階段によって家の印象は変わる! 階段の寸法と種類別メリット・デメリット

注文住宅は、思い通りの家を作るための唯一の方法です。今、思い描いている家が2階建てないしは3階建てならば、階段について知っていただきたいことがあります。家族が家の中を行き来するときに欠かせない階段にも種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
また、階段をつくる際の注意点として、寸法の問題もあります。せっかくの注文住宅で理想のマイホームをつくるなら、後悔のないようにしたいですよね。階段は生活動線の中でも重要なものです。家族の安全で快適な生活を支える階段の種類にはどのようなものがあるのでしょうか。それらはどのような間取りに合うものでしょうか。今回は階段についてご説明いたします。
階段によって家の印象は変わる! 階段の寸法と種類別メリット・デメリットのインデックス
1.注文住宅を建てる時に気をつけるべき階段の間取り
階段と間取りの関係はとても深く、どこにつけるかで動線や室内の印象を大きく変えます。家のどの部分に配置すればよいか、配置場所別に以下のようにまとめました。ぜひ、どんな家でどんな生活を送りたいかのイメージを膨らませていただきながら、お読みください!
1-1.家の壁に沿って配置した階段
ごく一般的な階段の配置ではありながら、見た目に安定感を与えてくれます。なおかつ、細長い土地に建てる家で壁に沿った階段を採用すれば、空間を最大限に活用できます。家具を置く場所に悩むこともないので、安心感のあるスタンダードな配置です。
1-2.家の中央部に配置する階段
建物の中央に配置した階段はアクセントにもなり、リビングやキッチンに近くなる理由により家族が集う場所の表情を作ってくれます。注文住宅ならば、階段そのものもイメージどおりに作れますので、まさしくその家の内部に存在する「アイコン」としての機能を持たせることができます。
写真のように段差に空間をつけるスケルトンの階段であれば、圧迫感を与えることなくワンルームを緩やかに区切ることもできます。また、スケルトンの階段そのものがモダンでおしゃれな印象を与えてくれるため、階段自体をインテリアのようにみせることも可能になります。
1-3.家の隅に設ける階段
建物の隅に踊り場のある折り返し階段を設ければ、すっきりと落ち着いた雰囲気を出すことができます。間取りに気をつければ寝室などプライバシーを重視しなければならない部屋にも影響が少なく済みます。階段下に収納を設けることもできます。
2.階段の種類別、メリット・デメリット
階段を配置する位置と同時に考えたいのが、階段の種類(スタイル)です。階段の種類(スタイル)ごとに、上り下りのしやすさや設置に必要なスペースの広さ、設置にかかる費用などに違いがあります。それぞれの特徴をよく理解してあなたの家族にとって最適な階段を選択しましょう。
2-1.直線階段
一般的な注文住宅で最も採用されることの多い階段のスタイルです。踊り場はなく、1階から2階までを直線で結ぶ階段です。占有する面積が少なく済みますし、階段下部を収納スペースに仕立てることもできます。形もシンプルであるため、設置費用もかさまないのがメリットですが、階段に使える面積が限られていると、勾配(傾斜)が急になることもありますので、安全面を考えなければなりません。そのため、手すりをあわせて設置するのがおすすめです。
2-2.折れ階段
建物の隅に配置するときに考えられるのが折れ階段です。間取り図で見るとLの字に見える階段で、途中に踊り場、もしくは斜め角度の階段が生じます。必要な面積は比較的少なくすみますが、斜め角度の階段部分は、踏む面積に大きな差が出ますので、安全面に配慮が必要です。
折れる分、直線階段よりは費用がかかり、スペースもとるため一見するとデメリットに目がいくかもしれません。しかし、途中で踊り場があることで万が一の際に落下しても、ずっと下まで落ちてしまうことを防いでくれますし、スペースが確保されることで勾配も緩やかに設計できるメリットがあります。
2-3.折り返し階段
間取り図で見ると、コの字型やU字に見える階段です。途中に踊り場を設けますので、折れ階段と同様、仮に階段で足を踏み外したときも転がり落ちる段数を最小限にとどめることができます。下部に収納スペースを設けられますが、他の階段と比較して設置スペースを広く取らなければなりません。ただし、階段の段差の数が多くなることで、勾配もなだらかに大きくとることができるため、安全面でのメリットがあります。
2-4.螺旋階段
階段の中で、一番省スペースで済むのが螺旋階段です。踏み面が全て三角形に近い形状で、、中心に近いほど踏む面積が狭くなるため、他の階段に比べ上り下りに注意が必要です。狭小住宅にぴったりの階段ではありますが、2階や3階に家具を搬入する場合は階段の幅や天井までの高さ等、チェックするポイントがいくつかあります。
大きな家具や家電をクレーンで引き上げ、窓から入れるといった手間がかかることもあります。その代わり、おしゃれな雰囲気を演出できるため、マイホームの個性を重視する方にはおすすめです。
3.注文住宅は階段も好きに作れる
ひとくちに階段といっても色々な種類(スタイル)があり、どのスタイルにもそれぞれメリットや特徴があることをお分かりいただけたかと思います。注文住宅は細部にわたり好みを反映させることができます。階段もそうです。もしも注文住宅で家を建てたい方は、階段がどのような構成になっているかも知っておくと打ち合わせもスムーズです。
3-1.踏み板
足で踏みしめる板を「踏み板」といいます。私たちが日頃意識しているのはこの踏み板で、その上面(奥行き)を「踏み面寸法」と呼びます。踏み面の奥行きが狭ければ、まるでつま先だけで上がるような感覚となるでしょうが、建築基準法では15センチ以上と定められていますのでそのような階段になることはまずありません。この踏み板の面積をどれくらい確保するかによって階段を上り下りする際に足を踏ん張れる面積が変わります。
3-2.蹴上げ
階段が急か、それともゆるやかなのかを感じさせるポイントが「蹴上げ」です。一段の高さが低ければ登り降りは楽に感じはしますが、一方で段数が増えてしまうというデメリットがあります。建築基準法では蹴上げは23センチ以下で、と定められています。小さいお子さんやお年寄りにとっては、23センチでも上り下りを辛く感じるでしょうから、家族構成や将来を見据えた設計にしたいですね。
3-3.手すり
手すりは、高齢の方が安全に階段を利用するためには有用です。ストレートなタイプのものから、掴みやすさを確保するため波打ったような形状をしたものなど、多くの種類があります。また、手すりを設置する場合には、どのくらいの高さに設置するとよいかも検討しましょう。
3-4.照明
夜間の安全のため、階段にも照明は不可欠です。とっさのときにも慌てずに昇降できるよう常に明るくしていたい場所ですが、一晩中電灯をつけておくのももったいないものです。ムダを防ぐため、手すりの裏側や踏み板裏側に省電力のLED照明を組み込んだ商品もあり、常夜灯として用いることができ便利です。
4.失敗しない! 上り下りしやすい階段の寸法
「階段でスペースをとるのはもったいない、できるだけコンパクトにしたい。」と思うかもしません。ですが、2階建以上のマイホームを検討しているなら、階段の上り下りは家族全員が毎日するものになります。実は、家庭内の事故で亡くなる方は毎年1万人以上と交通事故で亡くなる方よりもずっと多いのです。そのうち、階段での事故も多く発生しています。階段での事故は大きな怪我にもつながりやすいもの。安全な生活のために必要な注意点をご紹介いたします。
4-1.建築基準法の寸法の基準
先ほどご紹介した通り、階段を構成する踏み板と蹴上には法律で定められた基準があります。ですが、どちらも法律で定められた最低基準では上り下りのしやすさの面では不十分です。現に、多くの方が利用する公共施設の階段はとても緩やかにつくられており、踏み面寸歩30センチ、蹴上15センチでつくられているものが多いです。建築基準法の最低基準が、踏み面寸法15センチ、蹴上23センチですから大きな差があるのがお分かりいただけると思います。
4-2.上り下りしやすい階段寸法の計算法
一般的に、上り下りしやすい階段は踏み面寸法と蹴上のバランスによって決まると言われており、蹴上の2倍に踏面を足して60センチになる寸法が良いとされています。計算式にすると、「蹴上×2+踏み面寸法=60センチ」となります。先ほど紹介した公共施設の階段も、15センチ×2+30センチ=60センチでちょうどこの計算式に当てはまっていますね。
4-3.上り下りしやすい階段のポイントはバランス
階段の上り下りのしやすさはバランスが鍵になります。先ほどご紹介した、踏み面と蹴上のバランスに加えて階段の段数のバランスも重要です。踏み面を大きく蹴上を小さくすれば緩やかで安全な階段にすることができますが、その分段数が増えることになり階段のスペースも大幅にとることに。上り下りのしやすさには個人差もあるため、家族やご自身たちの将来を考えて、実際に上り下りしやすいと感じる階段を調べてみることをおすすめします。
5.リビング階段のメリット・デメリット
これまでの住宅は、玄関から2階へ直結した階段が多くありました。近年では、一旦リビングへ入り、リビングの中にある階段を通り2階へとアクセスする「リビング階段」が人気です。なぜ、リビング階段が人気なのか気になりますよね。このリビング階段の人気の理由とデメリットもご紹介しましょう。
5-1.【メリット】家族が顔を合わせる機会が増える
リビングを通過しなければ2階へ上がれないリビング階段は、家族が集う場所であるリビングの機能を最大限に引き出してくれます。家族同士が顔を合わせる機会を増やしてくれますので、学校から帰ってきたお子さんの様子がどうか、外出の頻度はどうかといった観察ができます。
家族といえども生活パターンもそれぞれ。忙しくてなかなか家族全員がそろってリビングに集まる機会をもてないという時もあるでしょう。家族全員が同じ時間に揃わなくてもリビング階段が家族を引き合わせてくれます。
5-2.【メリット】リビングが広く取れる
これまで多くあった、階段直結型の階段スペースをリビングに入れることができれば、その分リビングを広く使えます。実際に広く使えるだけでなく、「広く見せる」効果もあります。小さなお子さんが階段をベンチ代わりに使ってみたりなどもできますので、壁に本棚を作りつければ、小さな図書館のようにも楽しめます。階段下スペースをうまく使って見せる収納にするのもいいですね。
5-3.【デメリット】寒さが気になる
一家団欒の場であるリビングは、光熱費が一番かかるスペースです。リビング階段にしたところ、温めた空気が2階へ抜けていき、寒い家になったというお話を聞いたことはありませんか。リビング階段は吹き抜けと合わせて作られることも多く、熱効率はとても気になるところです。
中には、冬場だけ吹き抜け部分の1階と2階の境目に布やビニールを張り、できるだけ空気が出入りしないよう工夫しているご家庭もあるようです。しかしながら、家自体が高い断熱性をもち、温めた空気をうまく循環させるためシーリングファンなどの設備を整えれば、「寒さ」という問題も解消されます。
5-4.【デメリット】においや汚れ、音が2階に影響しやすい
リビング・ダイニングのそばにはキッチンがつきものです。このため、リビング階段をたどって料理のにおいが2階に上がりやすくなるのもデメリットの一つです。また、1階の音が2階に、2階の音が1階にまで響きやすくなるという点もデメリットに数えられるでしょう。もしも吹き抜けと組み合わせた場合、料理の油汚れが漂って吹き抜け上部にまで上がってしまうこともありますので、設置する換気設備を充分に検討する必要があります。
6.【実例紹介】階段の実例が豊富な重量木骨の家の施工例
階段は、単なる「通り道」ではなく、その家のアクセントにもなってくれますし、時には家具の機能も担ってくれる大切な部分です。注文住宅ならば、建築基準法で定められた基準さえ満たせば自分好みの階段を作ることができます。
家族の安全にも配慮し、上り下りのしやすさと個性的でおしゃれな屋内空間の演出の双方を兼ね備えた階段のアイディアがたくさんあります。特徴的な階段を持つ重量木骨の家の事例をご覧ください。「階段でこんなにも表情が変わるのか」と、きっと驚かれることでしょう。
6-1.階段下スペースを有効活用
階段下にあえて複数の収納スペースを設けたこちらのお宅。まるで、大きさの異なる額縁が飾られているかのよう。それぞれのスペースにお好みの小物やディスプレイをおいて、プライベートギャラリーのようにも楽しめます。何も置かなくてもこのままで十分おしゃれに見えるも素敵ですね。
6-2.階段を中心に家族が集まるリビング
スキップフロアで個性的な空間をつくっているこちらのお宅。階段がうまく配置されており、階段による圧迫感を感じさせることなく広く見せています。通常では踊り場に当たる階段の折り返し部分もひとつの部屋のように使える広さを確保しており、階段を使ってそれぞれの空間を行き来する中で家族が自然と集まるリビングになっています。
6-3.存在感を排したモダンアートのような階段
リビングの壁にそうように配置されたこちらの階段。まるで宙に浮かんでいるかのような軽やかさがありとってもアーティスティックです。この階段そのものがインテリアのようですね。リビング内に配置された他の家具とも調和しながらお部屋のアクセントにもなっています。
6-4.個性が際立つ螺旋階段
先ほどとは打って変わって、存在感もインパクトもピカイチのこちらのお宅の階段。階段全体を重厚感のある黒い色に統一することで、階段の存在感を強調しつつ屋内全体の印象を引き締める効果があります。照明や手すりのデザインとの組み合わせも素敵ですね。自宅でありながらまるでレジャー施設にいるかのようにワクワクする階段です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。どんな階段を選ぶかによってお部屋の印象がガラリと変わりますね。せっかく注文住宅でのマイホームを検討されているなら、個性たっぷりの階段を取り入れてまわりと差をつけるのも一案です。安全にも配慮し長く楽しく住める住まいをつくってください!