2021.03.15

家族の存在をつなぐ階段とガラス扉が演出する住まい

それぞれが引き立て合うグッドバランスな空間構成

ガラス壁のエントランス空間が
明るさとヌケをもたらすLDK

 
Y邸の一番の特徴は、玄関ホールとLDKをつなげるガラスの扉と壁。エントランスの吹き抜けはガラスを通して1階のLDKに印象的な光をもたらし、エントランスとリビングの各空間を開放的に見せる相互作用がある。「家族それぞれの存在を感じられる家が要望でした」とYさん。そこで提案されたのが、帰宅した際、LDKの様子がガラス越しに見え、LDKからは階段を上る家族の顔が見えるこのプランだった。「各々の空間をつなげる開放的な『エントランスVOID』です」と設計を担当したコージーライフの小林辰彦さんは語る。ヴォイドとは吹き抜けなどの何もなくぽっかりと空いたスペース。ヌケや広がりをもたらす建築デザインの技法だ。この玄関回りのヴォイドはLDK、2階のスペースにリンクしている。
異なる機能を持つ空間をゆるやかにつなげることで、階段から2階の寝室や子供室へと通じる動線部分を収納やランドリーにするなど、あらゆる空間を有効に活用できた。例えばアイロンをかけながら子供室の様子をうかがえ、子供室の延長として遊び場を広げるなど、用途に合わせて自在に変化するフリースペースが実現。また、エントランスからキッチンに抜ける裏動線はウォークスルークローゼットとなっており、生活必需品を整然かつ機能的に収納できるようにしている。
さらに階段下のスペースにはアルネ・ヤコブセンのチェアを置き、くつろげるスペースに。サンルームのように常に明るく暖かいこの場所は、読書スペースや、アートを飾ってギャラリーとしても存在する。夜は照明によってがらりと印象が変わり、ムーディな表情に。玄関や廊下という通り過ぎる場所ではなく、居場所にすることで限られた住空間が想像以上に豊かになった。
 

ウッドデッキや庭もLDKの一部
木のぬくもりを感じる開放的なプラン

 
南側はワンフロアでつながるウッドデッキにし、外でも過ごせる間取りに。境となるウッドブラインドはオイル塗料を受注後に後染めし、木目を生かしたナニック社のものを採用。幹線道路のある北側には駐車場を配し、南側をウッドデッキに面した庭とした。
そしてY邸のもう一つの特徴が建物の外にせり出したような跳ね出しのバルコニーだ。「なかでも玄関扉の上に位置するバルコニーは吹き抜けに面し、強度を保持しつつ実現することは困難です。それが可能になったのは、一棟一棟構造計算をして安全性を数値化できるSE構法ならではですね」と小林さん。そのランドリーからつながるバルコニーにより、軽快なデザインの外観となった。
 

建築とインテリアの相乗効果により
安らぎをもたらす住まいが完成

 
Yさんがコージーライフに出合ったのは幕張のショールームに併設されたインテリアショップ「TIMBER YARD」を訪れたのがきっかけ。そのインテリアが気に入り、新築を考える際、依頼先の候補になったという。「コージーライフでは空間とインテリアが相乗効果となる建築を目指しています」と小林さんは語る。どちらも主張し、かつどちらも主張しすぎない。そのバランスが絶妙だ。内装はインテリアコーディネーターが担当し、家具もセレクト。水回りや収納を効率よく配置するなど設計担当と内装・インテリア担当が相互にコミュニケーションをとることで、程よいバランスが生まれる。今回も生活の利便性はもちろんのこと、安らぎと安全をもらたす家が完成した。
 

取材・文/間庭典子

Y邸

設計施工 コージーライフ 所在地 千葉県君津市
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 228.27㎡
延床面積 112.61㎡ 構法 木造SE構法

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