2020.10.19

光が注ぐ進化系、コの字型平屋

平屋とは思えない、最高で高さ4.5mという勾配天井

コの字型に囲んだ中庭から
光と風を運ぶ、進化系平屋

 
K邸は次の世代のための「NEO平屋」だ。LDKを中心とした生活の場としての棟と寝室など安らぐための棟を廊下でつないだコの字型。シンプルでカジュアルな、積み木を重ねたような可愛らしい平屋のプランニングだ。中心にある中庭に向かった面はすべて開口部とし、充分な採光と風通しを確保。そのため、外と接する壁には最小限の窓しか設けなくても、明るく心地いい室内となり、プライバシーも完全に守られる。「外構や塀で囲う必要がないので、コストダウンにもつながりますし、すっきりとモダンな外観になります」とイエイエ 宮部建設の設計担当・宮部昌門さん。自分たちにとって必要ないと思われる装飾、機能を潔く切り捨て、必要なエッセンスだけを抽出した、進化系平屋なのだ。
住み手であるKさんは、まだ30代の若いご夫婦。ライフスタイルに合わせて自在に変化するフレキシブルな家を望んだ。「将来は犬を飼いたいと思っているので、ドッグランにもなるような伸び伸びとした空間が欲しかったんです」と奥さま。まだ植栽も植えたばかりだが、春には芝生を敷き、よりくつろげるスペースに整える予定だそう。梁や軒下にはハンモックをかけられる金具などを設置し、公園のなかで過ごすようなLDKとなった。
「LDKと庭の間はインナーテラスとテラスでつなぎ、軒下の天井も室内と同じ無垢杉羽目板を貼り、内と外の境界をあいまいにしています」と宮部さん。インナーテラスの壁も外壁と同じジョリパットで仕上げ、LDKの白の壁紙に自然に繋げているため、どこからが外部なのかわからない仕掛けになっている。勾配天井を生かし、吹き抜けのような天井高で縦の広がりも強調した。梁や柱に奥行きを感じる、目にも楽しい空間構成だ。
 

柱をつけるか、つけないか──
SE構法で広がった選択肢

 
「実はこのインナーテラスとLDKを区切る柱は、構造上は必要ない柱なんですよ」と宮部さん。一棟一棟、構造計算をしているSE構法なので、この2本の柱がなくても十分に支えられることは数値で証明されていたが、奥行きを感じさせるデザインとしてあえてアクセント的に設置したという。「テラスより一段高い床に、ベンチのように座ることもあるので、実際暮らしてみるとふと寄りかかったり、手すりにしたり、機能としてもあると便利な柱でした」と奥さま。
「柱をつけるかつけないか、デザインや用途によってそんな選択肢が広がるのもSE構法のいい点ですね」と宮部さん。
 

扉を排除し、抜けが生まれ──
常に整うオープンな空間に

 
空間を有効に使うため、開く収納と閉じる収納の2極化を図った。普段使わないものは充分なスペースのある屋根裏収納に、クローゼットや書斎は扉をつけず、オープンにして行き来しやすい動線に。「本当にドアがなくてもいいんですか?と何度も聞き返してしまうくらい大胆な選択でした」と宮部さんは振り返る。必要なものだけにそぎ落とした究極のシンプルスタイルだ。「扉をつける毎にコストがかります。それであるならばと思い切ってクローゼットの扉も極力、排除してみました」と潔いKさん。大幅なコストダウンとなったこの作戦は、空間に抜けを生み出し、見せる収納が徹底されるという効用ももたらした。無駄のない空間で、スタイリッシュに日々暮らすヒントがここにある。
 

取材・文/間庭典子

K邸

設計施工 イエイエ 宮部建設 所在地 愛知県江南市
家族構成 夫婦 敷地面積 433.32㎡
延床面積 117.80㎡ 構法 木造SE構法

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