夫することで安く抑えることが出来ることは既にお伝えした通りですね。また、何かのアクシデントで公共インフラが止まってしまった場合でも、暖炉と薪があれば、部屋を明るくすることも出来ますし、部屋を暖めることも出来ます。また、暖炉は先ほどもお伝えした通り、直火を使って料理をすることも出来ますし、水のストックさえあればお湯を沸かして体を洗う事も出来るでしょう。もしもの時にも、暖炉があることで数日から数週間であれば快適に過ごすことが出来そうです。
暖炉があるデメリット
次に、暖炉を取り入れるデメリットを見てみましょう。初めにデメリットや注意するべき点が分かっていると後で「こんなはずではなかった」という事も少なくなりますので、しっかり考えていく必要がありますね。
デメリット1.コストがかかる
まずは設置時にかかる費用です。暖炉は暖炉本体と煙突が必要で、またそれを設置する費用も必要です。初期費用としては、100万円〜と考えておいた方がいいでしょう。ただし、暖炉はこれまでお伝えした通り、ただの暖房器具として以上の利用価値が有るものです。家全体のデザイン性を高めたり、調理に使えたり、炎を見る癒しの時間が与えられることも考えながら、コストバランスを見つつ総合的に判断してみるといいですね。
デメリット2.メンテナンスが必要
薪を使った暖炉では、実際木材を燃やすことになりますので、燃やした際に出る煤が煙突内にたまります。煤が暖炉内や煙突内にたまることで、燃焼効率が悪くなり、暖房効果の低下にもつながり、ひどい時は火災の原因となることもあるのです。そこで、1年に1回程度定期的な煙突内の掃除が必要になります。この作業は家庭で出来なくもないですが、面倒な場合はプロの清掃業者を呼ぶ必要があります。
デメリット3.換気にも注意が必要
暖炉では薪を燃やすことによる煤の他に、一酸化炭素、二酸化炭素も排出されます。日本の昔の住宅では練炭を焚いて暖を取りながら眠ってしまい、一酸化炭素中毒で人が亡くなるという悲しい事故もありました。その点暖炉には煙突がありますので、煙突のダンパーを閉じなければ有害な空気は外へと排出されます。また薪が燃えるために必要となる酸素については、室内の空気から取り込むことも可能ですが、定期的に換気をすることで新鮮な空気を取り入れるようにもしていきたいですね。
暖炉の活用方法を5つ紹介
1.暖炉と薪がインテリアとして空間を演出する
こちらのお宅は京都に建つお宅という事でモダンスタイルの中にも柿渋紙の壁紙を使っていたり、杉板を天井材として採用していたりと、和の雰囲気も感じられます。リビングと外のウッドデッキはフラットに繋がっていてアウトドアリビングとして、リビングの広がりを感じさせる作りとなっています。ウッドデッキにはたくさんの薪が置いてありますが、この積み上げられた薪すらも空間を演出するアイテムになっていますね。また、リビング内の暖炉横にもすぐにくべられるように数本の薪を常備しています。この薪を置く入れ物も、アイアンで円形にデザインされて、とてもお洒落な雰囲気です。暖炉が部屋を存分に暖めてくれるので、リビングの窓を開放しても気持ちよく過ごせそうですね。
2.土間に設置した暖炉はメンテナンスも簡単です。
キッチンの目の前にダイニングテーブルと、その先には暖炉のある土間空間が広がります。リビングルームは、ダイニングキッチンと一室空間ではありますがL字型に配置されているので、領域としては少し別の空間と言う印象を受けます。リビングも家族で過ごす大事な空間ですが、お勤めや学校がある場合に平日は家でゆっくり過ごすことも難しいですよね。そうなってくると、やはり家族が一番集まるのは食事時。ダイニングキッチンに対して暖炉が近くにあることで暖かさを近くに感じることはもちろん、暖炉を使った調理をする際にもキッチンが近いと、とても便利です。また、土間に置いてあることで、多少荒く使ったとしても掃除やメンテナンスもし易いですね。
3.暖炉はムーディーな照明にもなります。
こちらのLDKは、キッチンから一室空間になって一体感のあるつくりになっています。その中心にダイニングテーブルと暖炉が配置されていますが、ダイニングテーブルの配置が動きのあるものになっていて、この一室空間のアクセントとしてリズムを与えています。またこの配置は、暖炉と反対側の壁一面に開けられた開口部からの眺めが、ダイニングテーブルのどの位置に座っても見えるようにもなっているんです。さらにこのLDK空間は間接照明を多用していて、夜には大人の雰囲気たっぷりといったイメージになりますが、その中でも暖炉の火の光がさらにムーディーな印象をより強くさせるアイテムとして使われています。夫婦二人で大人の時間を楽しむのにピッタリの空間ですね。
4.暖炉にハンモックというコンビネーションを楽しむ
寒い時期には、ストーブの前やこたつの中からなかなか出られないという経験は誰でもあると思います。あの背徳感を伴う幸せな時間は、冬だけの楽しみですよね。そして、皆さまご存知でしたでしょうか。そんな時間が暖炉のある生活でも叶えられるのです。こちらの事例では暖炉のある正面に、ハンモックを吊るすためのフックが備え付けられており、お気に入りのハンモックをフックに掛ければ静かに揺れる炎を見ながらリラックスした時間を過ごすことが出来、そのまま気持ちよくなればハンモックの中でゴロンと寝てしまう事も可能です。ハンモックの自然な揺れを感じながら、暖炉からの優しい暖かさを感じて休日のひとときを過ごしませんか。
5.暖炉料理は男の料理! かもしれません。
暖炉で直火料理が出来るという事は先ほどもお伝えしましたが、このワイルドな調理方法は女性より男性に向いていると言えるのではないでしょうか! 男女差別をするつもりはありませんが、体力差はどうしてもあるもの。キャンプやバーベキューを楽しむときも、男性が活躍する姿をよく見ますし、たまには男性にも活躍の場がないと家庭内での立場がなくなってしまうかもしれないという女性の優しさから、ここは男性にお任せしてもいいかもしれません。暖炉本体が鉄で出来ている薪ストーブタイプの暖炉であれば、暖炉内の直火で調理することも出来ますし、暖炉本体上部の鉄部分も過熱されて熱くなっていますので、お鍋を置けば調理や保温にピッタリです。調理に特化したデザインを持つ薪ストーブタイプの暖炉もありますので、お料理好きの方は是非探してみてください。
暖炉を導入するなら設計段階から
ここまで、暖炉の魅力や暖炉を自宅に取り入れる際の注意点などを見て頂きましたが、気に入った、是非取り入れたい、と言う方は是非新築のタイミングを逃さないようにお願いしたいです。暖炉は暖炉本体の設置に際しても不燃材料を使わなければなりませんし、暖炉を設置するスペースも必要です。また薪ストーブタイプやガス暖炉タイプなどの新しいタイプの場合は、据え置き型で家の中心に置いた方が暖房効率は高いことから、暖炉を設置する場所によって家全体のプランニングに大きく影響してきます。例えば吹抜けのある家の場合は吹抜けていない室内に置いた方が暖房効率は良くなり、吹抜け部分に置く場合は、吹抜け上部にシーリングファンを設置して暖気を循環させるなどの工夫も必要になってきます。さらに、暖炉本体だけではなく、暖炉生活にとって必要不可欠なのが煙突です。煙突も壁の中で隠すように配置するのか、家の中で見えるように配置するのかによっても家全体のプランが変わります。このように事前に決めないといけないことが沢山ありますので、設計段階からしっかり暖炉も含めた計画にすることが必要ですね。
まとめ
さて今回は、暖炉について詳しく見てきました。暖炉の歴史は古く、昔から皆に愛されてきたという事が分かりました。そして歴史の中で段々と進化して、今の時代にあった様々な材料や形状のものが登場しています。ただ、昔から変わらないものとしては、炎を見て癒されるという本質的な体験を楽しめるというところでしょうか。