2022.08.01

庭や畑へとつながる土間リビング

高窓や大開口、バルコニーから日が差す日だまりのリビング

1棟に2世帯が共に住み
次世代を育む住まい

自然に恵まれた湘南エリアに立つS邸は、親世帯、そして伸び盛りの子供を育てる子世帯が一つ屋根の下で暮らす。2世帯住宅は1階と2階で住み分ける上下分離が多い中、S邸では並列の構成とし、玄関ホールを拡大した開放感のある土間を、共通のリビングとしてつないだ。土間リビングの吹き抜けには、北側の子世帯と南側の親世帯を2階でも気軽に行き来することを可能にするブリッジがあり、大きく開いた西側の絶景を取り込んでいる。この土間リビングは庭に隣接した畑から収穫するときなど、農作業の合間の休憩場所としても活用できるスペース。簡易キッチンも設けられており、晴天の休日には家族全員が集まって食事を楽しむこともあるという。このようにさまざまな用途で機能する多目的なスペースになっている。
南にある親世帯の住居は、1階に寝室や浴室を配し、眺めのいい2階をLDKとした。無垢材でコーディネートし、クリーンで軽やかな北欧調の空間では、放課後に孫たちが過ごすことが多く、いつもにぎやかだそう。さらに土間の北側はシンプルモダンな和室で、離れて住む家族が滞在しやすい独立した客間が設けられた。また、将来は1階だけでも生活できるよう考慮した間取りでもある。床の高さを低めに設定し、デザインとして優れた無垢材の手すりを設置するなど、バリアフリーにも対応できるつくりになっている。
北は、子世帯のエリア。それぞれに専用玄関を設け、2階のブリッジだけを親世帯のエリアをつなぐ動線にすることで、空間を明確に分けた。1階に寝室やW.I.C.など生活に必要な機能をまとめ、2階全体を大空間に。東には床座ができる空間を設け、1段上がる高さにLDKがある。さらに数段上げた小上がりにはセカンドリビングをつくり、その延長は絶景を取り込むウッドデッキを。ここには屋根をつけて、天候に関係なくアウトドアで過ごせるようにした。大空間に少しずつ高低差をつけることで、住まいのどの場所からも西側の景観を楽しめるうえに、さりげなく各空間をゾーニングすることにも成功している。
「当初は木造在来工法で、土間リビングの真ん中に柱を立てる予定でした。2つの世帯を大きな吹き抜けでつなぐ空間構成にも構造的に確信が持てませんでした。そこで、安全性を確保しながらも、柱のない大胆な空間を表現できる木造SE構法を採用することになったんです」と平成建設の設計担当、山田 徹さんは振り返る。2つの世帯をつなぐ浮遊したような木格子のブリッジは、Sさん一家の要望だった。
「水平構面を確保するために格子床の下部にスチールブレースを設け、抜け感と構造上の強度を確保しました」と山田さんがこのブリッジの強化と快適性の理由を詳しく解説。数値に表れる強度は安心感ともなり、ためらうことなく大胆なプランを進められたという。

アウトドアで過ごす爽快さと
空間づくりの楽しさをサポート

外で過ごす時間、ものづくりが好きだというSさん一家。そんなライフスタイルをサポートすることが平成建設の使命だった。デザイン家具やアートが映え、コーディネートが楽しくなる、まっさらなキャンバスのような空間──。リビングでも土間でも、さまざまな場所から西側の景観を望めるよう配慮した。「畑、庭、土間、キッチン、和室。そこでは、つくり、食べ、遊び、語らい、休み、寝る。2世帯住宅の枠を超え、多くの人が集まる、コミュニティを内包するおおらかな住宅が完成しました」と山田さんは振り返る。

取材・文/間庭典子

S邸
設計施工 平成建設 所在地 神奈川県
家族構成 両親・夫婦+子供2人 敷地面積 298.00㎡
延床面積 235.61㎡ 構法 木造SE構法

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