2016.03.29

24時間、365日の眺望を楽しめる住宅

24時間、365日の
眺望を楽しめる住宅

天空から望む新潟平野は
このうえない贅沢な眺望

訪れたゲストが一堂に息をのむ見事な眺望。全面、開口部の大空間がドラマティックだ。視界を遮らない全面の窓は、個人宅というよりも美術館や商業施設のような大胆さがある。

天空から新潟平野を望む高台のこの敷地に家を建てようと決めたとき、Aさんは眺望を楽しむ大開口が絶対条件だと確信したという。完成したのは南東側をすべて開口部にし、地平線まで見渡せる眺望の家だった。

新潟市内では外で心地よく過ごすことのできる期間はわずかだ。短い春と夏の2、3カ月のみ。残りの期間は暑い夏、厳しい冬を家で過ごす。そのため室内からの眺めは何よりの贅沢だ。朝の光、夕暮れどきの影、星明りの夜、と部屋からの眺めは刻々と表情を変えていく。

部屋から段差なく外部とつながっているテラスは、135.31㎡という延床面積を実際よりはるかに広く見せている。

テラス空間がもたらすのは視覚効果だけではない。夏は長く跳ね出した庇が日差しを遮り、水盤による打ち水効果と水のせせらぎが涼を演出。そして冬は室内とフラットにつながるテラスのタイルが昼の日差しを蓄積し、夜に、室内に向かって放熱する。テラスは太陽のエネルギーをコントロールし、必要に応じて熱を取り込める装置でもあるのだ。

硬質な素材と木の温もりの
バランスが絶妙なインテリア

しかし、この大空間を実現するのは簡単ではなかった。「眺望を楽しむ大空間が条件、と伝えてもなかなかそのスケール感を理解してもらえず苦労しました」とAさん。ほどよく快適な空間なら既存のマンションを選べばいいが、望んでいたのは規格外の大きな空間。多少の予算は覚悟していたが、現実的ではない高額を示されたり、強度を保つため大きな柱や壁が必要で全面の開口部は不可能と断られ、構想とはほど遠いプランばかりだったという。

そんな時に出会ったのが、レストランやワイナリーなど、商業建築の実績も多いroomz 星野建築事務所だった。全面開口という希望もSE構法により即、解決。RC構造よりもかなり抑えた予算で実現した。「プロが判断したもののほうが格段にいいだろうと思い、それからは全面的にお任せしました」とAさん。冒険的な提案に関しても「いいね」とストライクゾーンはどんどん広がり、どこまでいっしょに進むような信頼関係が生まれた。壁面に配したシャープな階段や、1階、2階ともにワンフロアの大胆な間取りがアーティスティック。石や金属とフローリングのナラ材など、硬質な素材とやわらかさを感じる木材の組み合わせで、クールだがくつろげる空間となった。

「一般住宅のいちばんのポイントは『住み続ける空間』であるということ。常に快適であり、メンテナンスしていかなくてはなりません」と星野さん。太陽熱を効果的に取り入れたり、TPOに応じてコーナーをゲストルームに間仕切れるワンフロアなど機能性も重視した。

NOと言いたくない心意気から
取り入れたSE構法の技術

「SE構法を取り入れているのは『NOと言わない』工務店でありたいからです」と星野さんは語る。自身もお客様が思い描く夢を予算や耐震性を理由に諦めてほしくない。なんとか要望を叶えたいと切に願い、SE構法にたどり着いた。

2005年、一連の耐震偽装事件により建築基準法が改正され、当初の予算には収まらず、計画を断念するしかなかったお客さまがいた。なんとか力になりたいとリサーチするうちにSE構法を知った。NCNに問い合わせたところ、平面図を送って5分で「できますよ」と返事がきた。すぐに研修・試験を受け、SE構法施工管理技士の資格を取得。結果、そのお客さまはプランを変えることなく夢を叶えたという。

「選択肢の一つとしてSE構法は有効だと思います。A邸はその機能の限界まで挑戦した画期的な大空間です」と星野さんは語る。「無理です」と言わない工務店により、この眺望の家は実現した。

取材・文 間庭 典子

A邸

設計 星野貴行 施工 株式会社星野建築事務所
所在地 新潟県新潟市 家族構成 1人
延床面積 135.31㎡ SE構法2階建て

この家を建てた工務店

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