吹き抜けのメリット・デメリット! 憧れの吹き抜けで後悔しないためのポイントを解説

吹き抜けのメリット・デメリット! 憧れの吹き抜けで後悔しないためのポイントを解説のインデックス
明るく広々としたリビング空間を可能にする一つの方法として、吹き抜けがあります。昼は自然光の明るさを取り入れ、条件が整えば夜に星が見えることもあるでしょう。吹き抜けの住宅は心をも開放的にしてくれるメリットがあります。
一方で、きちんと対策しないと後悔することになるデメリットや注意点も多くあります。今回は、きちんと対策と工夫をして快適なマイホームを手に入れるためのポイントを解説いたします。
1.吹き抜けとは
はじめに、「吹抜け」という言葉の定義を見てみましょう。辞書的な説明としては複層階に渡る連続した空間となります。小さな吹抜けの例としては、玄関扉を開けた玄関ホールの天井が2階上部まで抜けているなどがあげられます。大きな空間でいえば、リビング上部がまるごと一室分2層分の空間が広がっているという例があります。マンションなどでは実現できない、吹き抜け空間は注文住宅で人気のスタイルとなっています。
2.吹き抜けのメリット
吹き抜けには「開口部が大きい」という特徴があります。この点から、吹き抜けにすることで得られる大きな恩恵があります。
2-1.冬も明るい部屋を作れる
太陽の位置が低くなり、光が差し込みにくくなる冬でも、2階部分もガラス張りにした吹き抜けは明るさを確保することができます。その光は部屋の奥まで入るので、明るい家を作りたいときにはメリットに働きます。吹き抜けがあれば、日中は自然光だけで過ごすこともできるくらいに明るい部屋が実現します。
2-2.小さなお子さんの日向ぼっこに
太陽光は、私たちに気持ちよさを届けてくれるだけでなく、健康をももたらしてくれます。太陽光を浴びると私たちの体内でビタミンDが作られ、カルシウム吸収を促し、骨や歯を形作る手助けをしてくれます。成長期にあるお子さんにとって、日光浴は欠かせないものです。
また、多忙なあまり身体リズムが狂いがちな大人にとっても、「体内時計」を調整するために朝の太陽光は欠かせません。健康面からも、太陽光を取り入れやすい吹き抜けはメリットが多いと言えます。
2-3.狭小住宅であっても視覚的に広く感じられる
従来の家で、窮屈さを感じたことはありませんか。これは全ての部屋を壁で完全に区切っていることに加え、天井が低いために感じることです。同じ家でも、立ち上がったときの感覚と、イスに座ったときとでは、その圧迫感は異なるはずです。人間は、その空間の広さを「高さ」でも感じやすくなる、ということです。
これを利用して、狭小の土地に家を建てる場合には、狭さを感じさせない工夫のひとつとして、吹き抜けが利用されることがあります。寝室などプライベートな空間は少々狭いとしても、リビングだけでも広く作りたいといったケースで利用される手法です。
2-4.開放的な空間がつくれる
吹き抜けは、下階部分の天井や上階部分の床を設けない構造のため複数階の空間を連続させてくれます。そのため、視覚的に狭さを感じさせないだけでなく、実際に上下方向がひらけた開放的な空間がつくれます。間取りを検討する際は、リビングに隣接する玄関やダイニング、キッチンなどの天井高とリビングとの天井高に高低差をつけると、より開放感を強調することができます。
2-5.家族のコミュニケーションの機会が増える
吹き抜けでフロアごとの仕切りが廃され上下の空間がつながることで、どこにいても家族の気配を感じられるようになります。そのため、家族のコミュニケーションが取りやすくなることも期待できます。上の階から下の階にいる家族に声をかけることもできますね。さらに、上の階にいくための階段をリビングに設置すれば、フロアを移動する際に必ずリビングを通ることになり、自然と家族が顔を合わせられるようになります。
3.吹き抜けのデメリット
吹き抜けの特徴である「開口部が大きい」はメリットでもある反面、デメリットにもなります。開放感や雰囲気がおしゃれだからという理由だけで吹き抜けを作ると、後々後悔する事態にもなりかねません。どのようなデメリットがあるか事前にしっかりチェックしましょう。
3-1.熱効率の低下
温かい空気は空間の上層に、冷たい空気は空間の下層に集まってしまうことはご存じのとおりです。吹き抜けのない「完全個室リビング」であれば、その部屋内でその空気は留まり続けますが、吹き抜けを設ければ、暖かい空気・冷たい空気の層がはっきりと現れます。このように空気の温度にムラができ、冷暖房の効率が悪くなってしまうことも。
また、吹き抜けの2階部分もガラスにしてしまえば、熱が逃げやすい状態を作ってしまうことにもつながりますので、工夫が必要となります。
3-2.強度面の心配
明るさがひとつの利点である吹き抜けは、2階に相当する部分までガラス張りにすることでそのよさを引き出すことができます。開口部が大きいことは、広さを感じさせることとトレード・オフの関係で建物の強度などの「弱さ」に繋がることも考えられます。耐震性能とガラスそのものの強度に配慮しなければなりません。
3-3.プライバシー面の心配
太陽の光、庭の樹木、周囲の風景をあますところなく楽しめる吹き抜けの窓は、隣家や通りからの視線も導く部分でもあります。せっかく風景を楽しめる広い空間を設けたのなら、カーテンで遮るのではなく、庭木や外構の工夫で外部からの視線を遮る工夫をしたいところです。
3-4.音と匂いが広がってしまう
音や匂いに関しても、区切られた空間と比較すると、大きな一室空間である吹抜けはまんべんなく広まっていくというデメリットもあります。音に関しては吹抜け上部に接する部屋には吹抜けに面して開口部を設けないように間取りの工夫をするといいでしょう。また、匂いに関してはキッチンレンジフードに換気機能の高い換気扇を採用するなどで対応しましょう。
3-5.高所のメンテナンスの問題
吹抜けは、大空間が魅力です。高い天井や、天井までの大きな窓など、空間としては魅力に溢れています。ただ、実際に生活するとなるとどうでしょうか。いざ、掃除をしようと思うと、大開口の窓の掃除や、天井に取り付けられた照明の電球交換や、シーリングファンの掃除は業者を呼ぶ必要がありますので、メンテナンスの費用がかかる事も考えておかなければならない部分となります。しっかり確認して進めることが大切です。
4.吹き抜けが欲しい方に考えていただきたい照明のこと
吹き抜けは天井が高いことが大きな特徴です。これは、照明を取り付ける場所も高いことを意味します。吹き抜けにぴったりな照明にはどのようなものがあるのでしょうか。
4-1.ペンダントタイプ
天井から吊り下げるペンダントタイプの照明には、数多くのタイプがあります。コードの長さも好きな長さで準備してくれるメーカーもありますし、同じデザインの大小を上手に組み合わせて空間のアクセントとして楽しめるのがペンダントタイプのよさです。
4-2.間接照明
夕方のまだ明るさが残っている頃や深夜など、部屋全体を明るくしなくてもよいときは間接照明でムードを演出するのもよいでしょう。床置きタイプ・壁付けタイプなど、間接照明のタイプは多くなっています。
壁に近いところに設置するので、壁紙を傷めたりしないよう、発熱量の低いLED電球の使用がおすすめです。
4-3.照明器具つきシーリングファン
上層に溜まりがちな温かい空気を部屋の下部に下ろしたり、下層に溜まった冷たく快適な空気を熱気がこもりがちな上層に上げたりするシーリングファンは、吹き抜けの部屋には効果的な必須アイテムともいえます。
このシーリングファンに照明器具がついたタイプのものもありますので、使うだけで「一石二鳥」です。
5.吹き抜けで後悔しないためのポイント
吹き抜けは、一部分とはいえ部屋の間取りが「縦」に合体したつくりです。合わせて窓を大きく取るケースもあるので、強度面と寒さ対策での充分な配慮が大切です。しっかりとした対策をすることで、不安も解消されて快適な吹き抜けの住まいが実現するでしょう。
5-1.強度を一番に考える
先に起きた熊本地震に関する報道では「直下率」というキーワードを多く目にしました。直下率とは、1階部分と2階部分の柱や壁の位置がどれだけ合致しているかを示すものです。熊本地震の際、新築でありながら倒壊または損壊してしまった建物は、この直下率が低かったとされています。
広いリビングダイニングや吹き抜けは、直下率の点でバランスを欠く間取りとなりがちです。このことを考えると建築や設計の際の会社選びは慎重に情報を集める必要があります。木造注文住宅であっても、コンクリート造並みの強度をもった家を建てられる会社をおすすめします。
また、間取りを考える段階では無理をせず、強度優先で検討を進めることを心がけてください。
5-2.シーリングファンなどの換気設備をつける
上のデメリットでも触れたとおり、縦長の空間である吹き抜けは冬の寒さが気になる場所となりがちです。せっかく温めた空気が上層部へ溜まってしまえば、1階に相当する部分にいるご家族が寒い思いをしてしまいます。
これを防止するのが、シーリングファンです。冬場は上向きに回し、壁伝いに温かい空気が吹き抜けの下部に戻ってくるようにします。夏場はこの逆で、下向きに回して、冷えた空気が壁伝いに上層へ向かっていくよう空気を循環させます。この点では、後に購入できるサーキュレーターでも代用できます。サーキュレーターなら、家の中の必要な部分に手軽に移動させることができます。
物理的に空気の行き来を遮ってしまう方法もあります。暖かい空気が上層に昇ってしまわないよう、カーテンやロールスクリーンで「仮の1階天井」を冬の間だけ設ける工夫も有効です。せっかくの明るさを失わないよう、明るい色、光を通す素材を選んでください。最初から1階部分・2階部分を区切れるようロールスクリーンを設置しておけば、寒さだけでなく、空間の分離が必要なシーンにいつでも対応できます。
また、家自体の断熱性能が高くなければなりません。家全体が「温かい状態」を保っていられれば、熱のロスを最低限にすることができます。
5-3.寝室や個室の配置に気をつける
吹抜けはだいたいLDKの上に2層分の大空間が存在しますが、吹抜けの下の階で行われている生活の影響はダイレクトに2階に伝わってきます。その影響を最小限に抑えるためには、吹抜け上部に配置された寝室や個室の配置に気を付ける事が重要です。吹抜け側に扉を配置しないことや吹抜け側の壁に防音仕様の物を採用するなどの工夫をすれば影響を少なくすることが出来るでしょう。空間に余裕があれば、書斎や客間など使用頻度の低い個室を吹抜け側に配置することで、家族の個室や寝室は下階の影響を受けにくい状況になるでしょう。
5-4.家の断熱性能を高めて寒さ対策
空調の問題は換気設備の工夫だけでなく、家そのものの断熱性能を高めることでも対策できます。家の断熱性が低いと、エアコンで屋内を暖めても、室内の壁や床、天井の表面温度が外気の影響を受けてしまいます。そのため、空調をきかせても屋内の温度にムラが生じるという問題が発生するのです。
断熱材で家を覆うことで家の外壁部分が外気に触れないようにし、さらに外気が侵入する隙間をなくせば断熱性を高めることができます。外気の影響で屋内の気温にムラが出なくなり、家全体を快適な温度にすることができるためおすすめです。
6.吹き抜けの事例が豊富な重量木骨の家
開放的なイメージから大変人気のある吹き抜け。憧れの吹き抜けは、さまざまな生かし方があります。暮らしがさらに豊かになるような吹き抜けの取り入れ方を「重量木骨の家」の数多くある実例からご紹介します。
6-1.三面採光で開放感バツグンの吹き抜け
3面それぞれに大きな窓を設置した開放感バツグンの吹き抜けリビング。開放感と高さが、実際の床面積以上の広がりを感じさせ広々とした空間を実現しています。また、吹き抜け上は子供部屋になっており、子供部屋から階下のリビングがすぐ見えるようになっています。明るく開放的で、小さなお子さんがいても安心して過ごせる吹き抜けのある住まいです。
6-2.中庭からの自然光がリビング全体に届く吹き抜け
南北に長い敷地に建てられたこちらのお住まいでは、細長い吹き抜けを採用。中庭に面した2階部分から入る自然光を遮らないよう吹き抜けにすることで、明るい光が全体に届くリビングになっています。吹き抜けによって視覚的にも開放感が生まれ、狭小地でも広々とした屋内空間を実現しました。
6-3.1人でいても家族を感じる吹き抜け
吹抜けや天窓を効果的に取り入れ、全ての階に太陽の光が差し込むよう工夫されています。リビングのすぐ上のスペースはご主人の書斎コーナー。書斎で1人の時間を楽しみながら、すぐ下のリビングにいる家族の気配を感じられる吹き抜けのお住まいです。
6-4.ボルダリング壁で家族がつながる吹き抜け
フロアごとの移動といえば階段ですよね。そんな常識をくつがえし、2階から3階の吹き抜けにボルダリング壁を取り入れてみてはいかがでしょうか。家族のコミュニケーションと笑顔が自然と生まれる楽しい住まいになること間違いなしです。吹き抜けによって生まれる上下フロアのつながりをいかしたユニークな実例です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。吹き抜けによって開放的で明るい空間を実現している事例をご紹介しました。吹き抜けは、その特性により、注意しなければならないこともたくさんあります。熱効率や、照明のこと、強度のこと、いずれもしっかり検討しなければなりません。
しかし、後悔しない家づくりのため、しっかりとした対策をとれば、吹き抜けは豊かな家族の暮らしを応援してくれます。記事を参考にしながらデメリットや注意点への対策をして、吹き抜けのメリットを生かした理想の暮らしを叶えましょう!